勉強嫌いの中学受験、すべり止め校の「不合格」を知った直後の受験の空気

AI要約

息子の中学受験において、親のエゴと向き合いながら、不合格から学ぶ機会を歓迎する森さん。

息子とのコミュニケーションを大切にし、前向きなサポートを心がける姿勢。

遅刻による不合格に対し、冷静かつ前向きに対処する森さん一家の姿勢。

勉強嫌いの中学受験、すべり止め校の「不合格」を知った直後の受験の空気

夏休みが終わり、新学期が始まると、年始の「中学受験」がいよいよ近づいてくる。受験という試験に「挑む」ことは素晴らしいことだが、それぞれの家庭や子どもが違うように「中学受験をしないとならない」ということでは決してない。大切なのは、「周りが受験しているから」ではなく、「子どもがどうしたら幸せになるか」「子どもがどうしたいか」だ。心が不安定になるような状況の場合、受験をしたほうがいいのだろうか?と考えることも必要なのだろう。

「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」

こう語るのは、森将人さん。慶應義塾大学を卒業した元大手証券ディーラーだ。

どのように「親のエゴ」と感じたのか。そして子どもとどのようにコミュニケーションを取り、「やってよかった」という言葉が出てきたのか。

森さんが率直につづる連載第10回は、6年生の2月2日。第一志望の慶応普通部の受験の翌日のことをお伝えする。

森さんの息子の孝多くん(仮名)は、1月無事に「前受け校」に合格した。しかし、そこは遠い学校でもあり、進学する予定ではない。

1月終わりには第二志望の立教新座を受験。ここで合格すればあとは慶応だけに集中できると思ったのだが、結果は「補欠合格」。100%入れる保証もないため、戦略を練らなければならなかった。「どこを受けるか」を考え直すのだ。

運命の日を迎えた2月1日。慶応の受験を午前に終え、都市大附属の受験に猛烈ダッシュで向かうも、遅刻して別の部屋で受けることになった。そして当日夜発表された都市大附属の結果は「不合格」だった。

不合格から学ぶものは多いはずだが、「その場」をそのまま受け入れるのは簡単ではない。森さんはどのように息子と接したのか。

2月2日。

今日は6時半に孝多を起こして、前日午後に受験した都市大付属の結果を伝えなければならない。ぼくは4時に起きて、どういえばいいか考えていた。遅刻が響いたのは事実だし、それで実力を発揮できなかったというのも嘘ではないだろう。

孝多を責めても仕方ない。前向きに2日のテストを受けるには、遅刻を原因にするのが一番いいというのが、妻と前日に話した内容だった。

「今日もテストか」

起きるなり、孝多はうんざりした表情をした。

「大事な本番だからな。早く起きて、頭をスッキリさせないと」

「今日はいくつ受けるの?」

妻が答えた。

「午前と午後で2つだよ」

孝多は妻の言葉で、前日の結果を認識したようだ。

「都市大落ちたってことか」

合格発表サイトを見せる準備をしていたが、その必要はなかった。孝多は観念したように起きると、いつも通り風呂に入った。今日の午前中は、第3志望の明大付属だ。勝負の一日になる。