「舟越桂 森へ行く日」 人へのまなざしと出合う旅 彫刻の森美術館開館55周年で開催中

AI要約

神奈川県箱根町にある「彫刻の森美術館」で舟越桂の展覧会が開催されている。舟越の静謐な木彫半身像で知られ、作品の変遷やアトリエの再現が展示されている。

展示室1では代表作「妻の肖像」や「立てかけ風景画」などが展示され、舟越の人間観を窺い知ることができる。展示室2、3では人間の存在や様相について問い続けた作品が多く紹介されている。

展覧会では舟越の独特な表現やテーマに触れることができ、彫刻家の深い思索と制作のプロセスに触れることができる。作品を通じて舟越の哲学や表現力を感じることができる展示会となっている。

「舟越桂 森へ行く日」 人へのまなざしと出合う旅 彫刻の森美術館開館55周年で開催中

野外美術館として親しまれている神奈川県箱根町の「彫刻の森美術館」本館ギャラリーで、静謐なたたずまいの木彫半身像で知られる彫刻家、舟越桂(今年3月に72歳で死去)の展覧会「舟越桂 森へ行く日」が開かれている。同館の開館55周年を記念して企画され、当初は新作が作られる予定だったが、舟越の体調がすぐれず断念。最期まで本展の実現を望んでいた作家本人の遺志と遺族の意向を尊重して開催に至った。

■絶作の展示も

会場は4つの展示室で構成され、作品の変遷や創作の源となる舟越の視線に迫る。立体22点、平面35点などが展示。展示室1では舟越のアトリエの一部が再現され、生涯手放すことなく実際のアトリエに大切に保管されていた代表作「妻の肖像」(1979-80年)が置かれている。

絶作とされる「立てかけ風景画」も展示されている。闘病中、病室の窓から見える雲にインスピレーションを受け、ティッシュペーパーの箱に描いたドローイングの数々。それらをヨーグルトのカップで作った台に立てかけ眺めていたという。

舟越は生涯を通じて、人間とは何かを問い続けた彫刻家だった。展示室2では「人は山ほどに大きな存在なのだ」と感じた体験から生まれた彫刻「山と水の間に」(98年)など、人間に対する舟越の視線が感じられる作品に出合える。

展示室3は、舟越本人が「心象人物」と名付けた人間の存在をテーマにさまざまに変容を遂げる作品群が紹介されている。本展のポスターやチラシに使われた「樹の水の音」(2019年)は、女性性と生命の潮流を感覚的に具現化した作品という。

森の中に迷い込んだ不安と、木に囲まれ癒やされるような心地良さという別々の感覚が共存し、木に触れて耳をすませば木の中の水の流れが聞こえてくるような感じを表現したとされる。

■スフィンクスの表情

人間同士の醜い争いを黙って見つめる存在として両性具有の身体と長い耳を持った像「スフィンクス」を表現したシリーズも展示されている。これらの作品はイラク戦争(2003~11年)に触発されて制作されたという。

舟越といえば、大理石の目が遠くを見つめるまなざしに、あまり表情のない顔が特徴的だ。しかし「戦争をみるスフィンクスⅡ」(06年)は激しい表情をむき出しにしている。