「ネット連携で車内を快適・安全に」 市販カーナビに新局面、趣味性の高さも鍵

AI要約

市販カーナビゲーションシステムが新たな局面を迎えており、市販ナビメーカーはインターネット連携やネット動画などの機能強化、既販車への対応、趣味性高い車種向けの展開などで新たな製品施策を打ち出している。

インターネット連携に注力するパイオニアやパナソニックの新製品では、ネット動画視聴やスマホ接続、無料地図更新などの機能が強化されており、車室内を快適で安全な空間にしていく取り組みが進んでいる。

大画面化や車種専用ナビの展開、キャンピングカー向けナビ提案など、市販ナビメーカーは新たな需要を開拓するため、様々な施策を展開している。

「ネット連携で車内を快適・安全に」 市販カーナビに新局面、趣味性の高さも鍵

 市販カーナビゲーションシステムが新たな局面を迎えている。ここ数年で市販ナビを装着できない新型車が増えただけでなく、車両情報システムと一体化している純正ナビの装着が高まる傾向もあり、従来と同じ製品展開では生き残れない状況になってきた。スマートフォンのナビアプリの台頭もある。市販ナビメーカーは、インターネット連携の強化、趣味性の高いクルマを所有する層への特化、既販車の買い替え―をターゲットに新たな製品施策を打ち出す。

 「インターネットにつながる新たな価値を提案し車室空間を快適安全で心地よくしていく」。2年ぶりに主力ナビをモデルチェンジしたパナソニックオートモーティブシステムズの渡邉洋・市販事業総括は、新製品発表会でこう強調した。

 パナソニックの「ストラーダ」はこれまで、車種を問わず大画面ディスプレーを装着できるF1シリーズを展開してきたが、2年ぶりの新製品ではインターネット接続を前面に出し、ネットだから実現できる動画視聴、スマホ接続、無料地図更新の三つを強化した。

 YouTubeやアマゾンのプライムビデオ、TVerなど七つの動画配信サービスを視聴できる「ネット動画」が特長だ。映像コンテンツの視聴がネット動画に移行していることから、新製品はネット連携にかじを切った。

車室内にWi-Fi環境を

 インターネット連携にいち早く目をつけてサービスを展開してきたのはパイオニアだ。NTTドコモとも連携して2019年から自動車専用のWi-Fiサービスを展開。最近では、車室内にWi-Fi環境を整えることでドライブ中でもインターネット上のさまざまなコンテンツを好きなだけ楽しめる車内エンターテインメントの提案を強めている。

 車載用Wi-Fiルーターを展開するだけでなく、「カロッツェリア サイバーナビ」や「楽ナビ」でもネット接続を可能にした。ナビ自体をWi-Fiスポットにすることで、定額料金でスマホやタブレットのネット接続をできるようにしている。

 パイオニアはネット接続にとどまらず、カーナビで培った資産をサービス展開する取り組みも進める。既にモビリティー基盤を構築し、23年9月に発売したスマホカーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」は、ダウンロード数が60万を超えている。今年はバイク用のナビアプリも発売した。

 パナソニックとパイオニアは自宅にあるレコーダーとネット接続することで、録画したコンテンツを車内で視聴したり、レコーダー経由でテレビやBSなどの衛星放送を視聴したりできる機能も用意している。

 ナビのネット連携には各社が取り組んでいる。スマホ用ナビアプリの利用拡大も背景にある。各社では車載向けアプリのアップルの「カープレイ」やグーグルの「アンドロイドオート」との連携を進めるほか、専用アプリを用意してスマホ連携する動きも目立つ。JVCケンウッドやアルパインもネット接続による動画視聴などを訴求する。

 最近は純正ナビでもカープレイやアンドロイドオートとの連携ができる車種が増えてきたが、市販ナビは、純正よりも検索性やコンテンツ連携などを充実させて差別化を図っている。

趣味性高い車種へ特化

 市販ナビは、これまで新型車への装着を想定した製品展開をしてきたが、近年は既販車にも目を向けている。国内には現在約6000万台の既販車があり、既販車への買い替え促進も大きな市場とみるのが最近の動きだ。既販車への対応で顕著だったのが、ナビの大画面化への対応。新型車の大画面化が進むが、既販車には大画面ナビが付けられない。

 この課題に対しパナソニックは、9V型や10V型といった大画面ナビを付けられるようにした。ダッシュボードからモニターが浮き出るフローティング構造を採用することで、車種問わず大画面化を実現した。現在では主要市販カーナビメーカーの大半がフローティングナビをそろえている。既販車への買い替え促進としてフローティングやネット接続などを前面に出していきたいという狙いもある。

 趣味性の高い車種への展開も進む。アルパインは長年、車種専用にダッシュボードパネルなどを用意し大画面ナビを展開してきた。ここ数年はトヨタのアルファードやヴェルファイアといった人気ミニバンの旧モデル向けの専用ナビも発売している。

キャンピングカー向けに市販ナビ提案

 今年はスズキ・ジムニーや三菱デリカミニといった人気車種向けに専用設計したナビの展開を始めた。アルパインマーケティングによると「趣味性の高い車種を購入する層は、ナビなども市販品をこだわって装着することが多い」という。特定車種に特化しても、装着率が高ければ事業化が可能だ。最近はキャンピングカー向けに市販ナビを提案する動きもあり、キャンピングカーのイベントに出展するナビメーカーも多い。

 大きな転換期を迎えている市販ナビメーカーは、市販ならではの機能に特化したナビで新たな需要を掘り起こす。