いまハイパーサーミア療法が注目される理由…臨床試験によるエビデンス

AI要約

ハイパーサーミア療法は、がんの塊を42.5度以上の熱で死滅させる治療法であり、がん治療技術の進展により注目を集めている。

熱ががんに対して有効であるという考えは古くからあり、1960年代に有効な加温法が開発された。

ハイパーサーミア療法は1975年に日本で取り上げられ、治療器の開発が成功し、標準治療のひとつになる期待も高まったが、後に下火になった。しかし、最近では再び注目されるようになっている。

いまハイパーサーミア療法が注目される理由…臨床試験によるエビデンス

【ハイパーサーミア療法の今を知る】#2

 1963年には全国でわずか153人だった100歳以上の高齢者の数は、2023年には9万2139人となった。その原動力のひとつががん治療技術の進展だ。なかでも注目されているのが「ハイパーサーミア療法」だ。どんな治療法なのか? 9月に23年ぶりの東京開催となる日本ハイパーサーミア学会第41回大会の大会長で江戸川病院放射線科部長の黒崎弘正医師に聞いた。

「ハイパーサーミア療法は、がんの塊が42.5度以上の熱に弱いという性質を利用して体外からがん細胞が潜む部位にラジオに使われる周波数帯の電波を流してがんの塊を加温して死滅させる治療法です」

 そもそも熱はがんに対して有効ではないか、との考え方は紀元前に活躍した医学の父ヒポクラテスの時代からあった。ドイツの医師ブッシュは1866年に丹毒が高熱により消失したと報告。米国では1900年ごろに、高熱を出すよう細菌を注射することでがん治療を行ったとの報告があった。

 1960年代に入り、有効な加温法が開発され、がんに対する温熱の基礎研究が本格的にスタート。

 日本では1975年に京大教授が当時の文部省がん特別研究でハイパーサーミアを取り上げ、研究班を組織。1983年に治療器の開発に成功し、翌年に日本最初のハイパーサーミア治療器として厚生省の認可を得た。

 その後、さまざまな加熱治療器が開発され、臨床で使われるようになったという。

「1980年代後半から1990年代前半にハイパーサーミア療法は盛んに行われました。公的保険の対象となったこともあり、がんの標準療法のひとつになるとの期待も高まったのです。しかし、治療に時間と人手がかかること、治療器の高精度化が進まなかったことなどから徐々に下火になってしまった。しかし、その後もさまざまな医療機関から著効例の症例報告や臨床試験でエビデンスが蓄積されたこと、さらにはがん治療に関する各診療科の先生方の協力もあり、ハイパーサーミア診療ガイドラインが昨年3月に発売されたことなどから、ハイパーサーミア療法が世間に認知され、がんの標準治療のひとつとして確立する機運が盛り上がっているのです」(つづく)