「猫への輸血」には犬とは違うハードルの高さが…実は採血も難しい【ワンニャンのSOS】

AI要約

ネコちゃんの輸血については、血液型の判定や輸血供給が複雑であることが説明されています。

ワンちゃんのように輸血供給のための犬が動物病院にいるわけではなく、血液型判定や採血も困難な場合が多いことが指摘されています。

新たな方法であるクロスマッチテストの重要性や猫の病気リスクについても言及され、ネコちゃんの輸血は難しいという現状が述べられています。

「猫への輸血」には犬とは違うハードルの高さが…実は採血も難しい【ワンニャンのSOS】

【ワンニャンのSOS】#73

 前回はワンちゃんの輸血事情についてお話ししました。今回は、ネコちゃんの輸血について紹介しましょう。結論からいうと、ネコちゃんはワンちゃんのように簡単ではありません。

 たとえば、がんの治療などで輸血が必要になると、まず輸血を必要とする側の血液型を調べます。ネコちゃんにもその判定キットがあり、それで分かるのはA型、B型、AB型のいずれか。かつて日本のネコちゃんはA型が7割といわれましたが、いまは洋ネコが増えたため、そんなことはいわれません。血液型が判明したら、同居ネコや友人のネコなどに同型の血液がいないか探すことになります。

 ワンちゃんでは、輸血供給のための犬が動物病院に居候していることがあります。当院のビー太郎がそうです。しかし、ネコちゃんでは、まずいません。輸血用に採血を続けることで、腎臓の負担になり、寿命を縮める恐れがあるのです。実は当院にも、かつて輸血用ネコがいましたが、10歳でかなり早く亡くなったのを機に、動物愛護の観点からそのようなネコちゃんはいません。

 実はネコちゃんの場合、採血も難しい。細い針や腕からの採血では、赤血球が壊れる溶血のリスクがあるのです。もし同型が判明したら、麻酔下での頚動脈採血になります。それでも1回の採血量は50㏄で、治療に十分な量ではなく、採血量の確保も難しいのが現実です。この方法で血液型の適合が判明すると、輸血する側は、2回の採血負担を余儀なくされ、それもよくありません。

■注目の「クロスマッチテスト」とは?

 そこで、注目されているのが、クロスマッチテストです。それぞれの血液を採取して、お互いを交差させることで溶血するかどうかを調べます。溶血しなければ適合で、確率は3分の1。

 輸血する上で重要なのは、採血される側の病気の確認です。猫白血病ウイルスや猫エイズウイルス、猫コロナウイルスなどに感染していた猫から採血して、輸血したら、病気を感染させるリスクがあります。

 一方、採血される側はそのストレスによって、抑えられていたウイルスが顕在化して、潜在的な病気を発症させる恐れもあります。どちらにも注意が必要です。

 こうしてみると、ネコちゃんの血液型判定や輸血については、かなり大変であることが分かると思います。これだけ獣医学や科学が進歩しても、ワンちゃんのようにはいかないのが現状です。

(カーター動物病院・片岡重明院長)