磐田市福田地区 郷土料理「カツオのみそたたき」が人気 近海の幸を手軽に

AI要約

福田地区(旧福田町)は遠州灘に注ぐ太田川の河口に位置し、福田漁港はシラスなどの近海漁業の拠点として知られている。

地元の鮮魚店や飲食店では新鮮なカツオを使った「カツオのみそたたき」が人気であり、多くの住民に親しまれている。

カツオをたたく音にちなんだ「たんたん」と名付けられた料理もあり、福田地区で特に愛されている。

磐田市福田地区 郷土料理「カツオのみそたたき」が人気 近海の幸を手軽に

 磐田市南東部に位置する福田地区(旧福田町)。遠州灘に注ぐ太田川の河口に福田漁港があり、シラスなどの近海漁業の拠点となっている。海の幸が豊かな地元の鮮魚店や飲食店で長く住民の人気を集めているグルメがある。新鮮なカツオの身にショウガやネギなどの薬味とみそを合わせてたたいた郷土料理「カツオのみそたたき」だ。お酒のつまみから子どものおやつまで、老若男女に今も幅広く親しまれている。

 地区中心部の住宅街に構える老舗鮮魚店「魚徳」(同市福田)は、カツオの切り身を包丁で刻んだ後、合わせみそを絡めながら再度たたき、ショウガとネギを添えて提供する。この味を求めて来店する住民も多く、週末には50パックほどを準備する。家庭でも簡単に調理できるといい、5代目店主の寺田泰徳さん(30)は「たたく前、カツオの身から筋を取ることで舌触りがよくなる」とポイントを説明。「たたきを丸めてハンバーグにしたり、ピーマンの肉詰めのタネ部分に代用したりするのも良いのでは」とアレンジも教えてくれた。

 店によってレシピはさまざま。福田漁港近くの施設「渚の交流館」(同市豊浜)にある鮮魚店「幸の字」では、カツオにみそをはじめ、しょうゆにつけ込んだニンニクやショウガを一緒に刻んで混ぜ込む。カツオをたたく音にちなみ「たんたん」と名付け、オープン当初からの看板商品だ。たんたんを使ったコロッケも人気といい「魚特有の臭みがなく、大人から子どもまでおいしく食べられる。薬味が入っているので塩で食べるのがおすすめ」と店主の笠原秀幸さん(44)は話す。

 複数の地元住民や漁業関係者らによると、かつては福田漁港で多く水揚げしていたマルソウダガツオを使って、みそたたきが作られていた。現在はマルソウダの水揚げが減り、本カツオで作るのが主流になっている。磐田市内でも福田地区以外では、みそたたきを知らない市民が少なくない。

 食べられ始めた時期や由来ははっきりしない。福田町史によると、1955年ごろには既に、漁師の家庭で日常的に食べられていたとの記録が残る。「台所では周りを汚してしまうので、屋外に出て料理した。道を歩いていると、トントン、トントンとたたいている音が方々から聞こえてきた。そうすると、きょうの漁はマルがたくさんとれた、とすぐに判[わか]った」との記述も。好んで食べる家では、薬味になるトウガラシ、ショウガ、シシトウ、ネギ、シソなどを毎年栽培していたとされる。

 「88歳の祖父が小学生の頃も食べていたと聞くので、戦前から戦後にはあったのでは」と寺田さん。笠原さんは「高齢のお客さんからはたんたんを『マルで作っているのか』と質問されることがある」と話し、「アニサキスなどによる食中毒を防ぐため、細かく刻んで薬味を混ぜた料理ができたのでは」とみている。

 福田漁港のカツオの水揚げ量は、2021年度が4870・6キロ、22年度が1887・9キロ、23年度が5645キロ。遠州漁業協同組合によると、本年度は5月末時点で5821・5キロと、前年度を上回る豊漁という。

 7日に天竜川の沖合で約50本のカツオを釣り上げた「栄丸」の大場栄一朗船長(48)は「漁場から漁港までが近いので、鮮度が良い状態のまま出荷できる」と福田の特徴を語った。