多様性を追求し、新しい扉開く 第35回高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者5人の横顔

AI要約

フランスを代表するコンセプチュアル・アーティストであるソフィ・カル氏の経歴と業績について紹介されている。

ソフィ・カル氏が他者を追求し、詩的な要素を内包する作品を制作してきた経緯について述べられている。

現代のアートシーンにおいても時代を先取りする作風を持つソフィ・カル氏の姿勢と活動に期待が寄せられる様子が描かれている。

多様性を追求し、新しい扉開く 第35回高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者5人の横顔

高松宮殿下記念世界文化賞の第35回受賞者が発表された。それぞれの分野で芸術表現を追求し、文化の発展に貢献してきた5部門の受賞者たちの経歴と業績、また同時に発表された第27回若手芸術家奨励制度の対象団体の活動を紹介する。

◆絵画部門 ソフィ・カル氏 他者を追う探究心原点

フランスを代表するコンセプチュアル・アーティストの一人。他者へのインタビューを通して、詩的な要素を内包する話を探求し、写真と文字を組み合わせた作品を世に送り出してきた。2012年には、フランス芸術文化勲章コマンドールを受章した。

アーティストとしての原点は、他者の声や姿を追った探求心。見知らぬ人を自宅に招き、自身のベッドで眠る様子をインタビューした《眠る人々》(1979年)を出展したことに始まる。「ゲーム」と呼ぶ、自身が決めた設定を基に、他者の人生に向き合った過程で芸術作品となった。

街中で遭遇した人を尾行し、その行動を撮影しながら追跡した《ヴェネチア組曲》(80年)も、他者の人生を映し出した代表作。20代の頃、日々に方向性を持たせるために始めた尾行という行為が芸術につながった。

自分の人生をさらけだす作品にも果敢に挑戦してきた。日本滞在の経験を基に、自らの失恋体験による痛みを写真や言葉で紡ぎだした《限局性激痛》(99~2000年)は日本で特に人気がある。「みんな同じような経験をし、同じ痛みを持っている」。多くの女性の共感を呼んだ理由をそう語る。自らの芸術を描写するのはあくまでも「鑑賞者の仕事」と、作品の評価を一貫して見る人に委ねる姿勢に変わりはない。

交流サイト(SNS)を通じて自身や他者の人生を公開する現代、自らの作風は時代を先取りする格好だったが、その影響は受けていないという。ただ、「アイデアを実現するためにSNSが必要にならないともかぎらない」と話す。世界文化賞受賞の来日で新たなアイデアがひらめくことに期待している。

◆彫刻部門 ドリス・サルセド氏 暴力の被害者をモチーフに