イヌが服を纏う意味 ドッグウエアのテクノロジー【Howly】
人間は「服を着る動物」であり、人間以外の動物が服を着る意義について考える。
ドッグウエアブランド「Howly」の制作現場での取り組みと、イヌに服が必要な理由について紹介。
イヌの服の重要性を機能面と情緒面の観点から解説し、「人間とイヌの共生」を支える意義を探る。
人間は「服を着る動物」である。私たちは、はだかで外に出ることを禁じられており、生活時間のほとんどをいろいろな服に着替えながら過ごす。人間の社会は「被服」を前提に設計され、だからこそファッションは途方もなく豊かだ。
一方で、人間以外の動物が服を着るとき、そこにはどのような意味が生まれるのだろうか。
今回は「ドッグウエア=イヌ用の服」の制作現場に注目してみたい。飼い主はなぜ、飼い犬に服を着せるのか。人間とはまったく違う可動域と皮膚感覚を持つ動物にとって「良い服」とは何か。そもそも、体毛に覆われているイヌに服は不要ではないのか? さまざまな疑問が浮かぶ。
細密なパターナリングと素材選びで知られるドッグウエアブランド「Howly(ハウリー)」に聞いた。
ーHowlyの活動について教えてください。
Howlyは、2023年11月にスタートしたドッグプロダクトブランドです。群馬県にアトリエを置き、デザイナーの私とブランディング担当のメンバー2人で企画・生産を一貫しながらイヌ用の服、リード、ベッドなどを中心にリリースしています。現在は2つ目のコレクション(2024SS)をリリースしたところです。
ー立体的な仕立てで、イヌの体に見事にフィットしています。
パターンはもっとも重要な要素です。ドッグウエアの企画では、人間とはまったく異なるイヌの可動域に着目し、快適な着心地をつくりだす過程に多くの時間を割いています。
ーデザインも含めてまるで人間の服のようですが、そもそもイヌに「服」は必要なのでしょうか。
主に2つの意味があると考えています。ひとつは機能面(=温度調節やケガの防止)。もうひとつは情緒面(=飼い主とのコミュニケーション)です。
私たち人間と異なり、イヌは体毛で体を守り、夏毛・冬毛が生え変わるなどの温度調節をしていますから、機能面ではすべてのイヌに服が必要というわけではありません。しかしながら、人間と生活するなかで服が大きな手助けとなる犬種があります。Howlyのメインのターゲットである「イタリアン・グレーハウンド」種もそのうちのひとつです。デザイナーである私自身の愛犬でもあります。イタリア原産のこの犬種は軽快で運動も得意ですが、細身で毛も脂肪も薄く、暑さにも寒さにも弱い。
性格は穏やかで室内飼いにも適しますが、ふとしたことでケガや骨折の危険性があります。お散歩のときには特に外の環境の影響を受けやすい。こうした人間には気が付きにくいトラブルを防ぐためにイヌの服が役立ちます。まさに「人間とイヌの共生」のための道具と言えます。