AIを業務改善に使っても「たかだかGDP比数%」 Intel Connectionで体感した国家プロジェクトの視座

AI要約

松岡聡氏は、国家プロジェクトの視点からAIの業務改善への限界を指摘し、GDP向上にもっと高い目標を設定する必要性を語った。

富岳NEXTプロジェクトでは、物理シミュレーションと生成AIを融合させ、AIが本当のクリエーションを行う方向に進化させている。

松岡氏はAIの学習限界についても言及し、AIによる真のクリエーションの重要性を強調した。

AIを業務改善に使っても「たかだかGDP比数%」 Intel Connectionで体感した国家プロジェクトの視座

9月の頭に参加したインテルのビジネスイベント「Intel Connection 2024」に登壇したのはスーパーコンピューター富岳のプロジェクトをリードする理化学研究所 センター長の松岡聡氏。生成AIに対する期待と課題の目線はあきらかに国家プロジェクト目線だった。

 「AIを業務改善に使っても、たかだかGDP比数%の改善にしかならない」。こう語ったのは、Intel Connectionに登壇した理化学研究所 センター長の松岡聡氏だ。「一方、1960年代から今に至るまでGDPは約60倍向上している。サイエンス、エンジニアリング、新しい発見とクリエーションがグローバリゼーションとあいまって60倍になった。決して業務改善で60倍になったわけではない」と松岡氏は続ける。業務改善を取材することが多い私にとってはGDP比数%は「たかだか」ではないのだが、国家プロジェクトを率いる松岡氏の視座はもっと高いところにあった。これに先立つ基調講演の前半では「業務改善だけでGDP比5~8%の向上」という経済インパクトの話が出ていただけに、松岡氏は「目指す先はそこじゃない」と釘を打ったようにも見えた。

 

 理研が主導するスーパーコンピュータープロジェクト「富岳NEXT」では、「AI for Science」を掲げ、大規模なシミュレーションと生成AIの融合を目指している。物理現象のシミュレーションからAIが学習データを生成し、リアルタイムでAIモデルに学習させる。これが富岳NEXTの目指すAI for Scienceだ。「AIはしょせん学習しているだけ。2028年にはデータが枯渇してしまうと言われているので、それ以上は頭よくならない。AIだけではもはやリミットが来る。絵を模倣するのではなく、AIが本当にクリエーションしていかなければ、これ以上先には行けない」と松岡氏は指摘する。

 

文:大谷イビサ

 

ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

 

文● 大谷イビサ 編集●ASCII