“『陽キャ』の苦しみ”描き絶賛…麻布競馬場さん リアルの源は「港区での飲酒活動」

AI要約

平成28年、31年、令和4年、5年の四つの物語がつながる連作短編集を刊行した。コロナ禍を経て人生の価値観や働き方が激変した令和を生きる若者の自意識や不安感を描くと同時に、自身が育った平成の価値観を問い直した作品は、第171回直木賞の候補作。惜しくも受賞を逃したが、選考委員からは「あまり小説で描かれてこなかった『陽キャ』の人たちの焦りや苦しみを高い解像度で描くことで、その奥にある何かを浮かび上がらせる感じが素晴らしい」と絶賛された。

2021年にツイッター(現・X)に投稿し始めた小説が話題となった。22年に書き下ろしを加えた短編集「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」でデビュー。「人は自由に走ってるようで実は決められたコースをムチ打たれながら競争させられている」。ペンネームにはそんな皮肉を込めたといい、生きる道筋を選ぶ難しさを描いた「令和元年-」とも重なる。

東京で生きる人々の心の痛みを描き続けてきた。登場人物のリアルさの源は「日頃の港区での飲酒活動」と語る。慶応大生時代から多様な職種や世代と接し、その生態を「学習」してきた。「生成系AIみたいに、こんな人間を書きたいと自分にプロンプト(指示文)を出せば自然に書けます」と言う。

“『陽キャ』の苦しみ”描き絶賛…麻布競馬場さん リアルの源は「港区での飲酒活動」

 平成28年、31年、令和4年、5年の四つの物語がつながる連作短編集を刊行した。コロナ禍を経て人生の価値観や働き方が激変した令和を生きる若者の自意識や不安感を描くと同時に、自身が育った平成の価値観を問い直した作品は、第171回直木賞の候補作。惜しくも受賞を逃したが、選考委員からは「あまり小説で描かれてこなかった『陽キャ』の人たちの焦りや苦しみを高い解像度で描くことで、その奥にある何かを浮かび上がらせる感じが素晴らしい」と絶賛された。

 2021年にツイッター(現・X)に投稿し始めた小説が話題となった。22年に書き下ろしを加えた短編集「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」でデビュー。「人は自由に走ってるようで実は決められたコースをムチ打たれながら競争させられている」。ペンネームにはそんな皮肉を込めたといい、生きる道筋を選ぶ難しさを描いた「令和元年-」とも重なる。

 東京で生きる人々の心の痛みを描き続けてきた。登場人物のリアルさの源は「日頃の港区での飲酒活動」と語る。慶応大生時代から多様な職種や世代と接し、その生態を「学習」してきた。「生成系AIみたいに、こんな人間を書きたいと自分にプロンプト(指示文)を出せば自然に書けます」と言う。

 覆面作家を貫く。平日は会社員として働き、睡眠を削って執筆する。葛藤もあった。「全身全霊で何かすること自体が平成的な働き方だなって」。今後も会社員は続け、次作は昭和を舞台にするつもりだ。「微力でも経済や社会を動かすサラリーマンが好き。定年までずっと兼業でやっていこうと思っています」。1991年生まれ、東京都港区在住。 (佐々木直樹)