「最後まで豊かな生活」支援、宇部の白石さんが保険適用外看護サービス起業【山口】

AI要約

宇部市の看護師、白石知之さんが、保険適用外看護サービス「ジニーズランプ」を起業し、患者が最後まで豊かな生涯を送れる支援を目指している。

白石さんは、看護師と患者をマッチングさせるアプリを開発し、健康面に不安がある利用者に包括的なサービスを提供する。看護師の評価によって報酬が決定される仕組みも取り入れている。

看護師としての経験から得たきっかけで、看護業界の現状に疑問を持ち、新しい働き方や考え方を提案している白石さんの取り組みに期待が高まっている。

「最後まで豊かな生活」支援、宇部の白石さんが保険適用外看護サービス起業【山口】

 宇部市の看護師、白石知之さん(40)が、保険適用外看護サービス「ジニーズランプ」を起業した。看護師と患者のマッチングアプリ「らんぷのナースさん」の開発・提供を通じて、患者が最後まで豊かな生涯を送れるよう手助けするとともに「新事業で看護業界を変えたい」と意気込んでいる。

 看護師がアプリに登録し、利用者が希望する看護師を指名する仕組み。風呂やトイレの介助などのケアに加え、通院や買い物、旅行同行サービスを提供する。健康面に不安がある利用者に看護師が付き添うことで、安心して過ごせるのが魅力だ。利用者の評価が看護師の報酬に反映される。

 白石さんは、看護師の新しい働き方を示し、看護業界を変えようと起業を決意。山口大医学部付属病院で勤務する傍ら、畑違いの分野の学習が役に立つだろうとアプリ作成のためのプログラミングをエンジニア養成学校で学んだ。

 若手時代の重症患者の看護経験が原点。人工心肺や点滴が付けられた患者の命を維持することだけに捉われ、関節を動かすことや楽な姿勢を取らせることに考えが及ばなかった。

 エンゼルケア(死後の処置)のとき、長い闘病生活で関節が固まってしまい、身体をきれいに拭き、浴衣を着せて見送ることさえできなかったという。

 白石さんは「浴衣もまともに着られなかった患者さんは最後まで豊かな人生を過ごすことができたのだろうかという疑問と不安、自分への嫌悪感にさいなまれた」と振り返る。治療を受けるがゆえに生じる弊害があることも痛感し、健康寿命73歳と平均寿命84歳の差を「医療、看護に支配された11年間」と評する。

 この11年間を少しでも充実させ、最後まで満足いく生涯を送ってもらうには今の看護業界では難しいと考えている。現在の看護師の労働環境は成果報酬型ではないため、意欲的な看護師の思いや技術が適切に受け止められていないと指摘。自身も知識を得て提供したケアを、上司に「マニアックだ」と冷や水を浴びせられた経験がある。

 山口市小郡令和1丁目のKDDI維新ホール内の産業交流スペース「メグリバ」を会社の住所として借りた。「看護業界に一種の競争社会をつくり、切磋琢磨(せっさたくま)することでサービスの質も高まり、患者は最後まで豊かな人生を送ることができる」と事業の意義を訴える。サービスは今月下旬から本格運用する予定。利用はジニーズランプにメール(genienurse.gy@gmail.com)で問い合わせる。