現代演劇に影響を受けた、独特の漫画表現…「双子の地面師」を描く異色作『オッドスピン』の不思議な魅力

AI要約

2017年に積水ハウスが「地面師」に50億円以上を騙し取られた事件をきっかけに、再び注目が集まっている詐欺師の存在について紹介されている。

地面師を目指す双子の姉妹を描いたクライム・サスペンス『オッドスピン』が連載中であり、作者の菅野カランさんのインタビューが紹介されている。

菅野さんは演劇が好きであると同時に、登場人物の表情以外の感情表現にも興味を持っており、人間の身体の表現に注力している。

現代演劇に影響を受けた、独特の漫画表現…「双子の地面師」を描く異色作『オッドスピン』の不思議な魅力

「地面師」というものをご存じでしょうか?

不動産の所有者に成りすまし、その不動産の売却を持ちかけて、現金を騙し取る詐欺師のことをいいます。2017年に積水ハウスがこの「地面師」に50億円以上を騙し取られてしまったことでも話題となりました。また、先月7月25日からは、動画配信サービス「Netflix」にて、事件をもとにしたドラマ『地面師たち』が配信を開始し、「地面師」という存在に再び注目が集まっています。

「モーニング・ツーWeb」では、この地面師を目指す双子の姉妹、英(えい)と蛍(けい)を描いたクライム・サスペンス『オッドスピン』が連載中。作者はランダム俳句をテーマにした読み切り漫画「かけ足が波に乗りたるかもしれぬ」が旧Twitter(現・X)でも話題になった菅野カランさん。8月22日には単行本第3巻が発売されます。発売にあわせ、今年2月の第1巻発売時に敢行したインタビューを再編集してお届けします。

「“社会的に悪いとされていること”はなぜやり遂げられるのか」ということに興味を持ったことが本作を描き始めるきっかけだったという菅野さん。その独特の創作法に迫ります。

インタビュー前編は【「地面師」を目指す双子の姉妹が「数億円もの大金」を騙し取るまで…「理解しがたい犯罪」はなぜ行われるのか】からお読みいただけます。

現代美術を学んでいた大学時代の頃から、演劇を見るのが好きだったという菅野さん。漫画を描き始めたのも、評論家の藤田直哉さんの『虚構内存在――筒井康隆と〈新しい≪生≫〉の次元』という本で書かれていた「実在の人物とフィクションのキャラクターの違い」が、「演劇における俳優の身体」について普段から考えていたことと繋がるように思ったからだと言います。

「漫画を描きながら、ずっと人間の顔や身体を描いているな、と気がついてビックリしたことがありました。私たちは普段、大量のモノに囲まれていて、そのなかで人間の身体が占める比率というのは本来わずかなはずなのに、漫画だと往々にして顔や身体にページの大部分を割くことになります。それだけ人間にとって、人間の身体というものは特別なのだな、と改めて感じています」

そのなかでも特に、顔の表情だけに頼らない感情表現に関心があるといいます。

「その人自身は感情を隠そうとしてポーカーフェイスを装っているんだけど、身体の端々に滲み出てしまうような、そんな感情を表現していけたらいいな、と思っています」

きりっとした登場人物たちの眼は印象的で、表情によっては描かれなかった余白のなかに生き生きとした感情が潜んでいることを感じさせます。