エアコンのない特別教室「サウナのよう…」 猛暑で広島市内の学校現場ため息 低い設置率、増やす動きもなく

AI要約

学校現場からエアコンのない特別教室での授業がつらいとの声が漏れており、特別教室の設置率が低い問題が浮き彫りになっている。

広島市立小中学校では特別教室での授業は厳しい環境下で行われており、エアコン整備の動きは進んでいない。

一部の学校では独自の対策として、断熱効果のある塗料を使い、特別教室の屋根を塗るなどの取り組みも行われている。

エアコンのない特別教室「サウナのよう…」 猛暑で広島市内の学校現場ため息 低い設置率、増やす動きもなく

 学校現場から「エアコンのない特別教室での授業がつらい」とのため息が漏れている。。広島市立小中学校の場合、普通教室はエアコンが完備されているが、理科室や家庭科室といった特別教室は設置率が低く、増やす動きもない。今夏も厳しい暑さが予想される中、独自の対策に乗り出す学校もある。

 まず広島市立校の教員に現状を尋ねた。小学校の40代教員は「全身汗だくで授業している」と漏らす。普通教室で学習できるよう工夫するが、理科の実験やミシンを使う家庭科など、そうもいかない授業もある。中学の授業で指導を補助する40代の学習サポーターは「扇風機は回すが、熱風が来る」とうなだれる。

 働く環境としても過酷だ。別の中学の50代教員がつぶやく。「技術家庭科や美術の教員はサウナのような部屋にずっといる日もある。こんな職場、ないですよね」

 市教委施設課によると、小中学校では2019年度までに普通教室へのエアコン整備が完了。ほぼ同じ時期に音楽室、図書室、コンピューター室などに整備した。公立校を対象にした文部科学省の調査では、22年9月時点で同市の小中の特別教室への設置率は38・1%。その後、増やす計画はない。同じ調査で県平均は46・5%、全国平均は61・4%だった。

 市立の小中は計204校。施設課によると予算は現在、校舎の増改築、老朽化した校舎の外壁や雨漏りする屋上の改修などに重点的に充てている。エアコン整備は多額の事業費が要るため「国に支援の拡充を求めつつ、事業費を抑える手法を研究する」と説明するにとどまる。

 県内を見渡すと、計画的に整備を進める地域もある。例えば、22年の文科省調査では県内で設置率が低い方から2番目だった呉市(当時28・2%)。市教委によると本年度中、全59校の「授業で使う特別教室には全てに付く予定」。災害時に避難所として使うことも想定しているという。

 全国の政令指定都市はどうだろう。22年時点で20市中10市が設置率5割を超えていた。19・3%にとどまっていた静岡市は昨年度、授業で使う特別教室には全て設置すると決めた。対象校は113校、総事業費は58億円。市教委は「市長が視察し、暑さを体験したことが決め手になった」と明かす。

 記録的な猛暑に見舞われた昨年並みの暑さも予想される中、エアコンが付かないなら―と独自に動いた学校もある。広島市の祇園東中(安佐南区)では近く、校舎と別棟の2階にある金工室の屋根に断熱効果のある塗料を塗る。

 ロボコンの全国大会で1位の実績がある美術・創造部の部室。断熱塗料の存在を知った顧問の猪狩克也教諭が、塗料を製造販売するWAKO(中区)を見つけて直訴し、協力を得た。WAKOは塗料を無償提供する代わり、室温を測って効果を検証する。猪狩教諭は「子どもの熱中症防止、保護者の心配や教員の疲弊の解消の一助になれば」と力を込める。