「普通じゃないほうが、マシ」 奇抜ヘアーの教授が語る「生きる哲学」

AI要約

プラトンは、ソクラテスの弁明を通して哲学を広く取り上げ、民主制の危険性を警告している。彼の著作は、人々が善美なことを知らない無知に対する批判や、魂の大切さを説く内容が特徴的である。

小島教授は、哲学に興味を持った背景として一人暮らしと生計を立てる経験を挙げており、高校生の頃から自己や死について考える機会を持っていた。

学習院大学哲学科に進学し、ギリシャ語とプラトンの研究に魅了され、現在まで研究を続けている。

「普通じゃないほうが、マシ」 奇抜ヘアーの教授が語る「生きる哲学」

ギリシャ哲学というと、ソクラテス、プラトン、アリストテレスの名が浮かびます。小島和男教授はプラトンを中心に研究しています。

プラトンは紀元前427年、都市国家アテナイに生まれました。哲学者ソクラテスの弟子でしたが、プラトンが28歳のとき、ソクラテスは民主的な裁判によって死刑にされてしまいます。「国家の認める神々を認めず、青年を堕落させた」という罪でした。判決に疑問を感じたプラトンは、生前のソクラテスの姿を人々に伝えようと、彼を題材にした物語を書き始めます。

「ソクラテスと人々が対話している形式、あるいはソクラテスの独白という形式なので、プラトン自身はほとんど出てきません。宮本武蔵や坂本龍馬をモデルにした歴史小説と同じで、本当のソクラテスの姿が書かれているかどうかはわかりませんが、プラトンが生き生きと描くソクラテスが非常に魅力的で面白い人物なんです」(小島教授)

たとえば、ソクラテスは「人は悪いことだと知っていて悪いことをすることは決してない」「ただ生きるのではなく、よりよく生きることが大切だ」と説きました。そして、人々は「善美なこと」を知らないのに知っているつもりでいるという、恥ずべき無知に陥っていると指摘し、「金銭や名誉ではなく、魂に配慮せよ」とアテナイ人を叱咤しています。

プラトンは恋愛から国家まで幅広いテーマを取り上げました。

「プラトンは、大衆に主権がある民主制は独裁制に移行する一歩手前だと言っています。第2次世界大戦前のドイツもそうでした。民主制がダメになるとすぐに怖いことになるよ、と予言しています。考えさせられるものがありますね」

ゼミではプラトンの『ソクラテスの弁明』をギリシャ語で読んだり、知を求める営みの蓄積を哲学史として検討したり、その蓄積を前提に「人は何をしてはいけないか」を考えたりしています。

小島教授はなぜ哲学に興味を持ったのでしょうか。その背景には、高校の途中から一人暮らしをして、新聞配達で生計を立てていた経験がありました。

「複雑な家庭の事情があり、子どもの頃から自分は人とは違うな、俺の人生はハードモードだなって思っていました。自分のことを外から見ている『メタ自分』がいて、なんで自分は生きているのかとか、死とは何かとか、考えざるを得なかったのです」

「翻訳とはいえ、有名な哲学者が書いたものは難しくてわからないところも多かったけど、(中央公論社の)『世界の名著』シリーズの解説や伝記は楽しく読めました。デカルトの『我思う、故に我あり』とか、ヘーゲルの『世界霊魂』とか、高校生の自分には字面もカッコよく感じたし、こういうふうにものを考えるのかと、新鮮で面白かったですね」

大学は指定校推薦枠のあった学習院大学文学部哲学科に進みました。ギリシャ語がパズルのように面白く、ギリシャ語の原典のなかでも読みやすかったプラトンにひかれ、プラトンとソクラテスの研究を現在まで続けています。