「80点とれたらゲームを買ってあげる」は逆効果…小中学生4万人調査で判明した子どもを伸ばす声かけ

AI要約

脳トレで知られる川島隆太教授が、子どもの成績に与える「脅し」や「報酬」の影響について警告する。

家庭の環境が子どもの学力に与える影響や、目的意識を高める為の重要な習慣について解説する。

親子のコミュニケーションや一緒に過ごす時間が子どもの学力や言語能力に与える影響を明らかにする。

テスト前なのにちっとも勉強しようとしないわが子。思わず脅すような厳しい言葉をかけてしまった経験のある親は多いはず。「脳トレ」で知られる東北大学教授の川島隆太さんは「“脅し”や、ご褒美を与えるような“取引”の言葉は、かえって子どもの成績に悪影響を与える可能性が高い」という──。(第2回/全3回)

 ※本稿は、川島隆太『脳科学研究がつきとめた「頭のよい子」を育てるすごい習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「脅し」「報酬」は成績向上には効果なし

 明日はテストなのに、子どもがまったく勉強しようとしない──。そんなときには、いったいどんな声かけがベストなのでしょうか。

 「テストの点数が悪かったら、今月のおこづかいは“なし”だからね!」

「テストが80点以上だったら、欲しがっていたゲームを買ってあげるよ」

 意識せずにこんな「声かけ」をしている親御さんは少なくないでしょう。

 しかし、親御さんがよかれと思って発した言葉でも、それが不安をあおったり、ごほうびを約束したりするような声かけだと、子どもの成績には悪影響にしかならない可能性が高いといえます。

■小中学生4万人調査でわかった家庭の「超」重要習慣4つ

 なぜなら、私たちの研究グループが行った研究で、「目的意識を持って自主的に学習する子どもほど学力が高くなる」傾向があることが明らかになったからです。

 不安感やごほうびからは、目的意識は芽生えない、ということです。

 それでは、いったい何が子どもの目的意識を引き出すのでしょうか──。

 仙台市の小学5年生から中学3年生、約4万3000人を対象にした調査・分析から、次の要素が浮かび上がってきました。

■[習慣1]家族にしっかり話を聞いてもらえる環境がある

 「家の人に話をしっかり聞いてもらっている」という項目に対して、成績上位4分の1グループは約60%が「当てはまる」と回答しました。対して、成績下位4分の1グループは約50%と、約10%の差がありました。

 「なんだ、10%か」と、とっさに思ってしまうところですが、統計的には意味のある差といえます。家族とのコミュニケーションが密であるほど、学力が高まる傾向にあることは間違いありません。

 私たちは、同時に「何のために勉強をするのか?」を問う質問群の中で、「自分の将来のため(目的意識)」や「知りたいことがあるから(探求心)」について自分がどれだけ当てはまるかを自己評価してもらうアンケート調査も行いました。そして、これらの調査データを心理学、認知科学、脳科学の研究者に提出して解析を依頼。

 その結果、家族とのコミュニケーションが多い子ほど、目的意識や探求心が高まる傾向のあることがわかったのです。

■[習慣②]親子で一緒に過ごす時間を長くする

 コミュニケーションの時間の長さも、子どもの脳には非常に大きな影響を与えます。

 私たちは、5歳から18歳の230人の子どもの脳画像と、親と過ごす時間に関するアンケート調査、そして知能検査を解析した研究からその事実を明らかにしました。親子で一緒に過ごす時間が長い子どもほど、言語や言外のコミュニケーションに関わる領域の体積が大きく発達していたのです。

 こうした脳の変化が子どもたちにどのような影響をもたらすのか。その答えが知能検査にはっきりと表れました。

 2回行われた知能検査で、1回目は親と過ごす時間が長い子どもほど言語能力が高いことが示され、その数年後に行った2回目の検査では、言語能力の上昇がより大きいことがわかったのです。

 子どもたちの言語能力を飛躍的に向上させるブースターは「親子でたくさん会話すること」だったのです。