俳優・大野拓朗の挑戦。ロンドンの舞台に立つ、サムライの肖像。

AI要約

ロンドンで活躍するサムライ俳優、大野拓朗の苦労と成功が描かれた物語。

大手事務所を退所し、海外での挑戦を果たし、注目を浴びる新たな舞台に立った男の姿。

日本と海外をつなぐ才能を持つ大野拓朗のこれからの活躍に期待が高まる。

俳優・大野拓朗の挑戦。ロンドンの舞台に立つ、サムライの肖像。

2024年1月のある日、ロンドン市内で端正なスーツ姿の俳優と再会した。同地で公演中のミュージカル作品のメインキャストとして活躍する彼は、日本で最後に会ったときよりも自信に満ちた面持ちが印象的だった。その男はサムライ、名は大野拓朗。ロンドンを闊歩する姿は、実に凛々(りり)しい。

その男はサムライ。俳優として、大手事務所から華々しくデビュー。NHKの朝ドラや大河ドラマをはじめ、数多くの話題作に出演し、人気は鰻登(うなぎのぼ)り。実力も各方面から評価され、傍から見れば順風満帆の俳優人生と思えた。だがしかし、男は疑問を感じていた。果たして、このままでいいのか──?と。

大手事務所を退所し、より「大きな俳優」となることを目指し渡米したのは2019年のこと。ただ、間が悪かった。コロナ禍の影響で数カ月で帰国を余儀なくされ、悔しい日々を送る。だが、辛酸は男を強くした。

帰国後、舞台が男を求めた。ブロードウェイミュージカル『プロデューサーズ』を皮切りに、『クラウディア』『進撃の巨人 ─the Musical─』『ファントム』など、メインキャストとして話題作への出演が立て続く。その雄姿は、日本のシーンをけん引する新しい「ミュージカルスター」の誕生に思えた。だがしかし、男のまなざしはその先を見据える。

人知れぬ努力が実り、オーディションで夢をつかんだ。英国でのミュージカル『太平洋序曲』のメインキャストの座を見事射止めたのだ。23年11月から24年2月まで続く公演が後半にさしかかるころ、われわれは劇場を訪ねた。そこには、日本で最後に会ったときよりも精悍な面持ちで、堂々と舞台に立つ男がいた。もちろん、セリフはすべて英語だ。

その男はサムライ、名は大野拓朗。海の向こうでの「戦(いくさ)」はまだまだ続く──。

大野拓朗(おおの・たくろう)

1988年、東京都出身。2010年に映画『インシテミル~7日間のデス・ゲーム~』で俳優デビュー。NHK連続テレビ小説や大河ドラマをはじめ、数多くのドラマ、映画、ミュージカル、舞台作品に出演。2023年11月から2024年2月にかけて日英共同制作ミュージカル『Pacific Overtures(邦題:太平洋序曲)』のロンドンキャスト版に、主演のひとりとして出演。本格的な海外進出を果たす。

Photograph: Mitsuya T-Max Sada

Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)

Coordination: Misa Chonan