782馬力、最高速度はなんと335キロ! 新型ベントレー・コンチネンタルGTスピードに藤原よしおが試乗 V8エンジンはハイブリッドで生き残った! 

AI要約

新型ベントレーのパワートレインはV8エンジンとモーターの組み合わせで、先代を上回る782psの出力を誇る。

車両は50:50の前後重量配分を実現し、リニアでスムーズなパワー・デリバリーと安定したハンドリングを持つ。

エクステリアのデザインやエアロダイナミクスの向上、デジタル・デバイスの充実など、全方位的な進化が図られた。

782馬力、最高速度はなんと335キロ! 新型ベントレー・コンチネンタルGTスピードに藤原よしおが試乗 V8エンジンはハイブリッドで生き残った! 

一度はW12もV8も生産を終了するというアナウンスがあったのでV6などへのダウンサイジングを敢行すると思われていたベントレーの新しいパワートレイン。しかし新型コンチネンタルGTとともに現れたのは、なんとV8とモーターという組み合わせだった。モータージャーナリストの藤原よしおが現地、国際試乗会からリポートする。

◆4リッターV8ツイン・ターボとe-モーター

今年いっぱいでコンチネンタルGT系とフライングスパーのV8エンジンの生産が終了するというリリースが記憶にあったので、PHEVとなった4代目のコンチネンタルGTがV6ではなく、4リッターV8ツイン・ターボとe-モーターの組み合わせだと知った時は、ちょっと驚いた。

聞けば製造を終了するのは内燃機単体としてのV8で、今後コンチネンタルGTにV8+e-モーター以外を載せる予定はないという。またこれまではスタンダード・モデルの後でハイパフォーマンス版のスピードが追加されるのが慣例だったが、新型はいきなりGTスピードを名乗る。

というのもV8エンジンはターボの大型化やマッピングの変更で最高出力600ps、最大トルク1000Nmを発生。8段DCTとの間に配置された190ps&450Nmのe-モーターと合わせ、システム最大で6リッターW12を大きく凌駕する782psの出力と1000Nmのトルクを誇るからだ。ちなみに最高速度335km/h、0-100km/h加速3.2秒というパフォーマンスは、750psの限定車バトゥールと肩を並べるもので、W12搭載の先代GTスピードを大きく上回る。

新型の走行モードはEVで立ち上がり、必要に応じてエンジンを始動しハイブリッドに移行するデフォルトのベントレー・モードをはじめとする4種類。今回は最終プロトタイプということで試乗はサーキットのみに限られたが、シャシー・ダイナミクスのチーフとしてクルマを煮詰めてきたリチャード・ヘイコックスは「重量増を感じさせないクルマ作りに注力した。ぜひスポーツ・モードを試して欲しい」と出来栄えに自信を見せる。

そこで常にエンジンが作動するスポーツ・モードに切り替えてみると、それまで無音だった空間に想像を超える大きく迫力のあるエグゾースト・ノートが響きわたった。

◆振る舞いにふさわしい心臓

まずアクセレレーターを踏み込んで感じたのは、パワー・デリバリーが実にリニアかつスムーズなことだ。獰猛で迫力に満ちたW12が懐かしくも思えるが、ラグジュアリー・ハイパフォーマンスGTの振る舞いとしては、この方がふさわしい。それでいてハンドリングはシャープかつ軽快。ウエット路面でもクルマの姿勢は終始安定している。

気になる車両重量は正式な数値は明らかにされていないが、R&D部門ダイレクターで車体開発責任者のマーカス・ティールによると、先代より重くなっているものの、気筒休止システムを廃止したV8、小型化された燃料タンク、リア床下に搭載した25.9kWhのバッテリーなど各部の軽量、最適化の効果で50:50の前後重量配分を達成しているという。

プラットフォームやサスペンションは先代を踏襲しているものの、圧縮と伸縮を独立制御することで、自由度を高めた初採用のZF製のダブルバルブ・ダンパーをはじめ、アップデートされたe-デフ、後輪操舵、アクティブ・トルク・ベクタリング、ベントレー・ダイナミックライドといったデバイスが効いているのは間違いない。特にフルブレーキング時の姿勢変化の少なさや、どんなに攻め立ててもツゴツした感触が皆無で、常にしなやかな乗り味を維持するのは、まさにダブルバルブ・ダンパーの効果といえる。

もちろんEVモードでの走行は静かで快適なうえ、モーターのみで80kmの航続もしくは160km/hでの走行も可能となっている。

もう1つ注目である眉のようなキャラクター・ラインが入ったヘッド・ランプや、大きく立体的になったテール・ライトが印象的なエクステリアは、昨年ボルボから復帰し、デザイン部門の責任者に就任したロビン・ペイジによるものだ。

一見大きく変わらないように見えるかもしれないが、格納式スポイラーに代わるダック・テール状になった新デザインのリア・フードや、フロント、サイドのスポイラーなどにより、先代と同等のダウンフォースを得ているほか、冷却効率も向上するなどエアロダイナミクスがより洗練されたのも大きな特徴である。

そのほかインテリアでの各種デジタル・デバイスも充実するなど、新型は電動化時代のGTスピードにふさわしい、全方位的な進化を遂げていた。

文=藤原よしお 写真=ベントレー

(ENGIN2024年8月号)