実録! final「学習専用イヤホン」で英語のリスニングテストを受けたら点数は上がるのか?

AI要約

筆者と代表取締役が学習専用イヤホンのリスニングテストに挑戦し、結果を比較。STUDY 1の優れた明瞭さと聴き取りやすさが評価される。

STUDY 1は音楽や動画コンテンツでも十分活躍。シルキーでソフトな音質が楽しめる。エンタメコンテンツでも好評を得る。

価格と性能のバランスが良く、学習効率の向上にも貢献。finalの定番ロングセラーになる可能性もある。

実録! final「学習専用イヤホン」で英語のリスニングテストを受けたら点数は上がるのか?

春の終わり、担当編集者に要件も告げられず呼び出された筆者は、先日移転したばかりの株式会社音元出版新社屋を訪れた。

過去においてこのように呼び出された場合はだいたいにおいて「実際に外を走ってスポーツイヤホンをテストしろ」という無茶振りを食らったものだが、今回は公園ではなく社屋への呼び出しであるからその心配はないだろう。新試聴室を見せびらかしたいとか、そういうかわいい話かもしれない。

担当編集:今日は高橋さんに、ちょっと殺し合……じゃなく英語のリスニングテストをしてもらいます」

新しいパターン!

改めて編集者が言うにはこうだ。

担当編集:finalの「STUDY 1」ってあるじゃないですか、学習専用イヤホンって謳い文句の。「『会話をどれだけ正しく聞き取れたかの正答率』が他社音楽用イヤホンに比べて有意に高いことが統計的仮説検定で確認されました」ってことなんですけど、それってユーザーが体感できて、結果につながるものなんですかね?

ってことで高橋さんにはこれから、普通のイヤホンとSTUDY 1の両方でTOEICリスニングテストに挑戦してもらって、それぞれの獲得点数を比べる実験をしてもらいます。比較対象の普通のイヤホンには、他社音楽用イヤホンではなく、同じfinal製で同価格帯の音楽用イヤホンである「E1000C」を用意しました。これなら基本ポテンシャルはおおよそ同等でしょうから、普通のチューニングと学習用チューニングの違いを見極めるのに適当なはずです。

なるほど企画内容はわかったが、いきなりテストと言われても準備ができていない。恥ずかしすぎない点数を取るためには予習時間が必要だ。ここは何か理由をつけて数日でも試験日を後ろ倒しにせねば……。

高橋:なるほど面白そうですね!でも僕一人が机に向かっていても、テスト会場的な雰囲気に欠けて記事中の写真に面白味が出せないと思うんですよ。そこで提案なのですが、日時を改めて、他にも参加者を募るのはどうでしょう? そう、日時を改めて。

担当編集:ではいま出社してる人の中から見繕ってすぐ引っ張ってくるんで、少し待っていてもらえますか?……連れてきました。

PHILE WEB元編集長が帰ってきたッ!

どこへ行っていたンだッ元編集長!

俺達は君を待っていたッッッ!

株式会社音元出版代表取締役の登場だーッ!

こうなればもはや逃げ場なし。株式会社音元出版代表取締役の風間さんと共に抜き打ちリスニングテスト開始だ。「学生時代、リスニング問題は捨てていた」などと風間さんも言い訳が先行しているが、知ったことではない。TOEICということで、一条莉々華社長にならって「かわいい!ポジティブ!ジーニアス!」の精神で挑戦します。

果たしてSTUDY1を使ったら英語リスニングテストの点数は上がるのか?

■果たしてSTUDY1を使ったら英語リスニングテストの点数は上がるのか?

……という経緯を経て、早速だがテスト内容とその結果がこちら。

<テスト内容>

・TOEIC試験問題集から、会話やナレーションを聞いて設問に解答するリスニングセクションを使用。

・本来は100問を45分で解答するが、今回はその序盤の写真描写問題と応答問題、合計31問を15分で解答。

・そして普通のイヤホンE1000C→学習用イヤホンSTUDY 1でテストに挑戦。慣れが生まれる分だけ後攻の方が有利だが、それも考慮して結果を見ていく。

<テスト結果>

●筆者

 E1000C:17点/31点 → STUDY 1:18点/31点

●代表取締役・風間

 E1000C:16点/31点 → STUDY 1:20点/31点

正直、筆者の方は微妙な結果だ。いやリスニング能力は微妙とかではなく論外なのでそこではなく、後攻の有利もあるのに+1点のみって実質ほぼ変化なしでしょ……というところの微妙さだ。

対して代表取締役・風間さんの、16点から20点、100点満点換算にするとおおよそ52点から65点へという伸びは、STUDY 1の威力の片鱗を感じられる結果。後攻の有利分を少し差し引いても正答率+10%くらいはSTUDY 1によるバフかもしれない。

まとめると「人によってばらつきが出るが、普通のイヤホンと同程度~正答率10%アップくらいのスコアは期待できそう」といったところか。サンプル数が2人だけなので統計として役に立つものではないが、悪くない結果だ。

加えて筆者としては、自身の「リスニングのスコアは同社同価格帯で一般的なチューニングのイヤホンと同程度にとどまった」という結果も、実はポジティブに受け止められる内容かと思う。ここからはその理由を述べていこう。

■「声を聴き取りやすい音質」が学習効率アップにつながる理由とは?

まずそもそもの話として、比較対象としたE1000Cはこの価格帯の定番ロングセラーであり、その実力は折り紙つき。音楽再生においては素直なバランス、リズムのキレ、歌声の明快な発声とさっぱりとした感触などが持ち味だ。

その明快な発声は話し声の聴き取りやすさにもつながり、テスト時にもそれを実感できた。基本ポテンシャルとしても音の傾向としても、英語リスニング用途への適性も十分過ぎるほど備えているイヤホンだ。であれば、そのE1000Cとほぼ同等のスコアをキープしたSTUDY 1の実力も評価に値するだろう。

それを踏まえた上でSTUDY 1の音調について考えてみよう。

そのサウンドはシルキーでソフトで聴き心地がよい。しかしこの音調、快活さや鋭さを活かした音作りと比べると、音の明瞭さ、聴き取りやすさを高めるのは少し難しいはずだ。

しかしその音調でありながら、実際に聴いての感触からもリスニングテストの結果からも、STUDY 1は優秀機E1000Cと同等以上の明瞭さ、聴き取りやすさを備えている。これが「話し声を聴き取りやすくする物理特性に基づいた音響設計」の威力か。

そしてシルキーでソフトで聴き心地のよい音調ということは、使用時間が長くなればなるほど、耳への優しさ、聴き疲れにくさという特長が発揮されてくるはず。例えば大学等のオンライン授業では、90分程度の授業が1日に4コマといったスケジュールもあり得るだろう。聴き疲れにくい本機ならその終盤の授業まで聴き取りやすさ、ひいては学習への集中力も維持できると期待できるわけだ。

考えてみれば本機の謳い文句は「リスニングテスト用イヤホン」ではなく「学習専用イヤホン」。テストの点数云々より「聴き取りやすいのに聴き疲れにくいから学習効率アップ!」こそがその真価なのではないだろうか。

STUDY1は音楽リスニングや映像コンテンツ視聴でも活躍してくれる?

■STUDY1は音楽リスニングや映像コンテンツ視聴でも活躍してくれる?

学習用途での有用性についてはよしとして、一般的な音楽や動画コンテンツでのサウンドチェックの印象もお伝えしていこう。他のイヤホンと使い分けず学習もエンタメもぜんぶこれで楽しめるならその方が便利! というニーズにもSTUDY 1は応えてくれるのか?

結論から言うと、前述の「シルキーでソフト」「聴き疲れにくい」などが好みに合うのなら、音楽も動画もSTUDY 1で楽しむ! も十分ありな選択肢だ。

音楽リスニングでは、ボーカルはもちろん全体的にもシルキーでソフトタッチな感触。メロディ重視のメロウな歌ものとの相性は特によい。E1000CとSTUDY 1を比べると、動と静、陽と陰か。前者は快活でキレがよく、ヒップホップ的なリズムや雰囲気の表現が得意。対して後者こちらはそのしっとり感や滑らかさで、ソウルやクラブのリズムや雰囲気をうまく表現してくれる。またこちらの方が低音の重心が低くなり、その点でもソウルやクラブの低音表現にフィット。

シンプルにトーク中心のポッドキャストや動画では、学習リスニングの場合と同じくの聴き取りやすさを発揮。これは当然だろう。

逆に音数の多い配信コンテンツとしては大空スバルさんのスト6実況配信をチェック。E1000Cはスバルさんの声とゲームのBGM&SEを綺麗に分離してくれた上で、声もゲーム音も共にクリアに届けてくれる。打撃SEもキレキレで格ゲーらしい。

対してSTUDY 1はE1000Cと比べると声とゲーム音の分離は少し控えめになり、SEのキレもやや落ち着いた感じに。でありつつ声の聴き取りやすさが損なわれないのはさすが。また音の当たりが柔らかくなり情報量も整理されることで騒がしさは軽減。この手の配信は時として数時間にも及ぶが、それを聴き続けても聴き疲れにくいことを期待できそうだ。スバルさんの配信に限っては「うるさくないスバちゃんなんてスバちゃんじゃない!」という意見もあるかもしれないが。

ということで、本筋の「学習専用イヤホン」としての聴き取りやすさは実際に確保されており、そこに聴き取りやすさと相反しやすい要素である聴き疲れにくさも上乗せされることで、学習効率の向上はたしかに見込めそうだ。さらにそのサウンドの個性はエンタメコンテンツでも発揮される。これで2980円と学生向けとしても無理のない価格設定なのだからお得感も文句なし。

2022年2月の発売から2年超が経過したが、このSTUDY 1もE1000やVR500と並ぶfinal定番ロングセラーになるかもしれない。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。

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