社内環境の改善ツールと注目の「サンクスカード」って何? 導入2社に活性化事例を聞いた

AI要約

多様な働き方が認められることで社員同士のコミュニケーションが難しくなりつつある中、サンクスカードが注目されている。

サンクスカードを利用することで従業員のモチベーションや帰属意識が向上し、生産性や社内コミュニケーションの活性化につながる。

様々な業界で導入されており、従業員の定着や社内交流の充実に貢献している。

社内環境の改善ツールと注目の「サンクスカード」って何? 導入2社に活性化事例を聞いた

 多様な働き方が認められることは、社員にとって自由度が上がるメリットがある一方、社員同士の顔が見えにくくなって、ともするとコミュニケーションが悪くなる。そんな中、職場環境をよりよくするツールとして注目されているのが、サンクスカードだ。

  ◇  ◇  ◇

 サンクスカードは、文字通り「ありがとう」の気持ちを送り合うコミュニケーションツール。紙のカードではなく、パソコンやスマホにアプリをダウンロードして利用する。

 いつの時代も仕事で褒められると、うれしい。サービスの仕組みは至って単純だが、サンクスカードを利用することで従業員のモチベーションや帰属意識が上昇。生産性が向上したり、離職率が低下したりする効果が期待できるため、アプリを導入する企業が相次いでいる。

 たとえば、SBI証券(カスタマーサービス部門)やライフネット生命では、そのサービスのひとつ「RECOG」を採用。離職率の減少や社内コミュニケーションの活性化に役立っている。

 一方、2021年に品質不適切行為が発覚した三菱電機では、社内改革の一環で姫路地区の先進応用開発センターで「Unipos」を導入。不適切行為を生んだ大きな原因のひとつとして指摘された組織風土劣化を改善することに、このサービスが貢献。「ありがとう」を言えなかった社内のムードが一変し、言えるようになり、称賛文化が定着したという。

 外食産業では、社員やアルバイトを含めて不規則なシフト勤務が広がっている。そうすると、店舗内はもちろん、店舗を超えてメンバーが一堂に会することは難しい。そんな業界的な課題を「TUNAG」で克服したのは、しゃぶしゃぶの木曽路や美登利寿司だ。このサービスによって、バラバラだった従業員がまとまり、ひいては業績が改善したそうだ。

 焼き肉など飲食店を展開するフレスカ(本社・岡山県)やアート引越センター(以下=アート、本社・大阪府)、新日本科学(本社・鹿児島県)は、同様のサービスのひとつ「サンクスギフト」を導入した。従業員はそれぞれのスマホにこのアプリをダウンロードし、気軽に写真やメッセージを投稿することで、社内の交流を図っている。

 特徴は「ありがとうコイン」「努力コイン」など感謝の気持ちを示して称賛コインをプレゼントする機能が複数ある点。コインは就業の前と後などに送り、その獲得数はランキングで表示可能。フレスカではコイン獲得数上位者を表彰したり、社員評価の指標に店舗でのコインの活用を置くなどしている。コインを送る量は、コミュニケーションの量を表す指標でもある。

 サンクスギフトを運営する「TakeAction」の成田靖也社長は学生時代に焼き肉チェーンの牛角でアルバイト。そこではサンクスカードが交換され、とても働きやすい職場環境だった。社内ムードがよかったことも要因なのだろう。牛角はフランチャイズとしては世界最速で1000店舗を達成した。そんな好ムードのアルバイト先から成田氏が就職したのは、ブラック企業だったという。

「企業の外付け人事部として採用コンサルタントをしていました。人材紹介会社としては、従業員が離職してくれた方が、採用機会が増加し、ビジネスになります。しかし、そこに後ろめたさを感じていました」(成田氏)

 社員の離職は企業にとって損失だ。成田氏が続ける。

「一概には言えませんが、新卒の場合、一般に3年以内に退社すると、企業は採用費と教育費を合わせて1000万円がムダになるといわれています」

 成田氏はブラック企業を退職。牛角時代のサンクスカードを思い出し、ビジネスにしようと起業した。今では医療や飲食など主にサービス業を中心に累計で約850社に導入され、それぞれの従業員を定着させるサービスを提供している。