日本は甘いのか?八坂神社の外国人ガイドによるトラブルが示唆する、日本の通訳ガイドの問題点

AI要約

海外観光客向けの旅行会社代表である杉江真理子氏が、八坂神社でのトラブルを通じて、無資格のガイドによる問題点について解説。

事件の背景や無資格ガイドの特徴、日本のガイド資格制度について詳細に触れる。

さらに、全国通訳案内士とバスガイド、添乗員の違いについて説明し、各役割の違いを明確にする。

 (合同会社かぐやライゼビューロー代表社員:杉江 真理子)

 主に海外からの観光客を対象とする旅行会社の代表を務め、インバウンドのニュースサイトにも携わっている杉江真理子氏。今回の八坂神社でのトラブルから見える、意外と知られていない通訳ガイドの実情と問題点について解説する。

■ 問題を起こしたガイドは無資格の可能性が高い

 京都の八坂神社といえば、地元で「祇園さん」と呼ばれ親しまれているだけでなく、国内外から多くの参拝客が訪れる有名神社だ。そこである事件が起こった。ガイド引率の外国人グループが国宝でもある神社本殿の「鈴の緒」を柵に叩きつけて遊んでいたという。それを地元の日本人女性が見かねて注意したところ、日本在住の外国人の男性ガイドに罵倒されたというのだ。

 2024年5月23日夜にX(旧Twitter)に投稿された、その動画が波紋を呼んだ。そこには注意した日本人女性を罵倒するガイドと、翻訳アプリを利用しながら反論する女性の声が生々しく残っていた。あいにく、外国人グループが「鈴の緒」を柵に叩きつけている現場の動画がなく、神社側も公式にはこの様子を把握していないとしている。

 Xで該当の動画が拡散され、そのガイドの会社名もすぐにわかった。会社といっても法人登記されていないようなので屋号だろうか。ホームページは消されていたが、ツアー募集をするポータブルサイトには履歴が残っていて、いくつかのウォーキングツアーの募集が載っていた。残念ながら、評判は芳しくないようで否定的なコメントもみかけた。

 その男性ガイドの名前もわかったので、私は全国通訳案内士のリストをあたってみたのだが、それらしき名前は見当たらない。京都市には認定通訳ガイドの制度もある。こちらにもガイド登録はないようだ。彼は、まず無資格のガイドとみて間違いないだろう。

■ 全国通訳案内士とバスガイド、添乗員の違い

 日本で外国人観光客につきそい案内するガイドは、全国通訳案内士という国家資格保持者だ。その他、地域限定の通訳案内士(ガイド)という制度もある。

 京都市の認定通訳ガイドになるには研修を受ける前に審査があるなど、なかなか厳しい。私がお世話になっている京都市認定通訳ガイドは、京都の生き字引のような人である。

 外国人観光客がたくさん来日する時期は、桜と紅葉のシーズンだ。この時期は、優秀なガイドは引っ張りだこになる。

 ところでガイドというと「バスガイド」を思い浮かべる方も多いだろう。バスガイドはバスツアー客の世話をやいてくれたり、観光案内もしてくれるが、「車掌」が正式名称だ。観光バスの入り口付近に運転手名と車掌名が掲示されているが、車掌名のところにはバスガイドの名前がある。

 また、団体ツアーに参加するとよく添乗員が同行する。添乗員の正式名称は、「旅程管理主任者」。文字通り旅程を管理するのが仕事だ。わかりやすくいうと、旅行会社の移動社員といった存在である。ツアーを予定通り安全に進めるのが主な仕事ではあるが、観光案内や通訳をすることも。ただし、国によって観光案内は資格をもったガイドの仕事であるので、その場合は現地の法律に従う。私自身も総合旅程管理主任者の資格を持ち、添乗員として働いた経験がある。