カヌーをかついでカナダの森をポルタージュ! 限界を超えた経験とは

AI要約

ポルタージュとは、カヌー旅の途中でカヌーや荷物を担いで陸路を歩く行為で、カヌー文化のアイコンとされている。

カヌーを頭に載せて森を歩くことで、カヌーの運用性能や限界に挑戦する経験が得られる。

最後にカヌーを湖に反転させるという達成感と開放感に満ちた瞬間が訪れ、カヌーイストとして成長する。

カヌーをかついでカナダの森をポルタージュ! 限界を超えた経験とは

カナディアンカヌーの聖地であるオンタリオ。今回はカヌーを担いで行く「ポルタージュ」を紹介します。

#3 カヌーと共に森を歩く

「Walking like a Moose!!」

 

カナディアンのカヌーガイドが満面の笑みを浮かべて、ポルタージュに初挑戦する人にエールを送る。

 

ポルタージュとは、カヌー旅の途中で、川や湖の間をつなぐためにカヌーや荷物を担いで陸路を歩くこと。滝、急流などカヌーでの通過が難しい場所を迂回するためにも行なう。

 

このポルタージュが、カナダのカヌー文化のアイコンだ。オンタリオのカヌーイストたちは、「水に浮かぶだけではなく、ポルタージュを一人でこなせるようになってこそ、真のカヌーイストだ」と声を揃えていう。

 

カヌーを頭に載せて森の中を歩いていくと、だんだん慣れてきて、木の根などを避けながらひょいひょいと歩けるようになる。そして、カヌーの形状が、単に水上の操作性だけのデザインではないことに気付く。そう、カナディアン・カヌーの真価は、陸路での運用性能にあるのだ!

 

やがて、急速に体力を消耗し、経験したこともないような激しい息遣いで森の中を歩くことになる。ポルタージュは登山やマラソンと同じ、自らの限界に挑戦する行為だ。疲弊困憊の果てに湖が見え、湖にそのままずんずんと入っていく。

 

最後にくるりとカヌーを反転させ、着水させた瞬間の開放感と達成感は、言葉では言い表わせない。眼前には清々しい湖と空の青が広がっている……。

 

ムースのようにワッシワッシと森の中を歩く。汗みずくで、限界を超えた経験が記憶に刻まれる。それは、この森と湖の大地と溶け合って、一体化した記憶だ。こうして、カヌーイストとなっていき、またこの森に戻ってくる。

Tomoki Onishi

撮影・文/尾西知樹

トロント在住のフォトグラファー、マルチメディ

ア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オ

ンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。

(BE-PAL 2024年8月号より)