元側近が垣間見た小池都知事の素顔「トップに立つと『専制君主』の地が出てしまう」

AI要約

東京都知事選挙における現職の小池百合子知事の挑戦について、元側近からのインタビューを通じて、彼女の演技力や信念の欠如、そして政策の実際について明らかにされている。

小池知事は自己プロデュース能力に優れ、「原発廃止」などの政策を取り扱う際も大衆の支持を得るための手段として利用するポピュリストとしての側面が浮かび上がっている。

一方で、意外な一面もある小池知事がLGBTに焦点を当てた都条例を成立させる経緯や、築地市場の豊洲移転問題を巡る裏話を通じて、彼女の信念の欠如と融通無碍な政治手法が浮き彫りになっている。

元側近が垣間見た小池都知事の素顔「トップに立つと『専制君主』の地が出てしまう」

【注目の人 直撃インタビュー】

 小島敏郎(弁護士)

 東京都知事選(来月7日投開票)は告示(20日)まであと1週間。じらし戦術を展開した現職の小池百合子知事が12日、ようやく出馬を表明した。2期8年の評価が問われる中、学歴詐称疑惑を再燃させたこの人に、劇場型都政の真相を聞く。元側近が垣間見た女帝のウラの顔とは──。

  ◇  ◇  ◇

 ──環境省の局長時代から小池知事に仕えた立場から見て、彼女にどのような印象をお持ちですか。

 ひと言で表せば「優れた女優」です。その時々の課題に合わせ、一生懸命に取り組んでいるようにみせるのは本当にうまい。本心は全く違っても、心の底から真剣にやっているように振る舞える。その演技力、自己プロデュース能力は優れています。しかし、それと、政策を深く理解する能力は、また別です。

■信念がないから政策は人気取りの手段

 ──小泉政権の環境相時代は「クールビズ」で、メディアの注目を集めました。

「カイロ大卒、しかも首席」で、メディアに売り込み、世に出た人ですから。メディアを利用することは得意です。小池さんにとって、環境政策は自己アピールに使える道具という認識はあったと思います。ただ、小泉さんには郵政民営化に懸ける信念がありましたけど、小池さんには政治家としての信念を感じたことはありません。それが「ポピュリスト」である彼女の強みです。

 ──といいますと?

 信念がないからこそ、ある考えに固執することなく、融通無碍に動ける。彼女にとって政策はその時々の大衆の支持を得て、権力の階段を上っていくための手段です。小池さんは「原発廃止」を政策に掲げていたことがあるのです。覚えていますか。

 ──2017年衆院選で小池知事が結成した「希望の党」は「2030年までの原発ゼロ」を公約に掲げていました。

 小池さんに頼まれ、「2030年まで」に段階的廃止の案を取りまとめて、公約に書き込みました。これは「原発廃止」を訴える小泉さんの支持を得るためでした。今は全く原発廃止の話はしませんが、小池さんは信念がなくても、原発廃止さえ政策に掲げることができるのです。

 ──良心の呵責はないのでしょうか。

 ないでしょうね。その時の風を読んで、躊躇なく、何でもできる人です。でも、信念を持たない、融通無碍な政治家というのも珍しい。信念に殉ずるというのは、小池さんに似合わないし、理解できないでしょう。

 ──それでも結局、小泉元首相は希望の党に関与せず、彼女自身の「排除」発言が災いして衆院選は大敗しました。

 当時は小池さんもひどく沈んでいました。「これから、どうしよう」と。

 ──意外と人間らしい一面もあるんですね。

 あの状況なら誰だって落ち込みますよ。小池さんは結構、感情の起伏がある。ヘコむときはヘコむ。しっかり後で立ち直りますけどね。当時は排除発言や安保法制の容認などで右寄りの印象がつき過ぎたのが選挙の敗因でした。だから、立憲民主党が野党第1党になったのです。そこで小池さんに「政策を真ん中に戻さなければいけない」「少し左に寄って、イメージを真ん中に戻そう」と、LGBT差別を禁止し、ヘイトスピーチを規制する都条例を助言しました。小池さんは18年にその条例を提案し、成立させました。

 ──全国初のLGBTに焦点を当てた条例成立の裏で、そのような経緯があったとは驚きです。

 小池さんが、保守系政治団体の「日本会議」など復古的な家族観を重んじる信念を持っていたら、この条例は絶対にできませんでした。

 ──小池知事も国会議員時代は「日本会議」の国会議員懇談会の副幹事長を務めていました。

 それは彼女にとって重要ではありません。支持を回復するためなら、LGBTにシンパシーがなくても、LGBTに寄り添っているように振る舞うことができる。だから、条例ができたのです。

 ──小島さんは都の特別顧問として、築地市場の豊洲移転問題を担当しました。「築地は守る、豊洲は生かす」というフレーズを発案したのも?

 それは私ではなく、顧問の人たちの議論を聞いて、小池さんが考えたものです。

 ──当初は「築地を市場機能を有する食のテーマパークにする」とし、仲卸の人々が望めば帰れるようなことを言いながら、いつの間にか巨大スタジアムと商業施設を建設する計画に変貌しました。

 築地市場跡地の再開発は、徹頭徹尾、プロセスがブラックボックスです。都から数年度にわたり、再開発に関する検討業務を委託されたのは「日建設計」。競争入札を行わず特定業者を指定する特命随意契約でした。その検討プロセスは、再開発事業の募集要項にどう結びついたのか、情報開示を求めても肝心な部分は黒塗りです。つまり、プロセスの全容を知るのは日建設計のみ。事業募集に関して優越的地位にあるのに、事業者に決まった三井不動産を中心とした11社の企業グループには、日建設計も参画しています。利益相反ですよ。しかも、スーパーゼネコン5社のうち4社が加わり、公正な競争原理が働いたとも言えません。