65歳未満で発症する〈前頭側頭型認知症〉特徴となりやすい人とは?精神科医が徹底解説

AI要約

前頭葉側頭型認知症は、アルツハイマー病とは異なる特徴を持ち、主に65歳未満で発症し、男性に多く進行が早い認知症である。

症状は物忘れではなく、社会性の欠如や言語障害が主に現れ、自制力や判断力を司る前頭葉と言語中枢、情動中枢のある側頭葉が萎縮する特徴がある。

生活習慣病が前頭葉側頭型認知症の発症リスクを上げるため、生活環境の見直しや予防が重要である。

65歳未満で発症する〈前頭側頭型認知症〉特徴となりやすい人とは?精神科医が徹底解説

前頭葉側頭型認知症とは、脳の前頭葉と側頭葉が得意的に萎縮する認知症で、アルツハイマー病など他の認知症とは違った特徴を持ちます。どんな認知症なのか?前頭側頭型認知症の特徴について具体的に説明していきます。

■65歳未満で発症する

アルツハイマー病が70歳から80歳で発症することが多いのに対して、前頭側頭型認知症のほとんどが65歳未満で発症します。

■男性に多く進行が早い

アルツハイマー病が女性に多いのに対して、前頭側頭型認知症は、男性に多いです。

また、進行速度も他の認知症より早く、発症から大体6年で末期に至ると言われています。

■症状は、物忘れではなく、社会性の欠如と言語障害

認知症と言えば、もの忘れや道に迷う等の症状を思い浮かべる方が多いと思いますが、前頭側頭型認知症は、アルツハイマー病など一般的によく知られている認知症と違い、もの忘れ症状は、ほとんど見られず、万引きする、自分勝手な行動でトラブルを起こす、言葉が理解できない、意味不明な言葉を発する、同じ行動を繰り返すなど人格変化による症状や言語障害が中心になります。

■なぜ物忘れ症状が出ないのか?

それは、前頭葉側頭型認知症は、思考力や判断力、自制力など社会生活を送るために必要不可な機能を司る前頭葉と言語中枢や情動中枢のある側頭葉を中心に神経細胞が破壊され、記憶中枢のある海馬や自分の位置や物体の色や形を識別する頭頂葉の機能は維持されるためです。

■■【前頭側頭型認知症を疑う症状】

1.万引きや痴漢などの反社会的行為を繰り返す

 本人は、してはいけない事と理解できないため、繰り返し行います。

2.信号無視や順番待ちしない等の自分勝手な行動が目立つ

 周囲に対して配慮できなくなるため、自分本位の行動が目立つようになります。

3.同じ行動を繰り返す

 例:

 雨など天候が悪くても、とにかく毎日、同じ時間に同じコースを散歩する

 同じ料理ばかり食べる

4.言葉が理解できない

 相手が言った言葉をそのまま繰り返すオウム返しや何を聞いても同じ返答しかしない滞続言語など相手の言葉を理解して対応することが出来なくなります。

5.共感できない、感情をコントロールできない

 人の話を聞くことができず、その場を立ち去ってしまったり、些細なことで激しく怒り出したりします。

6.どこかおかしいと自分は思っていない(病識がない)

■生活習慣病が発症リスクを上げる!

脳内にタウタンパクやTDP43等の異常タンパク質が蓄積する事で、前頭側頭型認知症を発症すると言われていますが、何故そうした異常タンパク質が蓄積するのか?など詳しい原因は分かっていません。

ですが、高血圧や高脂血症、糖尿病や肥満といった生活習慣病が前頭側頭型認知症の発症リスクを上げることが報告されており、タウタンパクやTDP-43等の異常タンパク質の種が溜まり始める20代30代から意識的に生活習慣病を予防する生活を心がける事が前頭側頭型認知症の発症リスクを減らすことに繋がると言われています。

■■【生活習慣病危険度チェック】

1.最近、体重が増えてきた又はウエストが大きくなってきた

2.タバコを吸う(1本でも)

3.お酒をよく飲む

 男性の場合、ビールなら1000ml.日本酒なら2合(360ml).焼酎なら200ml.チューハイなら700ml.ワインなら400ml.ウイスキーなら200ml

 女性の場合、ビールなら500ml.日本酒なら1合(180ml).焼酎なら100ml.チューハイなら350ml.ワインなら200ml.ウイスキーなら100ml

4.睡眠不足を感じる

5.ストレスを感じる事が多い

6.仕事や家事、育児などが忙しく、休養をなかなか取れない

7.運動不足を感じる

8.移動手段は、主に車や電車で歩く事が少ない

9.ご飯やパン、麺類などの炭水化物が多い食事

10.濃い味付けが好み

11.間食することが多い

12.夜10時以降に夜食を食べたり、アルコール類を飲んだりする事が多い

13.睡眠と夕食の間が2時間以内のことが多い

14.朝食を食べない事が多い

15.食事を食べるスピードが早い(いわゆる早食い)

16.外食が多い

17.レトルト食品やインスタント食品をよく食べる

18.甘い物やスナック菓子をよく食べる

19.甘い飲み物をよく飲む

20.野菜や海藻類をあまり食べない

5項目以上当てはまる人は、要注意です。

前頭側頭型認知症の発症リスクを減らすために、生活を見直してみましょう!

■まとめ

認知症の1つのタイプである前頭側頭型認知症は、他の認知症に比べて若い年代で発症することが多い上、早期では物忘れ症状がないことから、発見が遅れやすい傾向があります。

今までと違う言動や性格変化を周囲が感じた場合は、前頭側頭型認知症の可能性も考えて、専門家に相談するようにしましょう。

文/豊田早苗

精神科医。鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。