「豊かさ」を考える 「水になった村」上映会 監督が作品解説/兵庫・丹波市

AI要約

ダム建設により村が水没するまでそこで暮らした住民を追ったドキュメンタリー映画の自主上映会とトークショーが開催された。

村の住民が自然と切り離された新しいまちへの移住を余儀なくされる実話を通じて、豊かさについて考えさせられた。

ダムが完成しても水が利用されていない現状について、監督は疑問を呈し、ダム問題や環境問題について考察を示した。

「豊かさ」を考える 「水になった村」上映会 監督が作品解説/兵庫・丹波市

 貯水量日本一のダム「徳山ダム」(岐阜県揖斐川町)が建設された徳山村で、村が水没するまでそこで暮らした住民を追ったドキュメンタリー映画「水になった村」(2007年)の自主上映会と大西暢夫監督のトークショーが、兵庫県丹波市の衣川會舘であった。約60人が来場。山川畑の自然の恵みを受け暮らしていた人たちが、自然と切り離されたまちへの転居を強いられる実話を通し、「豊かさ」について思いをはせた。

 ダム近くの町で生まれ育った大西監督が東京で働いていた時、水没前の同村をテレビ番組の取材で訪れた。誰もいないと思っていた水没予定地の村で、自給自足に近い暮らしをしているおばあさんと出会った。東京とは違う豊かさがあることに気づき、水没前後の15年間、撮影を続けた。

 村に住んでいた頃、急な沢を登って4時間かけてワサビ摘みに通い、「塩さえあれば(育てた野菜や山菜などの保存食で)家族を腹いっぱいにできる」と言っていたおばあさんの転居先を訪ねると、冷蔵庫は空。近くにスーパーがある便利なまちは、買い物に行かなければ何も手に入らない生活だった。

 大西監督は、「ダムができたら豊かになるはずだった。どうして豊かじゃないんだ」と観客に問いかけた。

 徳山ダムは高度経済成長期の1957年に計画が公表され、2008年に完成したものの、「(利水に)一滴の水も使われていない」と大西監督は指摘。各地の既存ダムの老朽化に触れ、「造りっぱなし。ダムを維持できると思わないし、撤去できるエネルギーもない。国はダムの前にダムを造り、ダムごと沈め、『貯水量を増やしている』と説明する。ダム問題は、原発問題などに通じる。私たちが考える原点は、そこに住む人の生活を無にすることではないはず。いつまでもこういう時代は続かない」と締めくくった。