銀行員「お父さんに隠し子が」…“不毛な議論”に子を巻き込まないために、余命宣告後の森永卓郎氏が真っ先に着手した「生前整理の最優先事項」

AI要約

経済アナリストの森永卓郎氏が膵臓がんであることを公表し、病院から退院後に取り組んだ「生前整理」。父の財産相続時の苦労から、子への負担軽減の対策を語る。

父親の預金口座を見つける苦労や相続手続きのタイムリミット、郵便物から金融機関を特定する過程。

預金通帳のなかったことが判明し、全店照会の難しさから、預金の特定が困難である現状。

銀行員「お父さんに隠し子が」…“不毛な議論”に子を巻き込まないために、余命宣告後の森永卓郎氏が真っ先に着手した「生前整理の最優先事項」

昨年末に膵臓がんであることを公表した、経済アナリストの森永卓郎氏。病院から退院した森永氏がとりかかったのは「生前整理」でした。森永氏の著書『がん闘病日記』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、自身の父親の財産相続時の苦労と、その経験から辿り着いた、子への相続手続きの際の負担軽減の対策について、みていきましょう。

東京の病院を退院した私がすぐに取りかかったのは「生前整理」だった。まずは、銀行預金の一本化だ。

2011年3月に父が亡くなったあと、私が1番苦労したのは、父の持っていた預金を確定することだった。晩年、介護施設に入った父のふだん使いの預金口座は、介護施設への支払いですぐに底をついた。「ほかに預金はないの」という私の問いに、父は「預金はあちこちにある」と答えた。ところが、その通帳がどこにあるのかと聞いても、「それはわからない」と言う。どこの銀行に口座があるのかと聞いても、それも覚えていないというのだ。

相続税は、亡くなってから、10ヵ月以内に申告を完了しなければならない。

私は油断していた。父親名義の銀行の貸金庫のなかに預金通帳があると確信していたからだ。父の生前に手続きをして、私も貸金庫を開けられるようにしていた。ところが、父の死後、いざ銀行に貸金庫を開けにいったら、なかに入っていたのは、大学の卒業証書とか思い出の写真とか記念品ばかりで、預金通帳はひとつも入っていなかったのだ。

仕方がないので、私は実家にこもって、届いていた郵便物を1つ1つチェックしていった。父が要介護状態になり、実家のマンションに戻れなくなってから、郵便受けがあふれてしまうので、私が2週間に1度くらい実家に通って、郵便物を和室に放り込んでいた。その郵便物は、父が亡くなったときには、高さ1メートルくらいの山になっていた。その山のなかから金融機関からの郵便物を選別し、預金がありそうな支店名を推定していった。

いまは全店照会といって、銀行の全支店を対象に預金があるかどうか照会できるようになったのだが、当時は支店名まで特定しないと、口座があるかどうかさえ教えてもらえなかった。ただ、全店照会ができるようになったといっても、銀行の数だけで100以上あり、信用金庫や信用組合を含めれば500以上あるのが現実だ。すべての金融機関を手当たり次第に調べるのは事実上不可能だ。