映画「愛に乱暴」主演・江口のりこさんインタビュー 徐々に乱れる平穏な生活、ラストは「それぞれの解釈で」

AI要約

 作家・吉田修一さんの「愛に乱暴」が実写化され、8月30日から公開。愛のいびつな衝動と暴走を描いたヒューマンサスペンス。主人公の桃子が日常の平穏を失っていく様子が描かれる。

 江口のりこさんが桃子役として出演。原作への愛着や脚本の面白さ、森ガキ監督との再共演の魅力に惹かれオファーを受けた。不安もあったが、映画化に挑戦する決意を固めた。

 桃子の感情の機微を探りながら、脚本からしかられた人物像を演じる過程で共演者やスタッフと協力し、キャラクターを表現。撮影中に新たなアプローチを模索する姿勢を持つ。

映画「愛に乱暴」主演・江口のりこさんインタビュー 徐々に乱れる平穏な生活、ラストは「それぞれの解釈で」

 作家・吉田修一さんの「愛に乱暴」(新潮文庫)が実写化され、8月30日から公開されます。愛のいびつな衝動と暴走を、緊迫感あふれるタッチで描いたヒューマンサスペンス。本作で、夫の浮気や愛猫の失踪などにより徐々に平穏を失っていく初瀬桃子を演じた江口のりこさんにお話を聞きました。

 夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子(江口のりこ)は、結婚して8年になる。義母(風吹ジュン)から受ける微量のストレスや夫・真守(小泉孝太郎)の無関心を振り払うように、「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始め、平穏だったはずの日常が少しずつ乱れていく。

――本作のどんなところに惹かれてオファーを受けたのですか?

 先に原作を読んでいたのですが、この面白い小説がどう映画の脚本になるのかということにまず興味がありました。森ガキ(侑大)監督からお話を頂いた時に「こういうのを撮ろうと思っています」と言って、原作と企画書、それに少しだけ書いてある台本を一緒にもらったんですけど、その時の脚本もすごく面白かったんですよ。面白いと思ったらやりたくなるし、森ガキ監督とまたお仕事ご一緒できるのは嬉しかったので、受ける理由はそれだけで十分でした。

――当初は、この作品を映画化することのハードルの高さにモヤモヤされていたそうですね。

 小説の中では、主人公の桃子が様々な女性と出会うのですが、映画の脚本ではそういうエピソードもそぎ落として、全体的にとてもシンプルな話になっていたので、これは難しいと思いました。

 ただ静かで大人しいだけの映画になってしまうんじゃないかという不安もありましたし、自分の中で原作が爆発的に面白かったという記憶があるから、どうしても比較してしまって「面白くできるだろうか」という心配はすごくありましたね。でも、やってみないとわからないですから、映画のためにそぎ落として書かれた脚本に忠実にやってみようと思いました。

――手に入れたはずの居場所を奪われ、もう一度取り戻そうと必死になる桃子の姿が描かれていましたが、感情の機微を含めて、どのように人物像をつかんでいったのですか。

 ある意味で「正解」のような小説を先に読んでいたので、ある程度「こういう人なんだな」とは思っていたんです。でも脚本ではそういう部分もそぎ落とされていたので、途中から映画は映画としての「愛に乱暴」を作らなきゃいけないと思いました。

 そんな風にどこかで吹っ切れてやることはできたのですが、撮影日数を重ねていくにつれて「この先はどうしたらいいのか」という思いが出てきたけれど、それは一人では解決できないことなので、共演者の方や監督、スタッフの方々と一緒に、日々撮影していく中で見つけていった感じです。