NVIDIA、AI向け半導体の売上高5.3倍 AIブーム継続

AI要約

米半導体大手エヌビディアの業績拡大が止まらず、2025会計年度第1四半期は売上高260億4400万ドル、純利益148億8100万ドルと過去最高を更新。AI向け半導体部門が成長し、データセンター部門が最大の事業部門となった。新たなAI半導体の展開に期待が高まっている。

エヌビディアは価格の高いAI半導体「Blackwell」を市場投入予定で、需要が高まる見込み。競争が激化する中、先端半導体「H100」の調達時間が短縮され、大手テック企業が大量調達の計画を進めている。

株価も急騰し、時価総額が2兆ドルを超えるエヌビディアは、AI技術への投資が成功を収めている。ゲーム部門からデータセンター部門への事業転換により、成長が加速している。

 米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)の業績拡大は止まらないようだ。テクノロジー大手による生成AI(人工知能)への投資が勢いを増すなか、同社製GPU(画像処理半導体)の争奪戦が繰り広げられている。

■ 売上高3.6倍、純利益7.3倍

 エヌビディアが2024年5月22日に発表した、2025会計年度第1四半期(2024年2~4月)決算は、売上高が260億4400万ドル(約4兆800億円)だった。前年同期の3.6倍となり、前四半期に続き200億ドルを超えた。純利益は148億8100万ドル(約2兆3300億円)で、7.3倍。売上高、純利益ともに過去最高を更新し、アナリストの予想を上回った。

 併せて発表した、25会計年度第2四半期(24年5~7月)の売上高見通しは280億ドル(約4兆3900億円)前後で、これもアナリスト予想を上回った。

 エヌビディアのジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は決算説明会で、「次の産業革命が始まった。企業や国はエヌビディアと提携し、数兆ドル規模のデータセンターをアクセラレーテッド・コンピューティングに移行している。新しいタイプのデータセンターであるAI工場を構築して、新しい商品である人工知能を生産している」と自信を示した。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、この決算発表を受け、同日の米株式市場の時間外取引でエヌビディア株は6%上昇し、1000ドルを超えた。

 エヌビディアの株価は過去1年で3倍以上になり、時価総額は2兆ドル(約313兆円)を超えた。エヌビディアは決算発表で、24年6月7日付けで1株を10株に分割することも明らかにした。四半期配当も4セント(分割前ベース)から10セント(同)に増額する。

■ AI向け半導体部門5.3倍、全売上高の86.6%に

 24年2~4月期の売上高を事業部門別に見ると、AI向け半導体を含むデータセンター部門は、約226億ドル(約3兆5400億円)で、前年同期の5.3倍になった。同部門の売上高全体に占める比率は86.6%に達した。この比率は、24会計年度第1四半期で59.6%、同第2四半期で76.4%、同第3四半期で80.1%、同第4四半期で83.3%、と推移しており、四半期ごとに上昇している。

 一方、かつての主力事業だったゲーム部門の売上高は18%増の約26億ドル(約4100億円)だった。売上高全体に占める比率は10.2%に低下した。

 エヌビディアは90年代にGPU企業としてスタートし、その後ビデオゲーム用半導体の主要企業に成長した。その一方で、ファンCEOは、過去15年間、GPUの新しい用途を追求してきた。その結果、同社製GPUは、暗号資産のマイニングやAI分野で採用されるようになった。昨今の生成AIブームにより、データセンター部門は売上高が、ゲーム部門を上回り、同社最大の事業部門になった。

■ エヌビディア製半導体、需要殺到

 AIブームにより、エヌビディア製半導体への需要が非常に高まっている。この熾烈(しれつ)な競争で優位性を維持するため、同社は年後半に新世代AI半導体の市場投入を計画している。

 ファンCEOは決算説明会で、コードネームで「Blackwell(ブラックウェル)」と呼ばれる、性能を高めたAI半導体を24年5~7月期以降に出荷すると明らかにした。この半導体の価格は1個当たり3万ドル(470万円)以上になる見通し。需要が今後も堅調に推移すれば、エヌビディアにはさらなる売上増が見込まれる。

 同製の先端半導体である「H100」の調達にかかる時間は、従来ほぼ1年かかっていたが、現在は数週間程度に短縮されている。米テスラや米メタといったテック企業はAI開発を推進するため、大量のH100を調達する意向だ。米ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、メタは24年末までに35万個のH100を調達する計画だ。その単価は3万ドルで、総額105億ドル(約1兆6500億円)になるとみられる。