エアコンも網戸もないイギリスの住宅で過ごす夏 日本が恋しくなった瞬間とは

AI要約

イギリスやフランスでの暑さについての体験談。イギリスの短い夏や暑い日に苦労する様子が描かれている。

イギリスの家の暑さ対策の不備や、短い夏や冬を見越して建築される特徴について述べられている。

突如訪れた異常な暑さで、部屋の熱気を逃がす方法を模索して苦労するエピソードが描かれている。

エアコンも網戸もないイギリスの住宅で過ごす夏 日本が恋しくなった瞬間とは

 気温35度以上の猛暑日が続くなど、今年も酷暑が続く日本の夏。湿度も高くうだるような日本特有の暑さには参りますが、国が違えば夏の暑さ対策にはまた別の問題があります。ひょんなことからイギリスに移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。38回目は、イギリスやフランスで実際に暮らして気づいた、暑さにまつわる話を紹介します。

 ◇ ◇ ◇

 日本の夏は気温も湿度も高く、厳しい暑さへの対処がとても大変ですよね。どんなに気をつけていても、熱中症にかかったり、気分が悪くなったりする場合があると思います。私が日本にいた頃よりもさらに暑くなっていると思いますが、それでも昔を振り返って、自分はいったいどうやって通学、通勤していたんだと思うこともあります。

 移住してから、日本特有の暑さに悩まされなくなってありがたいと思う反面、独特の雰囲気をちょっと懐かしいなと思い出すこともあります。いつも雨や、空が灰色に曇っているイギリスには、夏がなかなか来ません。あるいは、ようやく夏が来た! と思っても、たった数日で終わることも。

 6月頃、急激に暑くなったと思ったら、数日後にはジャケットを羽織らないといけないくらいの肌寒さになることがよくあります。そのまま7~8月はまったく夏の気配がなく、葉っぱだけが茶色くなり、いつの間にか秋へ突入している……ということもありました。その寒暖差に体がなかなか適応できず、体調を崩す人もよくいます。

 しかし、そんなイギリスでも、2023年には世界的な地球温暖化の影響で最高気温40度を越える日がありました。また数年前には、ものすごい暑さのヒートウェーブが数週間ごとにやってきたこともあります。とくにすさまじい暑さの記憶が残っているのは、2020年のコロナ禍で迎えた夏です。

 BBCニュースから拝借すると、2020年はイギリスの観測史上3番目に暑い年で、雨量は史上5番目に、日射量は史上8番目に多かったとのこと。この異常な暑さは身をもって覚えています。イギリスの家は暑さ対策が考えられていない家も多く、コロナ禍だったので、空調が効いた友人宅や公共施設などへ気軽に避難することもできません。エアコンのない自宅で過ごすことがもう大事件でした。

 前述したように、イギリスの夏はさっと過ぎていきます。そのため、クーラーも扇風機も網戸も備えられていないことが一般的です。さらに困るのは、その短い夏や冬を見越して、そもそも家自体が太陽光を内部に封じ込め、熱損失を最小限に抑えられるよう設計されていること。

 しかも、当時私が住んでいたのは典型的なジョージアンスタイルのテラスハウス(日本の集合長屋住宅にあたります)。4階建ての家の最上階で、最も日当たりがいい部屋。天気がいい日は太陽光がきれいに入って、温かくてラッキーだなと喜んでいましたが、この夏ばかりは、なぜ私はこの部屋を選んだのだと自分を恨みました。

 日中はカーテンを引いたり、部屋の扉を開けっぱなしにしたり、シャワーをこまめに浴びたり、下の階のキッチンなどで仕事をしたりして、なんとかやり過ごすことができました。しかし、最大の難関は夜。夜は幾分気温が下がるとはいえ、風もなく、住宅の作りから部屋に熱がこもりやすいため、ベッドに入ったはいいものの汗が止まりません。

 窓を開けっぱなしにして、冷凍庫で冷やしたタオルを首に、そしてたまたま日本の友人からもらった冷蔵の冷却シートをおでこにはり、自分の体や部屋の温度を下げようと考えられるだけのことをしました。しかし、その甲斐なく、汗を大量にかくばかりでずっと覚醒。その結果、まったく疲れも睡眠も取れず散々でした。その殺人的な暑さの日々は、今でも忘れられません。