人と接するときは「ツンデレ」で…好印象を与え作業意欲を高める【科学が証明!ストレス解消法】

AI要約

ツンデレの態度が作業意欲に与える影響についての研究と、アロンソンとリンダーの実験結果について述べられている。

心理学のマインドコントロールの手法について解説されており、参加者を支配するための方法が紹介されている。

弱っているときには誘導されやすいため、ツンデレなどの心理操作が悪用される可能性があることが警鐘されている。

人と接するときは「ツンデレ」で…好印象を与え作業意欲を高める【科学が証明!ストレス解消法】

【科学が証明!ストレス解消法】#171

 普段は冷たく無愛想な態度(ツン)を取っているものの、特定の人や状況下では甘えた優しい態度(デレ)を見せることを「ツンデレ」と言います。

 奈良先端科学技術大学院大学の研究チームが、ツンデレ的な態度が作業意欲にどのような影響を与えるか、実際に実験(2021年)を行っています。

 実験は、パソコンに表示されるメイドをモチーフにしたキャラクターが作業の合間に励ましの言葉を発するというものだったのですが、一方のグループには「常に優しい言葉」をかけ、もう一方のグループには「ツンデレ的な言葉(最初は厳しく、後に優しい)」をかけました。その結果、ツンデレ的な言葉を受けたグループの方が作業意欲が高まることが分かったといいます。

 また、アロンソンとリンダーが行った次の調査(1965年)も興味深いでしょう。

 実験では、女子大生80人を対象に「人への好意」を調べました。女子大生に「ある実験のために被験者をだましたいので、そのアシスタントをしてほしい」と依頼するのですが、実はここで登場する被験者とはサクラです。本当の被験者は女子大生--いわば内緒で逆ドッキリを仕掛けるような実験でした。

 女子大生とサクラとで会話をしてもらい、会話の最中、サクラは女子大生の印象を7回示すという決まりを設けました。そして、評価を受けた被験者(女子大生)は、サクラに対してどんな印象を抱くかを調べました。サクラは、次の4つのパターンで女子大生たちを評価しました。

A 好意的な態度→好意的な態度(最初から最後まで好き)

B 非好意的な態度→好意的な態度(最初は嫌いだったけど、やっぱり好き)

C 好意的な態度→非好意的な態度(最初は好きだったけど、やっぱり嫌い)

D 非好意的な態度→非好意的な態度(最初から最後まで嫌い)

 このうち最も女子大生の印象が良かったのはBのパターン。印象の良い順に並べるとB↓A↓D↓Cでした。最初から最後まで好きと言われるよりも、最初は嫌いだった方が大きな影響を与えやすいことが示されたのです。

 こうした心の動きを巧みに利用して、人を誘導するケースのひとつにマインドコントロールがあります。

 マインドコントロールの手順は、①その人の自我を揺さぶり②自我を崩壊させて③再凍結することです。

 例えば、参加者を合宿所のような場所に連れて行き、逃げられないように隔離するとしましょう。参加者はいつ解放されるか分からない不安にかられる。すると突然、周りの人間からすごい勢いで罵倒され始め、徹底的に落とし込められる。そして、主催者と周りの人が、今度は応援し勇気づける。

 つまり、長時間の拘束によって自我を揺さぶり、罵倒で崩壊させ、弱っているところで再凍結させることで人の心は支配されてしまうのです。特に、徹底的に落とした後のフォローは効果抜群だということです。

 自分が弱っているときこそ、つけ込まれるスキは生まれます。ツンとデレは、時に悪用されることを忘れないように。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)