同じ中学の教師と生徒で“性的関係”から30年以上経て恐喝され、殺人未遂の75歳の“猶予判決”確定…現金300万円渡した後も「ジャニーズ問題でフラッシュバック、病院代」に絶望し「ずっと、脅されていく。殺さないと、妻や子ども、孫にも危害」に情状酌量

AI要約

元教諭が教え子の女性2人を殺害しようとした事件の裁判が結審し、懲役3年、執行猶予5年の判決が確定した。

事件の経緯には、30年以上前の性的関係が絡んでおり、被告は300万円を要求されたことにより犯行に及んだと主張している。

裁判で検察は懲役6年を求刑したが、最終的に懲役3年の有罪判決が出された。野澤被告は起訴内容を認め、後悔の弁を述べた。

同じ中学の教師と生徒で“性的関係”から30年以上経て恐喝され、殺人未遂の75歳の“猶予判決”確定…現金300万円渡した後も「ジャニーズ問題でフラッシュバック、病院代」に絶望し「ずっと、脅されていく。殺さないと、妻や子ども、孫にも危害」に情状酌量

 去年9月、北海道室蘭市で、30年以上前の“性的関係”をめぐり、教え子の女ら2人を“千枚通し”で刺し、殺害しようとした罪に問われている75歳の元教諭の裁判…検察と被告、どちらも期限までに控訴せず、懲役3年、執行猶予5年の1審判決が確定しました。

 起訴状などによりますと、元教諭の野澤俊重(とししげ)被告75歳は、室蘭市在住だった去年9月、当時の自宅前の路上で、教え子だった49歳と46歳の女2人を千枚通しで刺し、殺害しようとした罪に問われています。

 49歳の女は中学生と高校生の時、中学時代の教諭だった野澤被告と性的関係で、その関係をめぐり、30年以上経った2021年10月、46歳の友人と共謀し、野澤被告から現金300万円を脅し取りました。

 さらに去年9月、再び2人で現金を要求するなどした際、野澤被告に千枚通しで刺され、恐喝と恐喝未遂の罪が発覚。

 2月16日の2人の公判で、札幌地裁室蘭支部は49歳の女に「過去の性的関係を利用し、300万円脅し取るのは高額で、1時間半にも渡って脅迫、その2年後、また行ったことは、執拗で悪質」と指摘した一方で「野澤被告の昔の行為がこの事件を招いたのは否定できない」とし、懲役3年、執行猶予5年の有罪判決。

 46歳の友人にも「49歳の被告に巻き込まれたとも言えるが、積極性があり、実刑も視野に入るべきと判断」として、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。

 その後、殺人未遂の罪に問われた野澤被告の裁判員裁判が13日午前、札幌地裁で始まり、野澤被告は起訴内容を認めました。

 そして、性的関係については「秘密にする。地獄の底まで持っていくからと、何度も言われ、関係を持ってしまった。許されないことだとわかっていたが、自分自身にも弱みがあった。秘密にするならいいだろうと。いずれにしても、私が悪いんです。非常に悪いこと、浅はか、軽率だったと思います」と後悔。

 さらに、事件発生時の心境について、性的関係解消後も「父親のような状態だった」のに、現金300万円を恐喝された後も「前回は慰謝料。ジャニーズの問題もあり、今回は病院代」などとくり返されて「もの凄い不安と絶望。1回払ってしまうと、何回も請求されるんだ。殺さないとダメだ。妻や子ども、孫にも危害が加わると思い、とっさにつかんだのが千枚通しだった」と振り返りました。

 検察は「2人に抵抗されても刺し続けていて(傷は6か所と13か所)強固な殺意があった。被害者は元加害者であり、落ち度は否定できないが、警察に相談することなく、殺害しようとした動機は、短絡的で非難されるべきであり、原因は自ら招いたものである」と懲役6年を求刑。

 一方、弁護人は「300万円もの恐喝は、被害者の落ち度も大きい。くり返し脅迫され、追い詰められ、極限の心理状態で突発的に犯行に及んだ。酌量すべき事情がある。反省の気持ちも強く、深く後悔している」などとして、懲役3年、かつ、執行猶予付きの判決を求めました。

 こうして迎えた17日午後の公判で、札幌地裁は懲役3年、執行猶予5年を言い渡したのに対し、検察と被告、どちらも期限までに控訴せず、1審判決が確定しました。

■判決理由

・2人を何度も執拗に刺し、体力があったら、もっと刺していた

・殺意は強固なものだが、金銭を脅し取られ、冷静さを失い、突発的に生じたもの

・攻撃的なものより防御的なものと考え、強い非難を向けることはできない

・被告人に非はあるが、30年経った後に脅されたことは汲むべきものがある

・警察に相談しなかったのも、後から考えると良くないが、教師としての功績を考えると、一概には言えない

 これまでの女2人、野澤被告の公判で指摘された事実関係などは、下記のようになっていますが(重なる証言などは略)性的関係までの経緯は、証言が異なっています。

 

■女2人と野澤被告の初公判で、検察が指摘した経緯、事実関係

・野澤被告と49歳の女は、同じ中学校で教諭と生徒

・女が中2時~高2時、性的関係

・室蘭市外の高校にすすみ、寮生活の女を時おり、野澤被告が車で送迎

・性的関係解消後も、女が野澤被告に悩み相談

・1998年に長男誕生、その後も近況などを年賀状で報告

・長男の高校受験に向けて、野澤被告が家庭教師

・心筋梗塞を患った女を野澤被告が見舞う

・2021年、女の口座残高2860円、カードローンが約30万円

・妹分だった46歳の友人の女に性被害、フラッシュバックなどを相談

・友人が野澤被告に問い質すも、否定される

・同年10月、2人で野澤被告宅へ

「バレたら全国ニュースだね。先生も奥さんも、ここにいられないね」

「弁護士を介して、話し合えば?」

「面倒くさいよね」

「弁護士に払うくらいなら、直接お金を渡す」と野澤被告

「私が大袈裟にしてたら、先生パクられてたよ。誠意だよ、誠意!先生の誠意はいくらなの?誠意を見せろ!」

・後日、野澤被告の妻から現金300万円

・2022年8月、再び口座残高4700円ほどになり、カードローン約30万円

・野澤被告に電話するも「もう、うちには金がない」と着信拒否の設定

・去年9月26日、女が友人に性被害のフラッシュバック悪化を相談

・友人が野澤被告に電話するも「もう、うちには金がない」

・同日、2人で野澤被告宅に行き、千枚通しで刺される

■女2人の弁護人、野澤被告の弁護人の指摘

・野澤被告は大学同期の女性と24歳で結婚、3人の子ども

・60歳の定年後も再雇用で教壇に立ち、70歳から年金で妻と2人暮らし

・教え子からは「一番厳しいけど、一番優しい」の呼び声

・不登校生徒と向き合い、不良グループを更生

・49歳の女は成績悪く、放課後に補習

・そのうち、女からのアプローチで性的関係になる

・「自分を最後に送って」「先生、大好きなの」「私を女にして欲しい」

・高3で性的関係は解消

・その後も女の息子のいじめ被害の相談、高校受験で家庭教師、病気の見舞いなど続ける

・2021年10月、46歳の友人から電話「覚えていますか?(49歳の女と)性的関係あった?」

・現金300万円脅し取られる

・2023年9月、46歳の友人から「300万は慰謝料、今回は病院代、ジャニーズのこともあるんだからね」

・「もう逃げられない、この苦しみから逃れられない」と思い、台所の千枚通しを手に犯行

■野澤被告への被告人質問

・(どのような教師だと?)非常に恐ろしい教師のイメージ、パンチパーマをかけていたので

・室蘭市で「一番厳しく、優しく、温かい教師」と言われていた

・非行の子どもとひざ詰めで話し合い、40~50人立ち直らせてきた

・49歳の女も、その1人

・2年生の定期テストで0点、かわいそうに思って放課後や夏休みに1年生の数学から教えた

・(性的関係になったのは?)※上記、弁護人の指摘と同じ

・高校の寮に暴走族の男を入れたことがあり、土下座して許してもらい、何とか卒業させた

・(その後の関係は?)※上記、検察と弁護人の指摘と同じ

・1回目の事件前までは身内、父親のような状態

・(良好でなくなったのは、いつ?)1回目の事件時から

・3~4年、連絡なかったのに、いきなり友人から性的関係の電話

・機関銃のように非難を浴びせられ、土下座して謝罪したが「謝って済む話ではない」と

・(300万円渡した時の心境?)老後の生活は厳しくなるが、これで解放されるなら良かったと

・(再度、電話が来た時は?)もの凄い不安と絶望。1回払ってしまうと、何回も請求されるんだと思った

・(2人が直接、来た時は?)殺さないとダメだと思ってしまった。妻や子ども、孫にも危害と思った

・台所に引き返して、とっさにつかんだのが千枚通しだった

・49歳の女を刺した後、46歳の友人に向かった

・どこを刺したかは、覚えていない

・逃げた1人を追いかけようとしたが、血圧が上がって苦しくなり、仰向けにひっくり返った

・妻の「パパ、何やってるの」の声が聞こえ、人生おしまいだ。ママ、急いで警察を呼んでくれと言った

・(2人への思いは?)すまないという気持ちで、勾留中、ずっと眠ることができなかった

・(妻や面会に来てくれた同僚、教え子への気持ちは?)「先生、待ってるよ」と励ましてもらった。ありがたいなと思います

・(恐喝の被害を届け出なかった理由は?)警察が相手にしてくれないだろうと思った。そもそも最初の過ちは私にあるから

・最後の電話で46歳の友人から「先生、ジャニーズの事もあるんだよ」といわれて絶望した

・ずっと、ずっと、長く脅されていくのだろうと思った

・もう逃げられない。怒りよりも、恐怖です。また脅されるんだという

■49歳の女の被告人質問

・自分が苦しんだことについて、先生に考えて欲しい気持ちがあった

・(金の配分は?)友人にはガソリン代、子どもたちのお菓子代として1万円

・(2022年に電話した時のやりとりは?)「もう、うちにはお金はないぞ。心臓の手術代も渡したんだから」

・(2023年、さらに電話の理由は?)ジャニーズの性加害問題が頻繁に出るようになって、辛くて…(泣き出して声にならず)

・(野澤被告側も辛く、圧力を受けたのを理解?)できます。本当に酷いことをした。友人も巻き込んでしまった

・(性行為は強要された?)強要されてないが、子どもだったので大人の圧があった。断れないような…

・(同意はしてた?)私からしたら不同意ですけど、怖くて言えなかった

・(性被害のフラッシュバックとかは、いつから?)鮮明に覚えてないが、30歳すぎてから

・酷くなってきたのは、40歳を過ぎてから

・(当時、嫌な気持ちは?)家に帰って、泣いていた

・(車で送迎してもらってた?)頻繁ではないですけど、片道1時間かかるので

・(嫌な先生に送り迎えは嫌じゃない?)本当に矛盾しているなと思います。“足”に使っていたという感じ

・(心筋梗塞で入院時、連絡とって見舞いに来てもらってますよね?)先生も心臓の病気があったので

・(その時、フラッシュバックはない?何とも思わなかった?)すいません…

・(30歳前後に精神科を受診、フラッシュバックは相談しなかった?)恥ずかしくて、言えなかった