双日、農業プラットフォーム事業を強化--AIによる衛星画像を活用

AI要約

双日は2021年度から開始した中期経営計画の一環として、タイに新会社Sojitz Kaset Dee Xを設立し、農業プラットフォーム強化を目指すと発表した。

双日はデジタル化を経営戦略の柱と位置づけ、従業員教育やAI活用などの取り組みを進めている。2026年までに人材育成やデジタルツイン技術を展開する予定。

同社はアグリプラットフォーム事業にも参入し、タイのキャッサバ生産量向上を目指す。また、衛星画像の分析を活用した農業支援も計画している。

双日、農業プラットフォーム事業を強化--AIによる衛星画像を活用

 双日は8月29日、2021年度から開始した「中期経営計画 2023」と2024年5月1日に発表した「中期経営計画 2026」の一環として、タイに「Sojitz Kaset Dee X」を設立し、さくらインターネットの協力を得て、タイの農業プラットフォーム強化を目指すと発表した。また、子会社の双日ツナファーム鷹島がAIによる衛星画像を活用した共同研究を行う。

 双日 取締役 専務執行役員 最高デジタル責任者(CDO)兼 最高情報責任者(CIO)兼 デジタル推進担当本部長の荒川朋美氏は、中期経営計画 2026について「デジタル化の一丁目一番地として、全社でデータやテクノロジーを活用すると経営戦略の柱としている」と述べながら、デジタルを推進するプロジェクトを継続的に進めると説明した。

 同社の中期経営計画 2026は、同社IT事業会社である双日エテックイノベーションとさくらインターネットの協力によって、デジタル戦略を推進している。同社が「Digital in All」とキーワード化した取り組みでは、DXを推進する従業員向け教育としてビジネスアーキテクチャーを2025年3月に新設。人材育成を目的とした基盤強化を行い、2027年3月までに全総合職の10%(約200人)、エキスパート人材を10%(約200人)増を目指すという。

 一連の取り組みから生まれたプロジェクトが3つある。1つは、いけすを丸ごとデジタル空間で再現するデジタルツイン。養殖事業における課題としていけす内にいる魚の尾数カウントを実現するため、マグロのいけすを丸ごとデジタル空間で再現し、継続的なAIトレーニングで現在は目標の精度95%を達成した。

 もう1つはタイ農業のデジタル化を目指すアグリプラットフォーム事業に参入するため、現地にSojitz Kaset Dee Xを2024年5月に設立。事前にパートナー企業として協力を得たDegasと共に、同国における「サトウキビ」「コメ」に次ぐ生産高第3位となる「キャッサバ」の収穫量と品質向上に向けた連携を推進する。

 2023年度までに110万農家データの獲得を目指しつつ、土壌成分値や薬害非感染地の把握などを通じて、作物加工企業や農業機材企業を支援する予定だ。現時点では実証実験段階だが、荒川氏は「空間モデルを用いて農業のみならず、都市管理やインフラストラクチャーの管理にも活用していく」と述べながら、来年度には具体的な数値発表を行いつつ、今後の展開予定を説明した。

 最後は前述したDegasへ出資し、アフリカなどで衛星画像の分析による気候予測や災害予測、農業に関するデータを掛け合わせた穀物収穫量予測などへの活用を目指す。ここでもさくらインターネットのGPUクラウドサービスを活用する。こちらもDegasによる衛星画像分析に特化した生成AI基盤モデルとGPUクラウドを活用し、ガーナで生産物の一部が現物返済される農家支援を展開していく予定だ。いずれもDegasとさくらインターネットの協力が下支えとなっているという。