女の霊が出るというマンション。そこで酒を飲むと… 清野とおる氏が描く、斬新すぎるホラーグルメマンガ【書評】

AI要約

清野とおるさんが怪奇現象をテーマにした新作漫画『東京怪奇酒』を紹介。

清野さんが実際の怪奇現場でお酒を飲むという斬新なコンセプトに注目。

オカルトへの半信半疑ながらも、清野さんの冒険が読者を刺激する。

女の霊が出るというマンション。そこで酒を飲むと… 清野とおる氏が描く、斬新すぎるホラーグルメマンガ【書評】

「ウヒョッ!東京都北区赤羽」シリーズなどで知られる、清野とおるさんが次に興味を持ったのは怪奇現象!? オカルトに半信半疑ながら一度でいいから「オバケ」を見たいという清野さんが、怪奇現象が起きた現場で酒を飲むという『東京怪奇酒』(清野とおる/KADOKAWA)は、斬新すぎる異色のホラーグルメマンガだ。

 王道の心霊、パニック、サスペンスなどさまざまなジャンルがあるホラー漫画。本作は、作者である清野さんが友人知人らから聞いた「怪談」をもとに、実際に怪奇現象が起こったとされる現場へ足を運ぶ実録コミックだ。

 一度でいいから「オバケ」を見たい清野さんが取った行動は、恐怖と興奮を味わいながら怪奇現場でお酒を吞むこと! その名も「怪奇酒」。清野さんのホームタウン赤羽の幽霊マンションから始まり、友人らから聞いたさまざまな怪奇現場でお酒を飲むと何が起きるのか!? 今までにないホラーとグルメという意外で新鮮な組み合わせが楽しめる。

 お酒を飲むならいつもの居酒屋、いつものスナック。安心感を得る一方で、年齢を重ねると刺激は減り、感情を激しく揺さぶられるような経験も減っていくもの。

 怪奇現象があった場所へ足を運ぶこと自体、刺激的な体験だが、そこでお酒を飲んでしまおうという発想ができるのは清野さんならでは! 怪奇現場でお酒を飲む「怪奇酒」は、幽霊がいるかもしれない恐怖とゾクゾク感が次第に快感へと変化していく、最高に刺激的な体験なのだ。

 こんなところでお酒を呑むなんて大丈夫なのだろうか…とドキドキしながらも、何だか可笑しさがこみ上げてくる本作は、未知なる世界へと誘い、読者も刺激を味わうことができる。

 オカルトを信じていないけれども、オカルトが好きだし体験できるならしてみたい! という清野さんの正直な気持ちが伝わってくるからこそ、ギリギリを攻めているのに好感をもって読めてしまう。また作品を描くうえで怪談のディテールを重視しているため、描かれる幽霊たちは解像度高くリアル。まるで読者自身がその場にいるような臨場感を味わうことができる。