「子どもがうるさくして、すみません」より効果的…躾への"お叱り"を穏便にすませる「魔法のひとこと」

AI要約

脳科学者の黒川伊保子さんが、子どもの躾について考察。昭和の考え方と現代の子育てについて述べる。

躾にはマイナス面もあり、親が過剰な世間体を気にしすぎると子どもが自己肯定感を失う可能性がある。

躾けること自体は悪いことではないが、脳の主人公は自分であり、無邪気な時間を持つことが重要と述べている。

子どもには厳しく躾をしたほうがいいのか。脳科学者の黒川伊保子さんは「世間様に迷惑をかけないよう、お行儀が良い子に育てるというのは昭和の考え方。祖父母世代が、自分の子育ての方針を押し付けてはいけない」という――。(第1回/全3回)

 ※本稿は、黒川伊保子『孫のトリセツ』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

■子どもの躾にはマイナス面もある

 躾は、世間と子どもを対峙させ、子どもの脳を緊張させる行為だ。世間は厳しい、ちゃんとしないと大変なことになる、と。

 よく躾けられた子はお行儀が良く成績もいい。大人になればエレガントで、周囲に信頼もされるし出世もする。たしかに、躾けられることには大事な一面もある。

 それに、兄弟姉妹が多かったり、両親共に仕事があって核家族だったりしたら、子どもたちをある程度躾けておかないと、日々の暮らしを回してはいけない。聞き分けのいい長子がいて、やっと回っているおうちだってあるはず。

 公共の場では、身を守るために守らなきゃいけないルールもある。道路に飛び出していいわけじゃなし、砂場で、他人のおもちゃをいきなりつかんだり、ほかの子に砂をかけたりするのは、もちろん止めなきゃならない。

 だから、躾が全面的に悪いことだなんて、私は思わない。ただ、躾のマイナス面も知っておいたほうがいい。

 世間体を気にしすぎる親に育てられると、子どもの脳は「この世の主体は世間であって、自分はその一部分にしかすぎない」と感じる。このため「いい子でないと存在価値がない」と思い込む。

■「世間様に迷惑をかけない」は時代遅れ

 でもね、本当は、脳の主人公は自分。この星は、誰にとっても、「自分のためにある」ものなのである。本来、そう感じるように、脳は作られている。

 子どもたちだけじゃない。すべての人に、無邪気な時間を過ごしてほしいと私は思う(生活時間のすべてでなくていいから)。心に浮かんだことをそのまま肯定できる、そんな時間を。心に浮かんだことをそのまま言動に移しても、きっと周囲が受け止めてくれると信じられる、そんな時間を。そういう時間を確保されている人にとっては、人生は自分のものになる。

 この星も、自分のものになる。

 私たちの世代は、躾けることで子どもを育てた。それが20世紀に必要とされた子育てだったからだ。その過去を悔いる必要はないけど、自分の子育ての方針を、孫にそのまま使うつもりでいると、孫にとっても、その親たちにとっても酷(こく)なのである。

 昭和生まれと、昭和生まれに育てられた人たちの心の中にある、「世間様に迷惑をかけないように、自分と子どもを律するのは美しいこと。せめてそういう姿勢を見せないと恥ずかしい」という気持ちを、この際、捨ててください。