上位譲りの性能と機能を凝縮した「Pixel 9 Pro」と、折りたためる最強の「Pixel 9 Pro Fold」

AI要約

Googleの最新スマートフォン「Pixel 9」シリーズには、Pixel 9 ProとPixel 9 Pro Foldが登場した。Pixel 9 Proは、Pixel 9 Pro XLと同等機能を持ちながらコンパクトな筐体に凝縮されており、日本市場向けに開発されている。一方、Pixel 9 Pro Foldは折りたたみ式デザインが特徴で、幅が狭く薄く軽くなり、内部ディスプレイのアスペクト比も変更された。

Pixel 9 Pro Foldのカバーディスプレイと内部ディスプレイのアスペクト比が異なることで、内部ディスプレイがほぼ正方形に近づき、画面の利便性が向上した。また、Pixel 9 Pro Foldは薄く軽くなったため、持ちやすさも向上している。

Pixel 9 Pro Foldのカメラ周りはPixel Foldと同等以上の性能を持つが、Pixel 9 Pro/Pro XLとは異なる仕様となっている。その他の基本スペックはPixel 9 Pro/Pro XLとほぼ同等で、AI関連機能も搭載されている。

上位譲りの性能と機能を凝縮した「Pixel 9 Pro」と、折りたためる最強の「Pixel 9 Pro Fold」

 Googleから登場した最新スマートフォン「Pixel 9」シリーズ。先行して発売された「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro XL」については以前の記事で紹介済みだが、今回は「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro Fold」の評価機を入手できたので、ハード面を中心に紹介する。直販価格はそれぞれ15万9,900円、25万7,500円から。

 なお、今回試用した個体は発売前の評価機だったため、仕様が製品版と異なる可能性がある点はご了承いただきたい。

■ Pixel 9 Pro XLと同等の機能をPixel 9同等筐体に凝縮したPixel 9 Pro

 今回、「Pixel 9 Pro Fold」の評価機だけでなく「Pixel 9 Pro」の評価機も入手できたので、まず始めに「Pixel 9 Pro」の外観をチェックする。なお、Pixel 9 Proに搭載プロセッサやAI関連機能、カメラの仕様などはPixel 9 Pro XLと同じなので、そのあたりは以前の記事を参照してもらいたい。

 Pixel 9 Proの本体デザインは、Pixel 9やPixel 9 Pro XLとほぼ同じとなっている。側面を直線的に切り落としたリサイクルアルミニウムのフレームに、ディスプレイ面、背面ともに強化ガラス「Gorilla Glass Victus 2」を採用。背面カメラのカメラバーも、側面フレームから独立し、直線的に切り落とされた楕円形のデザインとなっている。

 サイズは72×8.5×152.8mmと、Pixel 9と全く同じ。ひとまわり大きいPixel 9 Pro XLと比べると明らかに持ちやすい。機能はPixel 9 Pro XLと同じなので、比較的コンパクトながら最上位モデル同等の機能を扱えるという点は大きな魅力と感じる。

 重量は、Pixel 9の198gに対してPixel 9 Proは199gと1g重いが、実際に持ち比べてみても違いは全く分からない。とはいえ、200g近い重量は少々重い印象で、もう少し軽いとありがたかった。

 ディスプレイは1,280×2,856ドット表示、リフレッシュレート1~120Hzのスムーズディスプレイ対応の6.3型有機EL「Super Actuaディスプレイ」を採用。Pixel 9 Pro XLよりサイズが小さいだけでなく、表示解像度がわずかに低くなっている。ただ輝度は最大2,000cd/平方m、ピーク時最大3,000cd/平方mと、こちらはPixel 9 Pro XLと同じで、Pixel 9と比べても直射日光下での視認性が向上していることが確認できた。

 デザイン、サイズが同じということもあって、Pixel 9とPixel 9 Proを横に並べると、どちらがどちらか区別が付きにくい。ただ、Pixel 9は側面フレームとカメラバーの側面がマット処理、背面ガラスが光沢処理となっているのに対し、Pixel 9 Proはその逆で、側面フレームとカメラバー側面が光沢処理、背面ガラスがマット処理となっているため、その特徴で区別がつく。

 また、背面カメラもPixel 9が2眼仕様に対しPixel 9 Proは3眼仕様で、レンズ部分がより大きいことでも区別できる。カラーはObsidian、Porcelain、Hazel、Rose Quartzの4色を用意。

 Pixel 9 Proは、Pixel 9 Pro XLとほぼ同等スペックをPixel 9と同じコンパクトな筐体に凝縮した新たなモデルだ。Googleによると、Pixel 9 Proは特に日本市場からの強いフィードバックを受けて開発したとのこと。Googleが日本を重要市場と考えているからこそ実現できたモデルだが、実際に触ってみても、比較的コンパクトな筐体に上位モデル同等機能を詰め込んでいる点は大いに日本人受けすると感じた。そのためPixel 9 Proは、日本におけるPixel 9シリーズの本命になる可能性が高そうだ。

■ Pixel 9 Pro Foldは幅が狭く薄く軽くなった

 続いて「Pixel 9 Pro Fold」をチェックしていこう。

 Pixel 9 Pro Foldは、従来モデルのPixel Foldから搭載されるディスプレイのアスペクト比が変更されたことで、外観デザインもかなり大きく変更されている。

 ぱっと見て大きく変わったと感じるのが、本体の縦横比だ。Pixel Foldは折りたたんだ状態でのフットプリントが79.5×139.7mmだったのに対し、Pixel 9 Pro Foldでは77.1×155.2mmと、幅が2.4mm短くなった反面、高さが15.5mm増えている。これによって、折りたたんだ状態では見た目が通常のPixelシリーズに近付いた印象だ。

 それに合わせ、開いた状態での見た目も変わっている。Pixel Foldでは開いた状態のフットプリントが158.7×139.7mmだったのに対し、Pixel 9 Pro Foldは150.2×155.2mmと、幅が8.5mm狭く、高さが15.5mm増えている。

 この本体形状の変化は、搭載ディスプレイのアスペクト比が変わったからだ。具体的には、カバーディスプレイのアスペクト比が20:9と、一般的なスマートフォンに近くなった。折りたたみ式内部ディスプレイのアスペクト比もそれに合わせて6:5から1:1.04と限りなく正方形に近いものを搭載。このディスプレイについては後ほど詳しく紹介する。

 また、Pixel Foldも発売当時はその薄さを大きな特徴としていたが、Pixel 9 Pro Foldではさらに薄さが極められている。具体的には、折りたたんだ状態での厚さはPixel Foldが12.1mm(カメラバーの突起除く)だったのに対し、Pixel 9 Pro Foldは10.5mm(同)と1.6mmも薄くなっている。また開いた状態の厚さもPixel Foldの5.8mm(同)に対し、Pixel 9 Pro Foldは5.1mm(同)と0.7mm薄くなった。Googleによると、Pixel 9 Pro Foldは日本国内で購入できる折りたたみ式スマートフォンとして最も薄いとしている。

 さらに、重量もかなり軽くなっている。Pixel Foldの重量は公称で283gだったが、Pixel 9 Pro Foldは公称で257gと26gも軽くなっている。この違いは、実際に双方を持ち比べるとすぐに実感できるほどで、実際に手にするとかなり軽くなったと感じる。この軽さは、筐体素材を従来のステンレスからアルミニウムへ変更することで実現している。

 このように、本体の横幅が狭く、厚さも薄くなり、26gも軽くなっていることもあって、手に持ったときの印象はPixel 9 Pro Foldのほうが圧倒的に持ちやすいと感じる。本体の掴みやすさは横幅の違いが大きく影響していると思うが、それだけでなく薄く軽くなったことで、手にした時の負担感が大きく和らいだことも、持ちやすいと感じる要因なのだろう。

 とはいえ、Pixel Foldと横に並べると、高さがかなり増えたことで、見た目にはかなり大きくなったとも感じる。それでもPixel 9 Pro XLよりも高さは低いので、実際にはそこまでかさばると感じることはないだろう。

 本体デザインは、開閉機構が存在するためカバーディスプレイ側から見て左側面にはヒンジが存在し、折りたたんだ状態では左側の角がかなり鋭角となるが、側面を直線的に切り落とすとともに、角のカーブを大きくなだらかにしたPixel 9シリーズのコンセプトを踏襲している。

 側面フレームおよびヒンジ、ヒンジカバーにはアルミニウムを採用。ヒンジには従来同様に耐久性に優れる流体摩擦ヒンジを採用する。また、カバーディスプレイ面および背面には強化ガラス「Gorilla Glass Victus 2」を採用し、強度を高めている。

 カラーはObsidianとPorcelainの2色を用意。そして、側面、背面カメラバー側面、背面ガラスは非光沢のマット処理、ヒンジカバーは光沢仕上げとなっている。試用機のカラーはObsidianだった。

 ところで、Pixel 9 Pro Foldは、本体がかなりなめらかで、簡単に滑り落としてしまう印象を受ける。開閉機構を備えることや、価格が高価なこともあり、Googleの純正ケースなど、可能な限りケースを装着して利用することをお勧めしたい。

 純正ケースは、本体に傷を付けないよう内部にマイクロファイバーの裏地を装着。またカバーディスプレイ側ケースは簡単に外れないように、内部に粘着シートが貼られているため、安心して利用できる。

■ カバーディスプレイは縦長に、折りたたみディスプレイはほぼ正方形となった

 Pixel 9 Pro Foldには、主にたたんだ状態で利用するカバーディスプレイと、開いて大画面で利用する折りたたみ式の内部ディスプレイを搭載している。

 カバーディスプレイは、アスペクト比20:9、表示解像度1,080×2,424ドット表示に対応する6.3型有機EL「Actuaディスプレイ」を採用。このディスプレイはPixel 9搭載ディスプレイとサイズ、仕様ともに同じ。Pixel Foldのカバーディスプレイはアスペクト比17.4:9、表示解像度1,840×2,208ドットの7.6型有機ELだったため、よりスマートフォンらしいディスプレイとなったことで、Webページが見やすくなるなど扱いやすくなったと感じる。

 また、リフレッシュレートもPixel Foldは最大120Hzだったのに対しPixel 9 Pro Foldでは60~120Hzの可変リフレッシュレートに対応したことで、電力消費も抑えられるようになった。

 内部ディスプレイは、アスペクト比1:1.04、表示解像度2,076×2,152ドット表示に対応する8型有機EL「Super Actua Flexディスプレイ」を採用。Pixel Foldの内部ディスプレイと比べると、サイズがやや大きくなるとともに、アスペクト比が6:5のやや横に長いディスプレイから、正方形に近いわずかに縦長のディスプレイへと変更された。

 同時に、リフレッシュレートは1~120Hzの可変リフレッシュレートに対応。表示内容に合わせて細かくリフレッシュレートを変更できるため、消費電力もかなり大きく抑えられるようになった。

 このほか、内部ディスプレイは上下のベゼル幅がかなり狭められている。従来は上下のベゼル幅が比較的広く、近年のスマートフォンとしてはかなりベゼルの存在が気になっていたが、そちらはかなり改善された。

 ただし、その影響で従来は上部ベゼル内に搭載していた内部前面カメラが、内部ディスプレイ右上角付近にパンチホールを開けて搭載するようになった。パンチホールの存在はそれなりに目立つため、この点は少々残念に感じる。

 このほかにも、内部、カバーディスプレイ共にコントラスト比が200万:1に高められて、よりメリハリのある映像を表示できるようになっていたり、輝度も高められた。輝度については、カバーディスプレイが従来の最大1,200cd/平方m、ピーク時最大1,550cd/平方mから、最大1,800cd/平方m、ピーク時最大2,700cd/平方mへ、内部ディスプレイが従来の最大1,000cd/平方m、ピーク時最大1,450cd/平方mから、最大1,600cd/平方m、ピーク時最大2,700cd/平方mと、それぞれ明るくなった。

 実際に直射日光下での画面の視認性をチェックしてみたところ、確かにカバーディスプレイ、内部ディスプレイともにPixel 9 Pro Foldのほうが見やすい印象だった。これなら、屋外で利用する場合でも画面が見づらいと感じる場面は減るはずだ。

 ところで、Pixel Foldの内部ディスプレイは、ほぼ180度まで開くとされているものの、実際には完全に180度までは開かなかった。それに対しPixel 9 Pro Foldでは完全に180度まで開くようになっている。その差はわずかかもしれないが、完全にフラットになるまで開いて利用できる点は大きな進化点と言える。

 それでも、ヒンジ部の折り目部分は開いても完全にはフラットにならず、指で触ると凹みがしっかり感じられる。操作時に多少の違和感はあるものの、特にその部分だけ柔らかいといったことはなく、操作時に不安になることもなかった。

■ 内部ディスプレイ利用時のアプリの挙動がPixel Foldと異なっている

 Pixel 9 Pro Foldでは、紹介したようにディスプレイのアスペクト比が横長からわずかに縦長へと変わったことで、内部ディスプレイ利用時のアプリの挙動が従来から少々変わっている。

 たとえばGmailアプリは、従来は開いた状態では左右分割表示、90度回転すると全画面表示に切り替わっていたが、Pixel 9 Pro Foldでは開いた状態で全画面表示、90度回転すると左右分割表示に切り替わるようになった。これは、対してディスプレイを開いた状態で縦長、90度回転させると横長とアプリに伝えているためだろう。従来までと挙動が異なるため、Pixel Foldユーザーは少々戸惑うかもしれない。

 WebブラウザのChromeは、Pixel Foldではカバーディスプレイ利用時にスマートフォン向けページを、内部ディスプレイ利用時にPC向けページを表示していたが、Pixel 9 Pro Foldでは内部ディスプレイ利用時も標準でスマートフォン向けページを表示するようになったようだ。内部ディスプレイが横長ではなくなったこともあり、特に不便というわけではないが、せっかくの大画面が生かされない印象だ。

 電子書籍アプリのKindleは、従来は開いた状態で起動すると電子書籍を見開き表示、90度回転すると単画面表示、90度戻すと見開き表示と切り替わっていた。しかしPixel 9 Pro Foldでは、本体の向きに関わらず、アプリ起動直後は見開き表示となるが、その後90度回転すると単ページ表示に切り替わり、それ以降は回転しても見開き表示には戻らなかった。このあたりはKindleアプリのPixel 9 Pro Foldへの対応が不完全ということも考えられるが、挙動としては少々不便になった印象だ。

 なお、電子書籍には、インプレスの「できるfit Google Pixel」を利用した。

 それに対し、折りたたみ式スマートフォンに最適化していなアプリの表示は、従来同様、設定メニューの「アプリ」項目にある「アスペクト比(試験運用版)」の設定内容に従った表示となる。アスペクト比は、「アプリのデフォルト」、「全画面表示」、「3:2」、「画面の半分のみ表示」の4種類から選択できる。ただ、アプリインストール時には「アプリのデフォルト」または「全画面表示」のいずれかが自動設定されるようだ。アプリのデフォルトでは左右に余白を残した表示に、全画面表示ではバランスを崩すことなく全画面に引き延ばした表示となる。

 アプリのデフォルト時の左右の余白の割合は、内部ディスプレイを開いた状態のほうが少なく、90度回転した方が多くなるようだ。これは、画面のアスペクト比が変わり、ディスプレイを開いた状態のほうが(わずかに)縦長になるからだろう。

 とはいえ、中には便利になったアプリもある。その1つが「カレンダー」で、カレンダーを表示している状態で登録した予定をタップすると、予定の内容とカレンダーを左右に分割して予定のないようを即座に表示するようになった。新たに予定を追加する時は、右にその日のタイムライン、左にその月のカレンダーと新規登録のダイアログを表示するようになり、こちらも利便性が高まっている。

 また、一部ゲームではPixel 9 Pro Foldに最適化しているものもある。たとえばGameloftの「ディズニー スピードストーム」もその1つで、Pixel 9 Pro Foldではディスプレイを折った状態で90度回転すると、上にゲーム画面、下に操作パネルを分割表示するため、プレイしやすくなる。

 このほか、大画面ならではの利便性を感じられる点も多い。

 画面を左右に2分割して2つのアプリを同時利用するマルチタスクについては、従来同様の利便性を確保。フォトアプリとGmailアプリを同時に起動し、ドラッグ&ドロップでGmailに写真を送るといったことも簡単に行なえる。そのうえで、分割起動した2つのアプリを保存し、次回以降簡単に起動できる機能を新たに追加している。

 2つのアプリを分割起動している状態で、画面下部から上にゆっくりスワイプしてアプリ履歴を表示すると、今起動している2つのアプリの下に「アプリのペア設定保存」というボタンが表示される。そのボタンをタップすると、同時表示した2つのアプリが1つのアイコンとして登録され、それ以降はそのアイコンをタップするだけで2つのアプリを同時起動できる。これは、地味ながら結構便利に活用できる機能だ。

 内部ディスプレイを閉じた時のカバーディスプレイの挙動にも変更点がある。

 従来は、内部ディスプレイを開いてアプリ利用中に内部ディスプレイを閉じるとロック状態に移行し、カバーディスプレイでアプリを継続利用するには再度ログオンしなければならなかった。

 それに対しPixel 9 Pro Foldでは、設定メニューの「ディスプレイ」項目に「折りたたみ時もアプリ使用を継続」という設定項目が追加された。たたむとカバーディスプレイが起動してアプリを継続利用できる「常時」、たたんでカバーディスプレイを上スワイプするとアプリを継続利用できる「上にスワイプして継続」、従来同様にたたむとロック状態となる「継続しない」の3つから動作を選択できるようになった。こちらも、利便性を高める新機能と感じた。

■ 背面カメラの仕様はPixel Fold同等以上Pixel 9 Pro/Pro XL未満

 背面カメラは、Pixel 9 Pro Foldと銘打っていることからも、Pixel 9 Pro/Pro XL相当を期待してしまうが、残念ながら仕様は異なっている。

 広角カメラは、1/2型4,800万画素Quad PDセンサーに、F値1.7、画角82度のレンズの組み合わせで、Pixel Foldと同じだ。

 超広角カメラは、1/3.4型1,050万画素Dual PDセンサーに、F値2.2、画角127度のレンズの組み合わせ。レンズの画角が広くなったが、センサーはわずかに小さくなった。ただ、新たにオートフォーカスとマクロ撮影に対応しており、ピントの合焦精度が高まり、マクロ撮影による撮影の幅が広がっている。

 望遠カメラは、1/3.2型1,080万画素Dual PDセンサーに、F値3.1、画角23度の屈曲光学系5倍望遠レンズの組み合わせ。センサーサイズがわずかに小さくなり、レンズの仕様も変わっているが、光学5倍で超解像デジタルズームが最大20倍という点は従来同様。ただ、新たにマルチゾーンLDAFに対応したことで、オートフォーカス性能が向上しているという。

 このように、背面カメラの仕様はPixel Fold同等以上Pixel 9 Pro/Pro XL未満と言っていいだろう。Pixel 9 Pro/Pro XL同等の背面カメラを搭載していない点は正直残念だ。

 また、背面カメラのレンズの並びも変わっており、上に広角、下に超広角と5倍望遠と、上下2段に分けて搭載する形になった。そのため、カメラバーも縦に長くやや片側に寄った形状となっており、ほかのPixel 9シリーズとは異なる印象を受ける。

 以下に、各レンズおよびデジタルズームを使って撮影した写真を掲載する。同じ場所でPixel 9 Proで撮影した写真も比較として掲載するが、大きく拡大しない限り、大きな違いは感じられない。まずまずの品質で撮影できると言っていいだろう。

□各レンズとデジタルズームの作例

 カメラアプリのUIは、Pixel 9シリーズとほぼ同等。Pixel 9 Pro/Pro XL同様に、静止画撮影時にはプロモードも選択でき、使用するレンズを指定したりRAWデータの保存が可能だが、5,000万画素での撮影はできない。

 撮影機能もPixel 9シリーズとほぼ同じで、新たに追加された「一緒に写る」や、UIを一新したパノラマ撮影なども利用可能だ。

 そのうえで、Pixel Fold同様に、折りたたみ式スマートフォンならではの撮影機能を用意。内部ディスプレイを折った状態で利用する「テーブルトップカメラ」モードや、手をかざすジェスチャーでシャッターを切る「手のひらタイマー」、カバーディスプレイを利用し背面カメラでセルフィー撮影を行なう「背面カメラセルフィー」などは引き続き利用可能だ。

 そして、Pixel 9 Pro Foldで追加された新たな撮影機能が「こっちを見て」だ。子どもを撮影する時などに、子どもの気を引いてカメラの方を見てもらえるように、カバーディスプレイにアニメーションを表示し音も鳴らすという機能。他のことに夢中になりがちな子どもを撮影するときに便利に活用できそうだが、用意されているアニメーションがアメコミっぽいものばかりという点は少々気になった。

 動画撮影機能としては、AIが色彩、明るさ、手ぶれを補正する「動画ブースト」や、夜景などでも美しい動画を撮影できる「ビデオ夜景モード」に対応。また、新たに24fpsでの動画撮影をサポート。Pixel Foldでは利用できなかった「音声消しゴムマジック」も利用可能となった。ただし、動画ブーストでの8K動画撮影には対応していない。

■ 前面カメラは強化され、内部ディスプレイ側前面カメラでも顔認証が可能に

 前面カメラは、Pixel Fold同様にカバーディスプレイ側と内部ディスプレイ側の双方に搭載している。この2つの前面カメラの仕様はどちらも同じで、1,000万画素Dual PDセンサーに、F値2.2、画角87度のレンズの組み合わせとなる。Pixel Foldと比べると、撮像素子が強化され、より広角の撮影が可能となっている。

 ところで、Pixel Foldでは前面カメラを利用した顔認証はカバーディスプレイ側のみで、内部ディスプレイ側では利用できなかった。しかしPixel 9 Pro Foldでは、どちらの前面カメラでも顔認証が利用可能となった。これは、双方とも撮像素子にDual PDセンサーを採用したからと考えられるが、内部ディスプレイを開いた状態でも顔認証が利用可能になったことで、利便性が大きく高まったと感じる。

 もちろんこの顔認証は、ロック解除だけでなく、アプリログインや決済認証などにも利用可能だ。

■ 基本スペックはPixel 9 Pro/Pro XLとほぼ同等

 カメラの仕様はPixel 9 Pro/Pro XLとは異なっているものの、搭載SoCやRAMなどハードウェア的な仕様はほぼ同じだ。

 SoCにGoogle DeepMindと共同設計したGoogle独自SoC「Tensor」の第4世代モデルとなる「Tensor G4」を搭載。RAMは標準で16GBと、こちらもPixel 9 Pro/Pro XLと同じだ。内蔵ストレージ容量は256GBまたは512GBで、128GBモデルが用意されない点は従来同様。外部メモリのmicroSDが利用できない点も変わっていない。

 モバイル通信は5G mmWave、5G Sub6に対応。無線LANはWi-Fi 7(IEEE 802.11be、2×2+2×2 MIMO)に、BluetoothはBluetooth 5.3にそれぞれ対応。

 生体認証機能は、前面カメラを利用した顔認証と電源ボタン一体型センサーを利用した指紋認証に対応。顔認証は、先ほど紹介したように2つの前面カメラの双方で利用できる。

 ポートは、下部側面にUSB 3.2 Gen2準拠USB Type-Cを用意し、オーディオジャックは非搭載。物理SIMカード用トレイは下部側面に配置し、nanoSIMを1枚装着可能。物理ボタン、右側面に上から指紋センサー一体型電源ボタン、ボリュームボタンが並ぶ。

 センサー類は、近接センサー、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、磁力センサー、気圧センサーを搭載。Pixel 9 Pro/Pro XLに搭載の温度センサーは非搭載。NFC/FeliCa搭載で、おサイフケータイもサポート。NFC/FeliCaのアンテナは背面のGマーク付近に搭載する。

 防水性能はIPX8準拠で、防塵性能が非公開となっている点はPixel Foldと同じ。折りたたみ式ということでヒンジが存在することから、防塵性能を高めるのは難しいのだろう。

 バッテリ容量は、最小4,560mAh、標準4,650mAhで、24時間以上の駆動、スーパーバッテリーセーバー利用時に最長72時間の駆動が可能。また、別売のGoogle 45W USB-C充電器を利用すると、数分で数時間分の急速充電が可能。

 ただし、Qi準拠のワイヤレス充電にも対応しているが、充電コイルの搭載位置が他のPixelシリーズと異なっているそうで、別売のワイヤレス充電器「Pixel Stand」や「Pixel Stand(第2世代)」を利用した充電は行なえない。実際にPixel Stand(第2世代)で試したところ、確かにそのまま置いても充電は始まらなかった。本体を1cmほど上にずらすと充電が始まったため、他のPixelシリーズよりも充電コイルが1cmほど下にずらして内蔵していると考えられる。

 おそらく、本体を薄くしたことで充電コイルの搭載位置を変更するしかなかったからと思われるが、やはり純正ワイヤレス充電器が利用できないのは残念だ、Pixel 9 Pro Foldでワイヤレス充電を活用したいと考えているなら、平置き型の充電器を利用するようにしたい。

 パッケージの付属品は、USB 2.0準拠のUSB Type-Cケーブルとインストラクションカード、SIMピンが付属。従来まで付属していたUSB Type-A Type-C変換コネクタは、Pixel 9 Pro Foldも省かれている。

 搭載OSはAndroid 14で、アップデート期間はセキュリティアップデート、OSアップデートともに7年間となる。

■ AI関連の機能もPixel 9 Pro/Pro XL同等

 Pixel 9シリーズでは、AI処理に最適化した最新独自SoCであるTensor G4を採用することで、新たなAI機能が多く搭載されている。それはPixel 9 Pro Foldについても同様だ。

 紹介してきたように、新しい撮影機能の「一緒に写る」や動画ブーストを搭載するとともに、編集マジックに追加された新しい写真編集機能の「オートフレーム」も利用できる。

 また、スマートフォン上でテキストや画像、音声を理解できるマルチモダリティを備える「Gemini Nano」も、もちろん利用できる。

 AI関連機能については、こちらの記事で紹介している通りなので本稿では割愛するが、Tensor G4によりAI機能をこれまで以上に快適に利用できるという点は、ほかのPixel 9シリーズ同様、Pixel 9 Pro Foldの大きな魅力となるだろう。同時に、それらAI機能の多くはPixel Foldでは利用できないことを考えても、進化の度合いは大きいと言える。

■ カメラ周りはもう少し頑張って欲しかった

 今回の試用機は、発売前の評価機ということもあって、ベンチマークテストなどは行なっていない。ただ、実際にいろいろなアプリを利用したり、AI機能を利用してみると、快適さや便利さを十分に実感できた。SoCの性能という点では、他のPixel 9シリーズ同様、競合のフラグシップSoC搭載スマートフォンに敵わない部分もありそうだが、高負荷なゲームをトップクラスの快適さでプレイしたいという場合を除いて、大きな不満を感じる場面はそれほどないはずだ。

 ただ、折りたたみ式スマートフォンとしては、依然として他の競合製品と大きな違いがあるとは感じない。Pixel Foldは、たたんて縦長ディスプレイ、開いて横長ディスプレイという独特な仕様だったことで、ほかとは違う使い勝手を実現している部分もあったが、その点もディスプレイのアスペクト比が変更されたことで競合製品に近付いており、ますます差がなくなった印象だ。

 AI関連機能はPixelならではの魅力であり、Pixelでしか利用できない機能も多い。ただ、近年のSamsungとGoogleの関係性強化により、Samsung製スマートフォンのほうに先に搭載される場合もあり、そういった点でも差がなくなりつつある。

 そうなると、やはりPixel 9 Pro Foldならではの魅力がもう少し欲しいところだ。たとえば、Pixel 9 Pro/Pro XLと同じ背面カメラを搭載するだけでも魅力が大きく変わったはずで、そこは頑張ってもらいたかったように思う。

 直販価格は25万7,500円からと、おいそれと手を出せる製品ではない。折りたたみ式という仕様からも、Pixel Fold同様にニッチな位置付けの製品となるし、広くお勧めもしづらい。そうはいっても、Googleが用意する折りたたみ式スマートフォンのリファレンスという位置付けは変わらない。それだけに、GoogleにはPixel 9 Pro Fold独自の機能や体験を、より充実させてもらいたい。それによって、Pixel 9 Pro Foldの位置付けや魅力も変わっていくはずだ。

 今回のPixel 9シリーズ4モデルの中では、冒頭で紹介したPixel 9 Proがやはりイチオシだ。また、コストパフォーマンス重視なら迷わずPixel 9を選ぶといいだろう。残るPixel 9 Pro XLとPixel 9 Pro Foldは、それら2モデルに比べると手を出しにくいモデルと言わざるを得ない。それでも、双方とも実機を触ってみると印象が変わる場合もあるはずだ。そのため、Pixel 9シリーズでどれを買うべきか迷っているなら、焦って購入せずに、家電量販店などで実機を触ったうえで決めることをお勧めする。