目を洗う市販の洗浄薬を絶対に勧められないワケ…専門家が指摘【一生見える目をつくる】

AI要約

洗浄液で目を洗うことは涙の保護成分を流してしまうため、眼科医は勧めない。

洗浄液を使用すると点眼薬の薬効成分も洗い流され、治療効果が得られなくなる可能性がある。

目は水道水や洗浄液で洗うべきではなく、必要な場合は洗眼用の目薬を使用するべき。

目を洗う市販の洗浄薬を絶対に勧められないワケ…専門家が指摘【一生見える目をつくる】

【一生見える目をつくる】#21

「目を洗う市販の洗浄液は使ってもいいですか」

 診察中に患者さんからたびたび受ける質問です。

 プラスチックのカップの中に専用液を入れて、その中でパチパチとまばたきを数回繰り返す。私の知り合いもかつては愛用していて、「ほこりみたいなものがカップの中に浮かぶから、目の中の汚れが取れているのが確認できて、やらずにはいられなくなる」と話してくれたことがあります。爽快感があるのでしょうが、眼科医としては「やめて欲しい」と思うばかりです。

 なぜ勧められないのか。それは、洗浄液で目を毎日洗うことで、涙に含まれている保護成分がすべて流されてしまうからなんです。

 目というのは眠っているときを除いては常に外気に接していて、さまざまな雑菌の攻撃にさらされています。けれども、そう簡単に結膜炎などにならないのは、たとえ目の中に多少の雑菌が入ったとしても、涙液の中にたくさん含まれている酵素などの抗菌成分が働いてくれているから。免疫のバランスが壊れないように保つ役割をしているのが、涙なんです。

 洗浄液で目を洗浄することで流されてしまうのは、涙液の抗菌成分だけではありません。たとえば、あなたがなんらかの目の病気で通院していて、処方された専用の点眼薬を使用中だとします。にもかかわらず洗浄液を使用した場合、点眼薬の薬効成分も一緒に洗い流してしまうことになるんですね。これでは一向に治療の効果も得られません。

 また、私としては洗浄液の衛生的な問題も懸念するところです。薬剤が入ったボトルを開封すると、約1カ月はそのボトルの洗浄液が使われるようです。が、たとえ防腐剤が入っていたとしても、1カ月の間「ため水」で目を洗うことになり、あまり衛生的とは言えません。

「洗浄液を使うと目の中の汚れが取れる」というのはあくまでもイメージです。目の中の汚れはある程度は取れますが、まぶたの裏側の汚れなどはまったく取れません。

 洗浄カップに浮いている汚れは、目の周りの皮膚の脂や、女性ならアイメークやファンデーションの残りなどがほとんどなんです。カップに浮かぶすべてのものが、目の中の汚れではないということです。「これをやらないと目の中の汚れが取れない」というのは、思い込みなんですよ。

 目は、水道水で洗うのはもちろん、洗浄液で洗うのも避ける。しっかり念頭においてください。どうしても目を洗いたい時は、洗眼用の目薬がありますから、それを使いましょう。

(荒井宏幸/クイーンズ・アイ・クリニック院長)