41年前の発行なのに2022年東大含む大学生協の文庫売上1位…知のバイブル「思考の整理学」をカンタン要約

AI要約

飛行機とグライダーの能力に例えながら、知識の受動的獲得と創造的思考の重要性を説く。

思考の整理法や情報のメタ化について説明し、独自の思考を生む術を提案。

ニュースや本からの情報収集方法、情報の分類、整理法などについて具体的な手法を提示。

■情報過多の時代を上手に生き抜く 

 飛行機は自力で飛ぶことができるが、グライダーは自力で飛ぶことができない。人間の能力もこの2つに分けることができる。受動的に知識を得る「グライダー能力」と、自分で物事を発明・発見する「飛行機能力」だ。知識を詰め込むグライダー能力だけが優秀でも、所詮コンピュータには負けてしまう。AIの誕生によって人間の仕事が奪われようとしている今だからこそ、考えることの本質に迫り、独自の思考を生む術を教えてくれるのが本書だ。

 物事を考えるのには、最初にテーマの設定が必要だ。文学の研究ならば、まず作品を読む。読んでいくと、わからないところ、違和感を抱くところなどが出てくる。これを書き抜く。繰り返し心打たれるところや、わからない箇所が再三現れたら要注意。こうした部分が「素材」になる。ただ、素材だけでは足りない。アイデア、ヒントがほしい。それらはビール醸造でいうところの「醱酵素」になる。そして「麦」に当たる先の素材と一緒に“寝かせる”ことで、化学反応が進行し、「おいしいビール=面白いテーマ」が生まれる。

 寝かせることほど、思考法の整理法で大切なものはない。英語には「一晩寝て考える」という成句がある。また中国では、文章をつくるときに優れた考えがよく浮かぶ場所として、「馬上」「枕上」「厠上」の「三上」があるとされてきた。枕上は、寝て朝目覚めれば、よい考えが浮かぶことを指す。一晩中ずっと考え込むよりも、一晩寝て朝起きればよい考えが浮かぶものである。

 テーマが決まれば、情報を集めて「メタ」化していこう。情報には段階がある。たとえば「○○山は南側の斜面が砂走(すなばし)りになっている」というように、自然を直接表現したものは「第1次情報」だ。対して「この地方の山は△△火山帯に属している」といった表現は「第2次情報」になり、第1次情報を踏まえて、より高度の抽象を行ったメタ情報だ。

 思考や知識についても、メタ化の過程があてはまる。具体的、即物的な思考や知識は第1次情報だ。その同種を集め、整理し、相互に関連づけると第2次情報になる。それをさらに繰り返すと、第3次情報になる。思考の整理とは、低次の思考を抽象のはしごを登って、メタ化していくことだ。その際にも、醱酵が役に立つ。寝かせて、化学的変化が起こるのを待ち、思考を純化させていく。

 多くの人にとって、第1次情報の代表はニュースだ。新聞を読んでいて、「これは」と思うものに出くわしたらスクラップする。方法はスクラップブックに貼るのと、袋に区分けするのと2つある。前者はテーマがおおまかであれば便利だが、複数になると不便で、後者のほうがいい。袋の中身がたまってきたら、資料が揃ってきた証拠。そこで改めて目を通そう。

 第1次情報を本に求める場合、関連書籍を集められるだけ集めて、積んでおく。そして、片っ端から読んでいく。興味のあることは、すべて頭の中へ記録する。関心事項は、そう簡単に忘れないので安心しよう。