ネットアップ“史上最大級”のアップデートを展開、モダナイゼーションとAI活用を加速

AI要約

ネットアップは、2025年度の事業戦略として"Intelligent Data Infrastructure"の普及に力を注ぎ、新製品の投入やパートナー戦略の強化を計画している。

新製品は30以上の製品や新機能を展開し、データストレージやセキュリティ領域、AI領域など幅広い分野に対応している。

また、過去の成績や国内事例を振り返りながら、VMware買収以降の仮想化環境の見直しを"ビジネスチャンス"と位置付けている。

ネットアップ“史上最大級”のアップデートを展開、モダナイゼーションとAI活用を加速

ネットアップは、2025年度(2024年5月~2025年4月)の事業戦略を発表した。新コンセプトである“Intelligent Data Infrastructure”の普及に力を注ぐという。

 ネットアップは、2025年度(2024年5月~2025年4月)の事業戦略を発表した。

 

 ネットアップの代表執行役員社長である中島 シハブ・ドゥグラ氏は、「2025年度は、(新コンセプトである)“Intelligent Data Infrastructure(インテリジェントデータインフラストラクチャー)”に力を注ぐ。モダナイゼーションとAIの導入を加速し、多くのビジネスチャンスを獲得できるITインフラへの変革を支援する。新コンセプトを実現する新製品の国内市場への投入、新コンセプトを理解してもらうための施策、パートナー戦略の強化の3点に取り組む」と語る。

 

 加えて、「日本の企業における課題として多く挙がっているのが、サイバー攻撃への対応やサイロ化したデータの活用、AIなどの新たな技術への対応である。こうした課題を解決するために、新たなデータインフラが必要になっている。それがIntelligent Data Infrastructureであり、それを実現する環境を構築して、お客様が“ビジネスチャンピオン”になれるようサポートする」と述べた。

 

モダナイゼーションとAI導入を加速する30以上の新製品・新機能を展開

 ネットアップは、Intelligent Data Infrastructureについて、「インテリジェントなアプリケーションを支える、インテリジェント機能を保持した新しいデータプラットフォーム」と定義する。あらゆるデータをサポートする「Any Data,Workload & Place」、観測可能なデータインフラストラクチャーを提供する「Adaptive Data Management & Operation」、サードパーティソフトウェアやサービスとのシームレスな連携を行う「Expansive Ecosystem」を、ネットアップのプラットフォームから展開することでこれを実現する。

 

 2025年度の日本の事業戦略のひとつ目に掲げた、「Intelligent Data Infrastructureを実現する新製品の国内市場への投入」については、すでに関連製品を、30製品以上を発表していることに触れた。「ネットアップが、これだけ多くの製品を一度にリリースしたことはない。日本においても、先行技術検証が進んでいる段階にある」と中島氏。

 

 具体的な製品については、ネットアップ チーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏が説明した。

 

 データストレージ関連製品として、新たに投入したのが「Netapp AFF A-Series」である。オンプレミスのオールフラッシュストレージのフラッグシップモデルとなり、従来モデルに比べて、パフォーマンスを最大2倍に向上。最大4000万IOPS、最大1TBpsのスループットを備える。神原氏は、「パワフル、インテリジェント、セキュアの3つが特徴である。インテリジェント技術をハードウェアそのものにも組み込んでおり、ONTAPの技術進化により、データの格納効率も高めている。IOPSあたりのコストは50%削減できるなど、ベストプライスパフャーマンスを実現した」と強調した。

 

 また、第2世代の「Amazon FSx for NetApp ONTAP」では、単体だけでも1.5倍の性能向上を実現したのに加え、最大12HAペアまでを組み合わせたスケールアウト構成が可能で、動的な活用も可能だ。「AI用途のような性能が要求されるシーンでも、AWSサービスの中で十分な性能を発揮できるファイルシステムサービスになる」と神原氏。

 

 セキュリティ領域については、「ネットアップは、地球上で最もセキュアなストレージを提供したいと考えている。実際、最高機密レベルのデータセキュリティ認証のすべてを取得した唯一のエンタープライズストレージを展開している」と前置きし、新たに米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)の「Secure By Design」にも対応したという。

 

 加えて、「ONTAP 9.15.1 Autonomous Ransomware Protection/AI」を通じて、AIエンジンによるランサムウェアの検出精度を99%以上に向上。神原氏は「学習不要で有効にでき、自動更新で最新の攻撃に備えることができる。AIが攻撃する時代になると。人間が守ることは不可能である。こちらもAIで対抗して、データを守る必要がある」と補足した。

 

 「ONTAP 9.15.1 Cyber Vault Solution Reference Architecture」では、論理エアギャップを確保することで、セカンダリストレージに保管されたデータをサイバー攻撃から保護。管理者も削除できないバックアップ機能や、プライマリとセカンダリで管理者権限を独立した設定として、複数管理者の合意時にだけ操作を承認するといった機能も搭載する。

 

 AI領域においては、「長年に渡るNVIDIAやクラウドベンダー各社、お客様との連携をベースに、即座に利用可能なAI開発向けのインフラリファレンスアーキテクチャーを展開してきた」とし、NVIDIA DGX SuperPOD with NetAppやNetApp AIPodといったサービスに触れた。

 

 加えて、新たに提供するのが「NetApp GenAI Toolkit for Google Cloud & for Azure」だ。生成AIによるチャットボット向けのRAGリファレンスアーキテクチャーであり、GitHub上で、オープンソースとして公開されている。また、「NetApp BlueXP Workload Factory」は、生成AIやデータベース、VMwareの環境を含んだ多様なワークロード向けのリファレンスアーキテクチャーで、「これらを活用することで、日本の企業に、生成AIの活用に向けた一歩を踏み出してもらいたい」と語った。

 

 これらの製品を紹介した神原氏は、「今回の製品群は、Intelligent Data Infrastructureのビジョンを実現するための最初のアップデートになり、ネットアップは、それに向けて大きく舵を切り、お客様をリードするという強い意志を持って投入している」と述べた。

 

 2025年度の事業戦略の2つ目に挙げた「Intelligent Data Infrastructureを理解してもらうための施策」としては、東京・京橋の同社本社内に、「Intelligent Data Infrastructure Experience Center」を開設。リファレンスアーキテクチャーを活用した理解の促進、各国のエキスパートを通じたブリーフィングの開催、最新のIoTインフラ環境をハイブリッド・マルチクラウド環境で利用できるPoCラボなど、体験型の技術サポートを提供する。

 

 3つ目のパートナー戦略の強化では、国内400社以上のパートナー、5000人以上が参加する技術者コミュニティが稼働していることに触れ、「約半数の技術者が、アーキテクトコミュニティエンジニアとして、ネットアップのSEと日々交流して、新たな技術を拡大している。パートナーと共に、サイバーレジリエンスでデータを保護する一方、データサイロを解消し、シンプル化することにも取り組む」(中島氏)と語った。

 

VMware買収以降の仮想化環境の見直しは“ビジネスチャンス”

 同社2024年度(2023年5月~2024年4月)の状況も振り返った。

 

 国内においては、サブスクリプション型のストレージサービスの「NetApp Keystone」が前年比98%、クラウドストレージサービスは同76%増となったことを報告。また、国内のオールフラッシュストレージアレイ市場ではナンバーワンのシェアを獲得したことを強調した。IDCの調査によると、2024年第1四半期(2024年1月~3月)における国内AFA市場では、Open Networked分野、NAS分野の双方にて、出荷容量シェアで首位を獲得。国内NAS市場でも同様で、国内市場3分野でシェア1位を獲得した。

 

 中島氏は、「日本では、データ、クラウド、AIの3つの戦略分野に注力し、それそれに良い成果を達成できた。データでは、シンプリシティ、セキュリティ、セービング(コスト削減)、サステナビリティの4つのSを実現するオールフラッシュストレージが大きく成長。とくにオープンシステムストレージ市場では長年の悲願であったナンバーワンシェアを獲得した」説明。

 加えて、「クラウドでは、サービスの提供範囲を拡大し、成長を加速している。また、ランサムウェア対策やVMware、SAPへの対応、レンダリングプラットフォームの提供など、様々なユースケースでの実績が生まれている。AIに関しても、国内において、数多くの案件に携わってきた」と総括した。

 

 国内事例も紹介された。白組では、CG制作環境において、オールフラッシュのファイルサーバーを導入してデータを共有。リンク&リンケージでは、グループ企業全体のデータ統合にオールフラッシュのブロックストレージを採用している。大分県立病院では、増加する病院向けランサムウェア対策としてストレージを、成城大学では、VMwareの最適化のためにデータレイヤーを独立させたブロックストレージを導入したという。

 

 また、日産自動車では、研究開発プラットフォームとして、NetApp Keystoneを採用。AzureやOCIを利用する際に高速にデータにアクセスできる環境として、同サービスを評価しているという。AIの領域では、日本における創薬のための共同プラットフォームを構築するゼウレカや、大規模AIソリューションの開発や国産AI専用半導体の開発に取り組むPreferred Networksにも、ネットアップのソリューションが採用されている。

 

 なお、VMware買収以降のライセンス変更などに直面するユーザーの動向についても言及。神原チーフ テクノロジー エバンジェリストは、「ネットアップのお客様に話を聞くと、仮想化環境を見直す機会になると捉えているケースが多い。VMwareを継続利用する場合、VMware以外の選択肢を検討する場合、クラウドへの移行を検討する場合があるが、いずれかの方法に限定するのではなく、ほぼすべてのお客様が、この3つの選択肢を同時に実現している」と語る。

 加えて、「その際に、データをサイロ化せず、統合した形にしたいという要望が多い。ネットアップだけが、マルチハイパーバイザーとマルチクラウド環境で、データを取り扱うことができる。他社製品を利用していた企業が、ネットアップに相談するというケースも増えている。ビジネスチャンスになっている」と強調した。

 

文● 大河原克行 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp