「生成AIが企業価値の底上げに」--ワークデイ、製品ロードマップを公開

AI要約

WorkdayはAI戦略を中心とした製品ポートフォリオに関する記者説明会を開催。グローバルで1万を超える顧客数と人材管理、財務管理ソリューションの導入数について報告。

Neil Jensen氏がAIに関する取り組みやHiredScoreの買収、AIの活用の重要性を説明。またAIを用いた効率化の取り組みや今後の展望についても述べられた。

生成AIの導入により、UXの向上や業務の効率化が期待されており、新たなビジネスへの挑戦やイノベーションへの時間割り当てについても言及された。

「生成AIが企業価値の底上げに」--ワークデイ、製品ロードマップを公開

 ワークデイは5月30日、AI戦略を中心とした製品ポートフォリオに関する記者説明会を開催した。

 同社のグローバルにおける顧客数は1万を超えており、人材管理ソリューション「Workday HCM」の導入数はグローバルで5250以上、財務管理ソリューション「Workdayファイナンシャルマネジメント」の導入数は2000以上となっている。

 説明会に登壇した、米Workdayのグローバル 製品戦略担当プレジデントのNeil Jensen(ニール・ジェンセン)氏は、「Workdayのプラットフォームを通じて、お客さまがより体験の度合いを高めていただけること、そしてエンゲージメントを深掘りできる。一方で、最高情報責任者(CIO)や最高技術責任者(CTO)は、プラットフォームを使いながら、セキュリティやデータのプライバシー、レジリエンスのためにプラットフォームを積極的に使っている」と説明した。

 Workdayは、「イノベーション」「社員」「誠実性」「顧客サービス」「楽しむ」「採算性」――の6つをバリューに掲げており、その一つであるイノベーションに向けた取り組みとして、Jensen氏は人材オーケストレーションソリューションを提供するHiredScoreの買収を挙げた。

 買収に至った背景について同氏は、「HiredScoreは、日本市場に特化した形で開発を進めていた。日本では13社と取引しており、履歴書に関しても14万件以上を抱えていた。非常に複雑なテーブルや和暦、日本特有の自己ピーアールなどを取り込んで日本向けに開発していたという点が理由だ」と説明した。

 次に、Workdayの戦略的な投資として「人財と資金」「業界」「拡張性」「エクスペリエンス」「AI」「レジリエンスとセキュリティ」――を挙げ、特にAIに関する取り組みを紹介した。

 同社では、2014年からAIへの取り組みを始めており、例えば労働者と職のマッチングや、テクノロジーを活用した業務の効率化といった場面にAIを適用してきたという。

 WorkdayのプラットフォームにはAIと機械学習(ML)が組み込まれており、現在、運用中のML機能が50以上実装されているほか、3000以上のユーザーが同社のMLのアルゴリズムに寄与しているという。また、MLの開発に関して2つの開発環境を用意しており、1日の推論リクエスト数は6000万、1日当たりの取り込みレコードは60億に上る。

 Jensen氏は、「AIの活用に関してはトラスト(信頼)と誠実性が必要だと考えている」とし、「AIは人間の可能性を増幅することができ、社会に対してプラスの貢献ができる。またAIを使うに当たりデータのプライバシーやデータ保護法などに準拠しながら正しく使うことを目指している」と公平かつ公正なAIの利用を心がけているとアピール。加えて同社では、顧客の法務担当者やCTO、顧客企業の諮問委員会などに対して、WorkdayのAIに関する考え方を啓発するようにしているという。

 同社では、WorkdayのAIを活用することで、ユーザー体験(UX)の向上や業務の効率化につながるとしている。Workdayの環境下では年間当たり3000万以上の職務技術書が作成され、1件当たり1~2時間程度かかっているという。この作業の自動化と効率性の向上に向けて同社ではAIに取り組んでいる。

 現時点では、AIを活用した「ヘルプ記事の翻訳作業」「原稿作成・公開」「職務記述書の作成」の機能をアーリーアダプターとして提供している。例えば、3カ月かかっていた翻訳作業を1週間で完成させたり、職務記述書の作成を2時間から数分に短縮したりできるという。

 今後は、生成AIを活用して、ナレッジ管理や人的資本管理(HCM)、財務管理などを支援する機能を開発・提供していく予定だ。

 Jensen氏は、生成AIの導入によって劇的にUXが向上すると主張する。「今までは、画面をクリックしながら情報を特定し、特定された情報を受けてエンゲージメントを図っていたが、生成AIにより全てが会話型へと移り変わる。とにかく検索とタスクの準備を容易にすることが最終的な目標だ」と同社の展望を明かした。

 また、これまでマニュアルで行っていたプロセスや作業などを生成AIで自動化することで、浮いた時間を新たなビジネスへの挑戦やイノベーションに時間を割くことができるようになる。これによって、「企業の価値そのものを底上げできるのではないか」と語った。