九州豪雨被災・熊本県人吉市の遊水地整備、地権者と補償協議へ…予定地内に7世帯が生活

AI要約

熊本県人吉市の大柿地区で行われた国の遊水地整備に関する住民説明会が開かれ、補償協議が始まる方針が示された。

住民からは賛否両論の声が上がり、現地再建や遊水地整備に関する懸念が寄せられている。

国は複数の地区で遊水地整備を計画しており、移転先の造成などが進められている。

 九州豪雨で大規模な浸水被害が起きた熊本県人吉市の大柿地区で24日夜、国が球磨川の治水対策として計画する遊水地整備に関する住民説明会が開かれ、国土交通省は今後、補償に向けて地権者との協議に入る方針を明らかにした。開催は2022年11月以来、1年7か月ぶりで、参加者からは賛否の声が上がった。

 説明会には約45人が参加した。国交省の担当者は、昨年から行ってきた予定地内の物件調査が終わり、補償金算定のめども立ったと説明。今後は委託を受けた民間企業が窓口となり、地権者と補償協議を進めるという。市からは松岡隼人市長らが出席し、予定地内にある墓などの移設希望を確認する調査を行うと報告した。

 参加した町内会長の尾方和敏さん(76)は、「ほとんどの人が早く進めてほしいと話している。賛成が多い方に舵を切っていきたい」と述べた。一方、「住民の合意がないとだめだ」「残る人がいても進めるのか」といった意見もあった。

 計画を巡っては、国が21年、土地を買収した上で掘り下げる「掘り込み方式」で、遊水地をつくる計画を住民に提示した。市は現地再建を望む声を受け、遊水地の整備区域外なら地区内での再建を認める方針を示している。

 尾方さんによると、地区に住む15世帯のうち、7世帯が予定地内で暮らす。市は移転先として今年度内をめどに、下原田町に計13区画の宅地を造成する考えを明らかにしている。

 国は、大柿地区以外にも、人吉市中神地区、錦町の4か所、球磨、相良両村の各1か所の計7か所で、遊水地の整備を計画している。相良村の柳瀬地区は昨夏に着工した。