ノンアルビールで踊るドイツのパーティー、Z世代に人気「二日酔いせず、翌日は仕事」

AI要約

ドイツで人気の「しらふのパーティー」は、ノンアルコールの状態で音楽に没入する新しいスタイルのイベントだ。

参加者はヘッドホンを使い、お酒やドラッグを必要とせずに音楽を楽しむことができる。

「しらふのパーティー」は、ベルリン発祥で、ドイツを中心に他国でも開催されている。

ノンアルビールで踊るドイツのパーティー、Z世代に人気「二日酔いせず、翌日は仕事」

お酒との結びつきが強いと思われている音楽パーティー。だが、今、そこにも「しらふ」のトレンドが押し寄せている。「テクノの聖地」とも呼ばれるドイツで若者の人気を集めている「しらふのパーティー」をのぞいてみた。彼らがお酒から離れる理由とは?

5月中旬、ドイツ北部の港町ハンブルクの日は長い。ガラス張りのイベントスペースは、午後6時でも昼間のような明るさだ。仕事を終えた人たちがやって来た。静かに音楽が流れる空間でハグをかわし、カウンターで飲み物を注文し、グラスや瓶を手におしゃべり。ただ、ここでの「仕事終わりの1杯」は全てノンアルコール。ソフトドリンク、ノンアルビール、ノンアルカクテルから選ぶ。

午後7時過ぎ、イベントが始まった。DJブースに3人が立ち、それぞれがテクノやポップス、ヒップホップを流す。参加者はヘッドホンを装着。聴きたいDJのチャンネルを選び、音に身をゆだね、体を揺らす。サビにあわせて歌ったり、飛んだり、一気に盛り上がる。トムさん(25)は「酒もドラッグもやめたから3年以上、クラブに行っていなかった。でも音楽とダンスは大好き。だから来た」。

酒やドラッグを媒介として「非日常の世界」へ入っていくのではなく、あくまで日常にとどまり、「音楽に酔いしれる」このイベントは、「ソバー・センセーション(ソバーはしらふの意味)」。首都ベルリンのテクノ文化が無形文化遺産リストに登録され、「テクノの聖地」とも呼ばれるドイツで人気を集めている。

主宰者のギデオン・ベリンさん(32)は「クラブには酒とドラッグがつきものと期待して行く人もいる。でも飲み過ぎ、薬のやり過ぎで、音楽どころじゃなくなってしまうこともある」。

フランクフルト近郊の出身で、10代からDJとして活動。初めて酒なしでDJをしたのは、友人のトルコ人の誕生パーティー。「イスラム教徒のラマダン(断食月)で、酒なしでやってみようと思いついた。するとみんな楽しそうだし、平和で雰囲気の良いパーティーになった。良いじゃないか、と」

ベリンさん自身は時々お酒を飲む。「お酒に反対しているんじゃない。でも、違う形でも音楽を楽しめることを証明したいんだ」

2016年からイベント化し、ベルリンで定期開催。コロナ後に注目が高まり、ドイツだけでなく、スウェーデンやポーランドなどでも開いた。この日は木曜日だ。平日夜に開催するのにも理由がある。「踊ってクタクタになってベッドに飛び込んで、起きても二日酔いはなく、仕事に行ける。参加しやすいでしょう」