注目の「Ryzen 9 9950X」はどこまで速くなる?Core i9-14900Kとガチ勝負

AI要約

AMDの新世代デスクトップ向けCPU「Ryzen 9000」シリーズの上位モデル、Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xが8月16日に発売される。

今回も発売前に両CPUをテストする機会を得られたので、従来モデルであるRyzen 9 7950XおよびRyzen 7 7800X3D、そしてIntelのCore i9-14900Kとの比較を通して、Ryzen 9000シリーズ上位モデルの実力を確認してみた。

Zen 5世代のCCDを2基搭載するハイエンドモデルのRyzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xは、多くのCPUコアを搭載しており、前世代よりもコアあたりの性能が向上している。

注目の「Ryzen 9 9950X」はどこまで速くなる?Core i9-14900Kとガチ勝負

 AMDの新世代デスクトップ向けCPU「Ryzen 9000」シリーズの上位モデル、Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xが8月16日に発売される。

 今回も発売前に両CPUをテストする機会を得られたので、従来モデルであるRyzen 9 7950XおよびRyzen 7 7800X3D、そしてIntelのCore i9-14900Kとの比較を通して、Ryzen 9000シリーズ上位モデルの実力を確認してみた。

■ Zen 5世代のCCDを2基搭載するハイエンドモデル

 8月16日に発売されるRyzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xは、Zen 5アーキテクチャを採用するRyzen 9000シリーズに属するハイエンドCPUで、先だって発売されたRyzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xの上位モデルである。対応CPUソケットはSocket AM5。

 Ryzen 9ブランドを冠する両製品は、2基のCPUダイ(CCD)を実装することで多くのCPUコアを搭載しており、最上位のRyzen 9 9950Xは16コア/32スレッドCPU(8コアCCD×2基)で、Ryzen 9 9900Xは12コア/24スレッドCPU(6コアCCD×2基)だ。

 これらのCPUに搭載されているCCDは下位のRyzen 7などとも共通のもので、Zen 5アーキテクチャに基づきTSMC 4nm FinFETプロセスで製造されている。このCCDは最大8基のCPUコアと32MBのL3キャッシュを備えており、Ryzen 9 9900XやRyzen 5 9600Xでは2基のCPUコアを無効化したCCDが利用されている。

 I/Oダイ(IOD)の機能に関しては下位のRyzen 7 9700Xなどと同等で、DDR5-5600対応のメモリコントローラやRDNA 2ベースの内蔵GPU、合計28レーンのPCIe 5.0などを備えている。

 新世代Ryzen 9のスペックで注目したいのがTDPおよび電力リミットのPPTで、前世代のRyzen 7000シリーズにおける同格のCPUであるRyzen 9 7950XとRyzen 7 7900Xでは「TDP=170W、PPT=230W」に設定されていたが、Ryzen 9 9900XはTDPが120Wに引き下げられており、これに伴いPPTも162Wに低下した。Ryzen 9 9950XはTDPこそ従来と同じ170Wだが、PPTに関しては30W低い200Wに変更されている。これらの変更がパフォーマンスや温度にどのように影響するのかにも注目だ。

■ テスト環境と比較用CPU

 Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xの比較用CPUには、Zen 4アーキテクチャを採用するRyzen 7000シリーズの16コア/32スレッドCPU「Ryzen 9 7950X」と、現在最強のゲーミングCPUの1つとして知られるZen 4世代の8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 7800X3D」、Intelの24コア/32スレッドCPU「Core i9-14900K」を用意した。

 Socket AM5対応CPUに関しては、X670Eチップセットを搭載するSocket AM5対応マザーボード「ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO」に搭載。BIOSはレビュアー向けに提供されている「v2201」を使用し、メモリはJEDEC準拠のスタンダードメモリを各CPUの最大対応メモリクロックに設定して使用する。

 なお、前回Ryzen 7 9700Xなどをテストした際、DDR5-5600メモリを搭載したRyzen 9000シリーズのメモリコントローラがメモリクロックの半分の速度で動作するという挙動となっていることを確認していたが、これはRyzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xでも同様だ。念のため、ASUSが公開している別バージョンのBIOS「v2204」でも確認したが、挙動に変化はなかったため今回もデフォルト設定のままでテストを行なった。

 また、Core i9-14900Kのテスト環境については、マザーボードの「ASRock Z790 Steel Legend WiFi」に過電圧を修正する最新マイクロコード「0x129」を導入したBIOS「v17.01」を導入。Intel Default SettingsおよびExtreme Power Delivery Profileに準拠したリミット設定でテストを行なった。

 そのほかの機材や条件については以下の表のとおり。

■ ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは、「Cinebench 2024」、「Cinebench R23」、「3DMark」、「Blender Benchmark」、「やねうら王」、「Adobe Camera Raw」、「DaVinci Resolve 18」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra 20/21」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 5」、「オーバーウォッチ 2」、「フォートナイト」、「エーペックスレジェンズ」、「サイバーパンク2077」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」、「Microsoft Flight Simulator」。

 なお、今回のテスト後にAMDより、Ryzen 9 9950XおよびRyzen 9 9900Xには「AMD PPM Provisioning File Driver」によるWindowsゲームモードのコアパーキング最適化が適用されることと、この最適化が検証環境のCPUを変更した場合に正しく適用されず、異常に低いパフォーマンスになる可能性があるとの情報がもたらされた。

 本来であればこれが正しく機能していることを確認すべきところなのだが、情報を得た時点で再検証が不可能な状況であったため、今回はゲーム系ベンチマークの結果は参考値として参照してもらいたい。

□Cinebench 2024

 Cinebench 2024では、CPU性能を計測する「CPU (Multi Core)」と「CPU (Single Core)」を実行した。

 マルチスレッド性能を計測するCPU (Multi Core)では、Ryzen 9 9950Xが全体ベストの「2,122」を記録。このスコアはCore i9-14900Kの「2,119」とほぼ互角で、Ryzen 9 9900Xを約28%、Ryzen 9 7950Xを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約100%上回った。

 シングルスレッド性能を計測するCPU (Single Core)でも、「134」を記録したRyzen 9 9950Xが全体ベストで、Ryzen 9 9900Xを約1%、Ryzen 9 7950Xを約12%、Ryzen 7 7800X3Dを約20%、Core i9-14900Kを約2%上回った。

□Cinebench R23

 Cinebench R23では、マルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」でRyzen 9 9950Xが全体ベストの「42,608」を記録し、Ryzen 9 9900Xを約28%、Ryzen 9 7950Xを約12%、Ryzen 7 7800X3Dを約125%、Core i9-14900Kを約14%上回った。

 「CPU (Single Core)」での全体ベストは「2,324」を記録したCore i9-14900K。Ryzen 9 9950Xはそれに次ぐ「2,272」を記録し、Ryzen 9 9900Xを約2%、Ryzen 9 7950Xを約13%、Ryzen 7 7800X3Dを約26%上回った。

□3DMark「CPU Profile」

 3DMarkのCPUベンチマーク「CPU Profile」は、CPU性能をスレッド数毎に計測するベンチマークテスト。

 ここではRyzen 9 9950Xがすべて条件で全体ベストを記録しており、Ryzen 9 9900Xを1~31%、Ryzen 9 7950Xを4~17%、Ryzen 7 7800X3Dを33~111%、Core i9-14900Kを3~44%上回った。

 特に注目したいのは8スレッド以下のスコアで、各CPUのコア当たりの性能が問われるこの条件でRyzen 9 9950XはRyzen 7 7950Xを16~17%も上回り、コア当たりの性能に優れるPコアを8基備えるCore i9-14900Kを約3%上回っている。Zen 5アーキテクチャを採用したRyzen 9000シリーズで、コアあたりの性能が大きく進化したことを示す結果だ。

□Blender Benchmark

 Blender Benchmarkでは、CPUテストを実行してレンダリング速度(Samples per Minutes)を計測した。

 マルチスレッド性能が問われるこのテストにおいて全体ベストを獲得したRyzen 9 9950Xは、Ryzen 9 9900Xを32~33%、Ryzen 9 7950Xを12~13%、Ryzen 7 7800X3Dを126~137%、Core i9-14900Kを22~30%上回った。

□やねうら王

 将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。

 マルチスレッドテストでは、Ryzen 9 9950Xが全体ベストの「39,150kNPS」を記録し、Ryzen 9 9900Xを約29%、Ryzen 9 7950Xを約8%、Ryzen 7 7800X3Dを約130%、Core i9-14900Kを約22%上回った。

 一方、シングルスレッドテストで全体ベストを記録したのはRyzen 9 9900Xの「2,160kNPS」で、Ryzen 9 9950Xはほぼ同等の「2,145kNPS」だった。Ryzen 9 9900XはRyzen 9 7950Xを約12%、Ryzen 7 7800X3Dを約21%上回っている。

□Adobe Camera Raw「RAW現像」

 Adobe Camera Rawにて、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル100枚をJPEGファイルに現像するのに掛かった時間を測定。その処理速度(fps)を比較した。

 全体ベストはCore i9-14900Kの「5.03fps」で、次点はそれを約4%下回る「4.89fps」を記録したRyzen 9 9900X、Ryzen 9 9950XはRyzen 9 9900Xとほぼ同等の「4.87fps」で全体3番手だった。このRyzen 9 9950Xの速度は、Ryzen 9 7950Xを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約10%上回っている。

□DaVinci Resolve 18

 DaVinci Resolve 18では、カメラで撮影した2160p60(4K60p)動画を素材として作成した約60秒の動画を、YouTube向けプリセットで1080p60と2160p60に書き出した際の処理速度を計測した。

 ここではCore i9-14900Kが最速を記録しており、次点となったRyzen 9 9950Xの処理速度はCore i9-14900Kを9~18%下回り、Ryzen 9 9900Xを5~9%、Ryzen 9 7950Xを5~9%、Ryzen 7 7800X3Dを31~49%上回った。

□HandBrake

 HandBrakeでは、約60秒の2160p60(4K60p)動画を「Creator」プリセットで1080pと2160pにエンコードした際の速度を計測した。

 Ryzen 9 9950Xは1080pと2160pの両方で最速を記録しており、Ryzen 9 9900Xを18~24%、Ryzen 9 7950Xを5~9%、Ryzen 7 7800X3Dを77~82%、Core i9-14900Kを14~16%上回った。

□TMPGEnc Video Mastering Works 7

 TMPGEnc Video Mastering Works 7では、ソフトウェアエンコーダのx264とx265を使用して、約60秒の2160p60(4K60p)動画を1080pと2160pにエンコードした際の速度を計測した。

 x264を用いたH.264形式へのエンコードでは、Ryzen 9 9950Xが1080pへのエンコードでRyzen 9 7950Xを約2%、Core i9-14900Kを約7%下回り全体3番手となっているが、2160pへのエンコードでは逆にRyzen 9 7950Xを約1%、Core i9-14900Kを約2%上回って全体ベストを記録した。また、Ryzen 9 9950XはRyzen 9 9900Xを4~19%、Ryzen 7 7800X3Dを26~85%上回っている。

 x265を用いたH.265形式へのエンコードでは、1080pと2160pの両方でRyzen 9 9950Xが全体ベストを記録。Ryzen 9 9900Xを8~26%、Ryzen 9 7950Xを7~8%、Ryzen 7 7800X3Dを45~108%、Core i9-14900Kを19~21%上回った。

□PCMark 10

 PCMark 10では、もっともテスト項目の多い「PCMark 10 Extended」でスコアを計測した。

 Ryzen 9 9950Xの総合スコア(PCMark 10 Score)は「14,750」で全体ベストを記録。Ryzen 9 9900Xを約2%、Ryzen 9 7950Xを約3%、Ryzen 7 7800X3Dを約10%、Core i9-14900Kを約4%上回った。

□SiSoftware Sandra 20/21「CPUベンチマーク」

 SiSoftware Sandra 20/21のCPUテストから、「プロセッサの性能」と「マルチメディア処理」の結果を紹介する。

 CPUの演算性能を計測する「プロセッサの性能」において、全体ベストを記録したのはRyzen 9 9950Xで、Ryzen 9 9900Xを30~31%、Ryzen 9 7950Xを3~6%、Ryzen 7 7800X3Dを126~137%、Core i9-14900Kを1~41%上回った。

 「マルチメディア処理」ではAVX-512のスループットを最大2倍に引き上げたというZen 5の恩恵により、Ryzen 9 9950Xがほかを大きく引き離して全体ベストを記録。Ryzen 9 9900Xを23~33%、Ryzen 9 7950Xを40~98%、Ryzen 7 7800X3Dを203~316%、Core i9-14900Kを133~244%上回った。

 ここではRyzen 9 9900XもRyzen 9 9950Xに次ぐ全体2番手となっており、AVX-512を多様する処理では前世代や14世代Coreに対して大きなアドバンテージが得られる可能性を示している。

□SiSoftware Sandra 20/21「メモリベンチマーク」

 SiSoftware Sandra 20/21で、メインメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフだ。

 DDR5-5600メモリを搭載するRyzen 9 9950Xのメモリ帯域幅は「52.27GB/s」で、DDR5-5200メモリを搭載するRyzen 9 7950Xの「49.48GB/s」を約6%上回り、同じDDR5-5600メモリを搭載するCore i9-14900Kの「68.90GB/s」約24%下回った。

 Ryzen 9 9950Xのメモリレイテンシは「79.9ナノ秒」で、Ryzen 9 7950Xの「69.6ナノ秒」を約15%上回り、Core i9-14900Kの「89.3ナノ秒」を約11%下回った。レイテンシの増加にはメモリコントローラのクロック(UCLK)がメモリクロック(MCLK)の半分の速度で動作していることや、インターコネクトであるInfinity Fabricのクロック(FCLK)がやや低速であることが影響しているものと考えられる。

□SiSoftware Sandra 20/21「キャッシュベンチマーク」

 CPUが内蔵するキャッシュのレイテンシや帯域幅を測定した結果が以下のグラフだ。

 Ryzen 9 9950XのL1/L2キャッシュは、コア数が同じRyzen 9 7950Xを大きく上回る帯域幅を実現している。これはL1/L2キャッシュの帯域幅を最大2倍に引き上げるZen 5アーキテクチャの改良によるものだ。

 レイテンシの計測結果では、L3キャッシュ領域(主に16~32MB)のレイテンシも低下している。これはRyzen 7 9700Xなどでも確認されていたもので、Zen 5ではキャッシュの性能が全体的に向上していることが分かる。

□3DMark

 3DMarkでは「Speed Way」、「Steel Nomad」、「Port Royal」、「Solar Bay」、「Wild Life」を実行した。

 3DMarkではスコアが横並びとなっているテストがほとんどで、明確なスコア差が生じたのはGPU負荷が低いWild Life(無印)のみだ。

 Wild Lifeで全体ベストを記録したのは「159,646」を記録したCore i9-14900Kで、次点のRyzen 9 9950XはCore i9-14900Kを約13%下回り、Ryzen 9 9900Xを約11%、Ryzen 9 7950Xを約1%、Ryzen 7 7800X3Dを約4%上回った。

 ここでRyzen 9 9900Xが最下位に沈んでいる要因については、以前にもRyzen 9 7900Xが今一つ振るわない結果となっていたことから、2CCD構成による12コア/24スレッドCPUとテストの相性が悪いとも考えられるが、先に紹介したコアパーキング最適化の影響可能性もある。以降に紹介する、ゲーム系ベンチマークの結果についても、コアパーキング最適化が適切に機能していない可能性を考慮したうえで参照してもらいたい。

□ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度でスコアと平均フレームレートを計測した。なお動的解像度(DLSS/FSR)については無効にしている。

 4K/2160pはGPU性能がボトルネックとなって横並びのスコアとなっている一方、WQHD/1440p以下では3D V-Cacheにより96MBの大容量L3キャッシュを備えるRyzen 7 7800X3Dが傑出したスコアで全体ベストを獲得し、2番手はL2キャッシュの多いCore i9-14900Kが続いている。Ryzen 9 9950XはRyzen 7 7800X3Dを16~20%、Core i9-14900Kを9~10%下回る全体3番手で、Ryzen 9 9900Xを2~3%、Ryzen 9 7950Xを0.4~2%上回った。

□FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「高品質」に設定して、3つの画面解像度でスコアと平均フレームレートを計測した。

 CPUの性能差がスコアに反映されているのはWQHD/1440p以下で、ここではRyzen 7 7800X3Dが全体ベストを記録し、Core i9-14900Kがそれに続いている。Ryzen 9 9900XおよびRyzen 9 7950Xとほぼ同等のスコアを記録したRyzen 9 9950Xは、Ryzen 7 7800X3Dを5~9%、Core i9-14900Kを3~8%下回った。

□Forza Horizon 5

 Forza Horizon 5ではゲーム内ベンチマークモードを使用して、グラフィックプリセット「エクストリーム」で3つの画面解像度をテストしたほか、フルHD/1080pでグラフィックプリセットを「中」に落とした高fps設定でのテストを行なった。

 グラフィックプリセット「エクストリーム」のWQHD/1440p以上はほぼ横並びの結果となっており、フルHD/1080pではRyzen 9 7950Xと同じ平均189fpsを記録したRyzen 9 9950Xが、全体ベストのRyzen 7 7800X3Dを約4%、Core i9-14900Kを約2%下回り、Ryzen 9 9900Xを約2%上回った。

 高fps設定では、Ryzen 9 9950Xが全体3番手となる平均275fpsを記録しており、全体ベストのRyzen 7 7800X3Dを約12%、Core i9-14900Kを約1%下回り、Ryzen 9 9900Xを約8%、Ryzen 9 7950Xを約2%上回った。

□オーバーウォッチ 2

 オーバーウォッチ 2では、グラフィックプリセットを「エピック」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のレンダースケールは100%で、最大フレームレートは600fps。

 ここでは、Ryzen 7 7800X3DがフルHD/1080pでRyzen 9 9950Xを約5%上回っていることを除けば、フレームレートに大きな差はついていない。

□フォートナイト

 フォートナイトでは、NaniteおよびLumenを無効にした上でグラフィックプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックプリセットを「中」に落とした高fps設定での計測も行なった。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は全条件で100%に設定している。

 グラフィックプリセット「最高」では、Ryzen 9 9950XはRyzen 9 7950Xとほぼ同程度の平均フレームレートを記録。CPUの性能差がある程度反映されているフルHD/1080pではRyzen 9 9900Xを約8%上回ったが、Ryzen 7 7800X3Dを約4%、Core i9-14900Kを約3%下回った。

 高fps設定でのRyzen 9 9950Xは、全体ベストを記録したRyzen 7 7800X3Dを約18%、Core i9-14900Kを約9%、Ryzen 9 7950Xを約4%下回る全体4番手となっており、Ryzen 9 9900Xはそれをさらに約10%下回っている。

□エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、グラフィック設定をできる限り高く設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 11で、最大フレームレートは300fps。

 ここではすべての画面解像度で各CPUの平均フレームレートがほぼ横並びとなっている。いずれのCPUもGeForce RTX 4080の性能を十分に引き出せていると言える結果だ。

□サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。なお、テスト時はGeForce RTX 4080がサポートするDLSS 3のフレーム生成を有効化しているほか、DLSS超解像のプリセットをフルHD/1080pとWQHD/1440pで「クオリティ」、4K/2160pで「パフォーマンス」に設定している。

 4K/2160pでCore i9-14900Kがやや低いフレームレートを記録していることを除けば、WQHD/1440p以上では横並びと言って差し支えないフレームレートとなっている。

 フルHD/1080pではCPUの性能差が結果に反映されており、Ryzen 9 9950Xは全体ベストのRyzen 7 7800X3Dを約8%、Core i9-14900Kを約7%、Ryzen 9 7950Xを約3%下回る全体4番手の平均フレームレートとなっている。そのRyzen 9 9950XはRyzen 9 9900Xを約4%上回った。

□モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、グラフィックプリセットを「高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。

 4K/2160pの結果は横並びとなっているが、WQHD/1440p以下ではRyzen 7 7800X3DとCore i9-14900Kが270fpsを超える平均フレームレートで拮抗しており、そこからやや離れた243fps前後を記録したRyzen 9 7950Xが全体3番手につけている。

 WQHD/1440p以下でのRyzen 9 9950XはRyzen 9 7950Xを3~5%下回る全体4番手となっており、Ryzen 9 9900Xを3~7%上回った。

□Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorでは、グラフィックプリセットを「ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックプリセットを「ミドル」に落とした高fps設定でも平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、アンチエイリアスを「DLSS/DLAA」、DLSSフレーム生成を「有効」に設定している。

 3D V-Cacheの効果が大きいMicrosoft Flight Simulatorでは、グラフィックプリセット「ウルトラ」のWQHD/1440p以下でRyzen 7 7800X3Dが傑出したフレームレートを記録している一方、Ryzen 9 9950XはRyzen 9 9900XやRyzen 9 7950Xとほぼ横並びの結果となっており、WQHD/1440p以下ではRyzen 7 7800X3Dを24~26%、Core i9-14900Kを9~7%下回った。

 高fps設定では、Ryzen 7 7800X3Dが全体ベストの「255.1fps」を記録しており、Ryzen 9 9950Xはそれを約24%下回る「194.4fps」で、全体2番手のCore i9-14900Kと僅差の3番手となっている。また、Ryzen 9 9950Xは、Ryzen 9 9900Xを約2%、Ryzen 9 7950Xを約4%上回った。

■ CPUベンチマーク実行中のシステム消費電力とワットパフォーマンス

 ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力と、CPUベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測した結果を紹介しよう。

 アイドル時消費電力は、Ryzen 9 9950Xが82.7W、Ryzen 9 9900Xは82.3Wを記録した。これはRyzen 9 7950Xの92.3WやRyzen 7 7800X3Dの89.4Wより低い数値となっているが、メモリコントローラのクロックが低いことも多少影響している。なお、アイドル時消費電力がもっとも低かったのはCore i9-14900Kの69.6Wだった。

 CPUベンチマーク実行中の平均消費電力はRyzen 9 9950Xが313.2~350.1W、Ryzen 9 9900Xが282.3~290.7W。Ryzen 9 9950Xの消費電力はRyzen 9 7950X(305.9~375.1W)に近いものとなっており、すべてのテストで最大を記録したCore i9-14900Kの395.0~440.5Wより90W近く低い消費電力となっている。

 ベンチマークスコアをシステムの平均消費電力で割ることで求めた「ワットパフォーマンス」を、Ryzen 9 7950Xを基準に指数化したものが以下のグラフだ。

 Ryzen 9 9950XのワットパフォーマンスはRyzen 9 7950X比で105~113%となっており、Ryzen 9 9900Xは同じく100~113%だった。Zen 5の採用で劇的に改善したわけではないが、Ryzen 9 7950X比で75~86%のCore i9-14900Kと比べれば、Zen 5世代のRyzen 9がワットパフォーマンスの高いハイエンドCPUであるのは確かだ。

■ ゲームベンチマーク実行中のシステム消費電力とワットパフォーマンス

 CPUベンチマークと同様に、ゲームベンチマーク実行中の消費電力を計測した結果をまとめたものが以下のグラフだ。

 Ryzen 9 9950Xの平均消費電力は365.0~470.4Wで、Ryzen 9 9900Xは348.2~458.5Wだった。両CPUともRyzen 9 7950Xの389.1~502.3Wを下回っている。ただし、瞬間的な最大消費電力ではRyzen 9 9950XがFINAL FANTASY XVで622.9Wを記録しており、これはCore i9-14900Kの655.2Wに次ぐ2番目に高い消費電力だ。

 ワットパフォーマンスをRyzen 9 7950Xを基準に指数化したものが以下のグラフ。Ryzen 9 9950XのワットパフォーマンスはRyzen 9 7950X比で102~109%、Ryzen 9 9900Xは101~111%を記録した。

■ Cinebench 2024実行中のモニタリングデータ

 HWiNFO64 Proを使って計測したCinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約26℃。

 Ryzen 9 9950XのCPU温度は平均81.7℃(最大83.1℃)で、CPU消費電力は平均199.1W(最大200.2W)を記録。この時のCPUクロックはCCD_0が平均5,305MHz(最大5,524MHz)、CCD_1が平均5,083MHz(最大5,343MHz)となっており、CPU消費電力が200Wに達したことで電力リミットスロットリングが作動している。

 一方、Ryzen 9 9900XのCPU温度は平均77.1℃(最大78.8℃)で、CPU消費電力は平均161.5W(最大162.1W)を記録。CPUクロックはCCD_0が平均5,212MHz(最大5,379MHz)、CCD_1が平均5,263MHz(最大5,340MHz)となっており、こちらもCPU消費電力が162Wに達したことで電力リミットスロットリングが作動している。

 PPTが230Wに設定されているRyzen 9 7950XのCPU消費電力は平均195.9W(最大205.7W)で、電力リミットの作動までにはかなりの余裕が設定されていたのだが、Ryzen 9000シリーズのRyzen 9ではCinebench 2024程度の負荷で上限に達するような電力リミットが設定された形となっている。

■ FF14ベンチマーク実行中のモニタリングデータ

 HWiNFO64 Proを使って計測した「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(フルHD/1080p、最高品質)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約26℃。

 Ryzen 9 9950XのCPU温度は平均60.5℃(最大84.9℃)で、CPU消費電力は平均85.7W(最大200.1W)を記録。CPUクロックはCCD_0が平均5,512MHz(最大5,659MHz)、CCD_1が平均4,303MHz(最大5,258MHz)だった。

 Ryzen 9 9900XのCPU温度は平均53.1℃(最大61.1℃)で、CPU消費電力は平均60.3W(最大73.6W)を記録。CPUクロックはCCD_0が平均5,443MHz(最大5,547MHz)、CCD_1が平均4,412MHz(最大5,340MHz)だった。

 Zen 5世代のRyzen 9はCCD_0を高クロック動作させて処理を集中させる一方で、CCD_1はアイドリング状態となってクロックが低下している様子が確認できる。このような挙動は、Ryzen 9 7950X3Dなどの3D V-CacheをCCD_0にのみ搭載したCPUに対して、Windows ゲームモードのコアパーキング最適化が正常に機能した際のものに類似している。

 Ryzen 9 7950X3Dなどの挙動を踏まえると、Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900XでPPM Provisioning File Driverによるコアパーキングの最適化が正常に機能しているようにも思えるのだが、今回はそれが正式な動作なのかシステムを再セットアップして検証しなおすことができなかったのは残念だ。

■ iGPU使用時のパフォーマンスをチェック

 最後に、Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900XのIODに統合されている内蔵GPU(iGPU)のパフォーマンスをチェックする。

 Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900XのiGPUドライバには、レビュアー向けに提供された「Adrenaline 24.10.24」を使用している。そのほかの機材は以下の通り。

 Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xが備えるiGPU「Radeon Graphics」は、Ryzen 7000シリーズに内蔵されていたものと同じRDNA 2ベースの2コアGPUで、同じiGPUがRyzen 7 9700XやRyzen 5 9600Xにも搭載されている。

 レイトレーシング処理用のRay Acceleratorを備えるRDNA 2ベースのGPUコアであるため、Core i9-14900KのiGPUでは実行不能なレイトレーシングテストの「Port Royal」や「Solar Bay」を実行できるというアドバンテージはあるものの、ゲームで使うことを期待できるほどの性能があるわけではない。

■ コアあたりの性能向上に注目の新世代Ryzen 9

 Ryzen 9 9950Xは、前世代のRyzen 9 7950Xをマルチスレッド性能とシングルスレッド性能の両面で上回っている。特に、引き下げられた電力リミットの影響を受けない中程度の負荷におけるコアあたりの性能は大きく向上しており、そこが強みのCore i9-14900Kと互角以上のパフォーマンスを発揮していた。コアあたりの性能に優れているのはRyzen 9 9900Xも同様で、動画や画像の編集といったすべてのCPUコアを使い切らない作業でも速度の向上が期待できる。

 ゲーミング性能に関しては正確な検証ができていないため評価するのは困難だが、DDR5-6000メモリを使用して検証されたAMDの資料では、Ryzen 9 9950XがRyzen 9 7950Xを上回りCore i9-14900Kに匹敵する性能を発揮していることから、メモリコントローラの設定やコアパーキング最適化次第では、今回のテスト結果よりは高いゲーミング性能が得られる可能性はある。とはいえ、ゲーム用途でベストなCPUでないことも確かなので、ゲーミング性能を重視するのであれば3D V-Cache搭載CPUを検討すべきだろう。

 ともあれ、Ryzen 9 9950XとRyzen 9 9900Xの登場により、Zen 5世代の新世代Ryzenはエントリークラスからハイエンドまで出揃うことになる。これまでIntelに分があったコア当たりの性能が互角以上にまで進化したRyzen 9000シリーズは、より良いCPU性能を求めるユーザーにとって無視できない有力な選択肢となるだろう。