窃盗癖のあるママ友。彼女が我が家のものを盗んでいた本当の目的は!? その執念にゾッとさせられる【書評】

AI要約

物語は、主婦のサキが見知らぬ土地でのママ友トラブルに巻き込まれる様子を描いている。

サキは信頼していたママ友から自宅の私物が盗まれる事件に遭遇し、犯人を特定するが、その理由が分からず戸惑う。

サキの夫であるケンの介入により、事件の背後にある因縁が明らかになり物語は展開していく。

窃盗癖のあるママ友。彼女が我が家のものを盗んでいた本当の目的は!? その執念にゾッとさせられる【書評】

 どこで誰に恨みを買っているかわからないから、世の中って恐ろしい。いつも隣にいるあの人も、笑顔が絶えないこの人も、もしかしたら自分の知らないところで恨みの言葉を唱えているかもしれない。

 …なんて考え出すと怖い気もするけれど、思わぬきっかけで知らぬ間にヘイトを集めてしまう、それは誰にでも起こりうる日常トラブルのひとつではないかと思う。

 そんな日常に潜む人間関係のホラーとママ友トラブルを描いたのが『その人って本当に、ママ友ですか?』(ちなきち/KADOKAWA)だ。

 夫の仕事の都合で見知らぬ土地に引っ越してきた主婦のサキは、やんちゃざかりの息子の世話と家庭を顧みない夫との生活に心を病みかけていた。SNSの世界に逃げ込んだ彼女は、やがてそこでの交流がきっかけで知り合ったママ友のマリ・リカコとリアルでも交流を重ねるようになる。

 ふたりの存在に心を救われていたサキだったが、今度は身の回りで不可解な出来事が起こるようになる。マリとリカコと親しくなった頃から、自宅にある私物が次々となくなってしまうのだ。まさか、と思いながらもサキは信じたくないひとつの可能性を考え出す。

 そしてある時、対面したリカコが着ていたワンピースを見て疑念はより強固なものとなる。リカコが着ていたのはサキのクローゼットからなくなった大切なワンピースと同じものだったのだ。

 ここまでのストーリーで紛失事件の犯人はリカコでほぼ間違いはないのだが、怖いのはその理由が分からない点だ。彼女と知り合ってまだ日が浅いサキには心当たりがなく、なぜそんな目に合うのか見当もつかない。関係を壊したくないあまり踏み込めないサキだったが、傍観者だったサキの夫・ケンがこの事件に介入することになり事態は一気に様相を変える。

 ケンはリカコと知り合いで、なにやら一連の事件に心当たりがあるような素振りを見せるのだ。そうして物語は、サキが出会う前のケンとリカコの因縁に遡ってゆく。