「大津祭」今年の注目は月宮殿山 前懸幕と胴懸幕、表裏を戻し復元

AI要約

大津祭の準備が進行中であり、曳山の修理と復元が注目を集めている。

弁天の琵琶の復元作業は試行錯誤の連続であり、複雑で大変な作業だった。

国庫補助事業により、大津祭の曳山や幕などの修理・新調が実施されている。

「大津祭」今年の注目は月宮殿山 前懸幕と胴懸幕、表裏を戻し復元

約400年前に起源を持つ湖国(滋賀県)三大祭りの一つ「大津祭」。16日には13基の曳山の巡行順を決める「くじ取り式」が天孫神社(大津市京町)であり、子供たちの囃子の稽古も始まった。10月12日の宵宮(よみや)、同13日の本祭に向け、地元は徐々に盛り上がる。本番で注目されるのは毎年、国庫補助事業で修理・復元新調される文化財。今年の目玉は、総額2900万円を費やして復元新調した曳山「月宮殿山(げっきゅうでんざん)」(上京町)の前懸幕(まえかけまく)(縦163センチ、横186センチ)と胴懸幕(縦163センチ、横276センチ)。詳しく紹介する。

■弁天の琵琶、試行錯誤

「切り抜かれた弁天の琵琶を本来の姿に戻した。しかし、試行錯誤だった。令和2年度の調査の80%を費やした」

作業にあたった龍村美術織物(京都市右京区)の谷口仁志(ひとし)制作部長が苦労を解説した。

復元新調したのは曳山の前と左右の懸幕3枚1組で、七福神図を織り出した綴織(つづれおり)。19世紀の江戸時代後期のものとされる。

理由は不明だが、懸幕は製作から十数年で表裏逆転されていた。このため、復元新調では製作当初の構図に戻すことになった。その際の問題が弁天の持つ楽器「琵琶」だった。

「全体的には図柄をひっくり返した。ただ、表裏を逆転した際、(右手で弾くため)琵琶だけ切り抜いて(弁天の左側に)付けていた。復元新調では、琵琶をそのままはめ込むと大黒天に影響する。複雑で、本来の姿に戻すのが大変だった」と谷口部長。詳細に調べ、当初の図柄に戻した。4カ年の事業期間のうち、令和2年度は図案調査と協議。その80%は弁天の図案検討だったという。

■「あんなに複雑とは」

国庫補助事業は、大津祭が国の重要無形民俗文化財に指定されたことを受け、平成29年度から始まった。関係する16町の要望を受け、大津祭保存会が専門委員会に諮問。答申を受けて、毎年、曳山などの修理を実施している。

今回の前懸幕と胴懸幕の復元新調について、上京町(かみきょうまち)月宮会の栢口智司(かやぐちさとし)会長(60)は、「子供のころから曳山にのっていたが、年々、幕が傷んでいくのを目の当たりにしていた。それだけに、感慨深い」という。そして、問題となった弁天の琵琶の図柄については、「あんなに複雑なものとは思ってもみなかった。本来の姿に戻すのは、本当に大変だった。表裏逆転された経緯はわからないが、色鮮やかに復元新調された幕をぜひ見ていただきたい」と話していた。