「タトゥーはアート」それMRIができなくなっても言えますか?形成外科医が安易なオシャレタトゥーに思うこと#1

AI要約

タトゥーが社会において受け入れられつつある現代について取り上げられた記事。

タトゥーの普及が進む中で、MRI検査における問題点も指摘されている。

特にタトゥーが体に沈着した場合、MRI検査の際に問題が生じる可能性がある。

「タトゥーはアート」それMRIができなくなっても言えますか?形成外科医が安易なオシャレタトゥーに思うこと#1

 世界を席巻するアジアのスターグループ・BTSのメンバーや、旧ジャニーズの人気アイドルグループで活躍していた元メンバーも、自身の体に入ったタトゥーを堂々と披露する時代になった。もはや海外では普通のことで、日本でも気軽に“新作”を入れ、会うたびにタトゥーが増えている若者もいる。かつてと比べるとタトゥーへの印象は激変したと言えるだろうが、そこには大きな問題も……。

 形成外科・美容医療の専門医として10年以上、臨床と研究に従事、2019年に開業し、現在は東京・恵比寿こもれびクリニックの院長として勤務する西嶌暁生(にしじまあきお)氏。「人はそれぞれに合った健康や美しさがある」をモットーとし、日々“飾らない美”ナチュラルビューティーをサポートしているという西嶌医師が、タトゥーを入れるハードルが下がる今だからこそ知ってほしいと語る――。(#1、2のうち1)

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 昨今、若者の間でアートやオシャレ感覚で刺青(タトゥー)を入れる人が増えている。訪日外国人の急増やSNSの影響のためか、これまでの日本でヤクザの象徴であった刺青(タトゥー)が、文化やオシャレとして認識されるようになってきた。

 おしゃれは自由である。国によっては、価値観や象徴(シンボル)は違うので、タトゥーそのものを否定するつもりは全くない。自分の心と体は、唯一自分がコントロールできるものなので、自分の思うようにやったらよいと思う。

 ただし、そもそもタトゥーが非日常な日本において、安易にタトゥーを入れることはいかがなものだろうか。一昔前は、ピアスの穴をあける時に「親からもらった体に傷をつけるなんて」と言われた時代であるが、今やそんなことをいう大人は少ないだろう。そう考えると、タトゥーもいずれ、日常化するのかもしれない。

 ただし、ピアスとタトゥーで決定的に違う点がある。それは、「タトゥーの場合、磁場に反応する『人工物』を体に沈着させるため、必要な時にMRI検査が撮影できなくなる」という点だ。

 MRIとは、Magnetic Resonance Imagingの略語であり、非常に強い磁石と電磁波を利用し、人体を任意の断面(縦・横・斜め)で画像表示することができる精密検査である。X線ではなく、磁石を用いて検査を行なうので、放射線被ばくの心配がないのも特徴の一つだ。

 MRI検査は様々な病巣を発見することができるが、特に脳、脊椎、四肢・軟部組織などのほか、子宮、卵巣、前立腺等の骨盤腔に生じた病変に対しても優れた描出能を持っている。そして、様々な病気の早期発見、がんの有無や広がり、他の臓器への転移の確認、治療の効果を判定、再発チェックなど、さまざまな目的で行なわれている。

 さらに、最近では、乳がん検査において、MRIでしか描出できない多発乳がんが存在することが数多く報告されている。全体の34%の症例にマンモグラフィ(※乳房専用のX線撮影)にて検出できない多発乳がんを認めたとの報告もある。