「延長戦」終え涙 3月で教師退職…保護者や選手から申し入れで今夏まで指揮 高校野球の指導がしたくて教師に、36年「燃え尽きた」 コーチとして甲子園を経験、プロ野球選手も輩出した名将

AI要約

13日に県営大宮球場で行われた夏の全国高校野球選手権埼玉大会2回戦の花咲徳栄―越谷東の試合で、笑顔が印象的な越谷東高校の選手たちを率いた斎藤繁監督が敗戦とともに退任した。36年間の指導者人生を全うし、感動的な試合を魅せた。

6月18日に組み合わせ抽選会で決まった対戦相手が強豪校の花咲徳栄であり、越谷東の選手たちは「思い切り大作戦」を掲げて、明るく観客を魅了。斎藤監督は感慨深く、王者に一矢報いる奇策を実行した。

斎藤繁監督は指導者として36年間活躍し、プロ野球選手も育てた名将である。最後の試合では感動の場面が続き、選手たちや保護者からの惜別の言葉を受けながら、涙ながらに最後のミーティングを終えた。

「延長戦」終え涙 3月で教師退職…保護者や選手から申し入れで今夏まで指揮 高校野球の指導がしたくて教師に、36年「燃え尽きた」 コーチとして甲子園を経験、プロ野球選手も輩出した名将

 13日に県営大宮球場で行われた、夏の全国高校野球選手権埼玉大会2回戦の花咲徳栄―越谷東。笑顔が印象的な越谷東高校の選手たちを率いたのは、この日、敗戦とともに退任を迎えた斎藤繁監督(60)=さいたま市出身、越ケ谷高出。コーチとして甲子園に出場し、プロ野球選手も輩出した名将は「燃え尽きました。やり切りました」と涙を流し球場を後にした。

 6月18日の組み合わせ抽選会。土橋真翔主将(17)は2番を引く任務を命じられた。秋春王者の花咲徳栄の隣。斎藤監督の36年間の指導者人生で、因縁の相手となる強豪校だった。予備抽選の番号は120。142チームの主将たちが次々とくじを引く中、王者の横だけが空白だった。「(花咲徳栄の)岩井監督が待っててくれた」と斎藤監督。土橋主将の引いたくじには2番の文字があった。

 決戦の日、「ワクワクの【思い切り大作戦】」と称した目標通り、越谷東の選手たちはどのチームよりも明るく、観客たちを魅了。「いいね!」という合言葉を何度も発し、三回には犠飛で1点をもぎ取った。試合前、花咲徳栄の岩井隆監督(54)から「本気で行きますからね」と声をかけられ、斎藤監督は「本当にうれしかった」。投手4枚を7回変える奇策を絡め、王者に一矢報いた。

 24歳で高校野球の指導がしたくて教師になった。2校目の越谷西高校ではコーチとして1995年の甲子園を経験。2009年から19年3月まで在籍した八潮南高校時代にはプロ野球・オリックスの宇田川優希投手(25)を育て、プロ野球選手を輩出した。

 今年4月には外野に球を飛ばす体力がないからと、ノックを打つのはやめ、この日もバットは学校に置いてきたはずだった。だが、外野のノック終了後、土橋主将がベンチに駆け寄り「監督、ノックしてください」。監督人生最後の内野ノックを行った。

 今年3月に教師は退職。だが、保護者や選手たちの申し入れがあり、今夏まで指揮を執ることになった。「先生が終わっても高校野球の監督がやれるなんて最高に幸せ。何より36年間、燃え尽きるほどやり切れた」と斎藤監督。試合後には胴上げをされ、選手一人一人と熱い抱擁を交わし、涙を流しながら最後のミーティングをかみしめていた。