四面楚歌なのに辞任拒否…斎藤元彦兵庫県知事「逃げない理屈」を考えてみた(元木昌彦)

AI要約

斎藤元彦兵庫県知事がなぜ辞めないのかについて考察。

斎藤元知事の疑惑を発端とした状況を整理し、メディア報道を脇に置きながら斎藤側の視点から見る。

斎藤元知事の孤高な姿勢や批判に耐える姿勢を称賛。不信任決議にも屈しない姿勢を示している。

四面楚歌なのに辞任拒否…斎藤元彦兵庫県知事「逃げない理屈」を考えてみた(元木昌彦)

 斎藤元彦兵庫県知事(46)はなぜ辞めないのだろうか。

 総裁選を凌駕する注目を集め、メディア、兵庫県民、日本中から「知事失格」という批判を受け、斎藤の疑惑を追及する百条委員会ができ、自民党、遅ればせながら日本維新の会までが不信任決議に賛成する事態になっている。まさに四面楚歌だが、「県政を引き続き進めていく」と辞職を真っ向から否定している。

 この「なぜ」を考えるためには今のメディアスクラム報道を脇に置く必要がある。なぜなら、メディアというのは追及することには情熱を燃やすが、相手側に立ってものを考えるという習性がないからである。

 斎藤側からすればこの“騒動”がどう見えるのだろうか? 批判は覚悟のうえで、私は斎藤を“ほめ殺し”してみたいと思う。

 発端になった告発文書について。西播磨元県民局長は、斎藤による職員へのパワハラ、企業へのおねだりなど7項目にわたる“疑惑”を記している。だが、これを県庁内の保護法に基づいた公益通報窓口を使わず、3月12日に匿名で一部の県議や報道機関に配布していた(斎藤に関する疑惑は3点。あとは片山安孝副知事3点、県幹部らが1点である)。

 斎藤がその存在を知ったのが3月20日。翌日、副知事らに徹底的に調査するよう指示し、3月27日の記者会見で斎藤は告発文書を「うそ八百」と断じた。元局長が県の公益通報窓口に告発したのは、その後の4月4日である。

 斎藤側に立てば、一部の者に配布された文書は「公益通報」ではなく怪文書まがいで、内容は自分を陥れるための「誹謗中傷」と捉えたとしても、100%非難されることだろうか。それに、藤原正廣弁護士に対応を相談して、文書の真実相当性についての見解を得ているのだ。

 パワハラについては、百条委員会が全職員にアンケートし、そのうちの約4割の職員が「パワハラを見聞きした」と答えている。だが、その内容は、「目の前でエレベーターの扉が閉まって激怒した」「公用車が車止めで止まり20メートル歩かされただけで怒鳴り散らした」というもの。私が編集長時代、部下のヘマに激怒した上司が、「おまえのような息子を生んだ親の顔が見たい。すぐにここから親に電話しろ!」と迫ったことがあった。それと比べると可愛いものではないか。

 視察先でおねだりしたものを独り占めしたことを“意地汚い”と批判されていることについても、「斎藤氏は職員と分け合った場合、『なぜ(秘書課など)特定の課の職員のみ食べられるのかという問題がある』と不公平感について言及。(中略)自身がすべて消費する方針を秘書課に伝え『ルールというか、明確化した』と述べた」(産経新聞のネット版〈9月6日18時46分〉)。山ほどもらった名産の果物やカニなどを、斎藤と妻と子供だけで“消費”するのはさぞ、きつかったのではないか。

 斎藤の凄さは逃げないことである。メディアからのあけすけな質問にも、カメラの前で表情を変えずよどみなく答える。自分のやっていることに一点の瑕疵もないと考えているのだ。孤高、信念の人である。

 斎藤は不信任決議が可決されても辞めず、解散に打って出る初の首長になるのではないか。

「パパ活不倫」を週刊誌に暴露されただけで議員辞職してしまうひ弱な政治家が多い中、これほどの“逸材”を潰してしまっていいのか。ぜひ、斎藤には国政に出て総理を目指してもらいたいとさえ思っている。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)