レノボ・ジャパン、“AI元年”の2024年度はNo.1ソリューションプロバイダーを目指す

AI要約

レノボ・ジャパン合同会社は、2024年度の事業戦略を発表し、No.1 ITソリューションプロバイダーを目指すことを掲げた。AIへの積極的な投資や社内改革、環境対策などを重視している。

2023年度の実績や具体的な戦略、AI関連の取り組みなど、綿密な計画が示されている。各部門での成長や顧客向けの提案など、幅広い取り組みが進められている。

レノボはハードウェア中心の企業からITソリューションプロバイダーへの転換を目指し、AI活用や環境負荷の削減など、さまざまな取り組みを行っている。

レノボ・ジャパン、“AI元年”の2024年度はNo.1ソリューションプロバイダーを目指す

 レノボ・ジャパン合同会社は、2024年度の事業戦略を発表した。日本には、パソコンなどデバイス事業を担当するレノボ・ジャパン、企業向けソリューションを手がけるレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、スマートフォンなどモバイルデバイスを手がけるモトローラ・モビリティ・ジャパンがあり、2024年度は3社共通で、No.1 ITソリューションプロバイダーを目指すという目標を掲げた。さらに、「ポケットからクラウドまで――AIのパワーをもっと身近に」として、AIに積極投資する考えもしている。

 レノボ・ジャパンの代表取締役社長である檜山太郎氏は、「レノボグループは、非常に多くの製品ポートフォリオを持ち、ポケットに入るスマートフォンからタブレット、パソコン、サーバー、ネットワーク、クラウドに至るまで、これがAI時代にどう活躍できるのか、それらを活躍させることによってどのように社会に貢献できるかを常に考えている。特に2024年度は、AI元年になるのではないかと思っている。すべてのデバイスにAIが入り、AI元年として実現する新しい社会を目指していきたい」とAIへの注力をアピールした。

 檜山社長は2024年度の事業方針を発表する前に、2023年度の実績を振り返った。調査会社が発表するパソコン市場シェアの第1位。ソリューション&サービス事業は対前年比二桁成長となった。インフラサーバー事業は、対前年比一桁成長。モトローラ・モビリティ・ジャパンの出荷台数は、+135%となった。そのほか、2024年6月に幕張で開催されたInteropの3部門で受賞し、Great Place to Workの「働きがいのある会社」として認定されたという。

 「AIやIT領域は、非常に速いスピードで進んでいるが、一緒に働いている会社の仲間も、個人個人のスキルをどうやって上げていくかが1つのテーマになっている。その中で、働く仲間が働きがいある会社、働きがいがある組織だと考えていただけるよう、リーダーシップチーム日々取り組んでいる。ここについてもしっかりと持続し、継続していきたいと考えている」(檜山社長)。

 続けて2024年度の事業戦略として、「PCをはじめとしたデバイス分野でしっかりとリーダーシップのポジションは維持し、さらにリーダーポジションを今後も維持し、さらに成長していくために、デバイスメーカーからITソリューションプロバイダーへのシフトを考えている」と説明した。

 「製品、技術をお客さまに届けるだけではなく、しっかりとお客さまの課題を理解しながら、お客さまに我々が持っている製品ポートフォリオを提供する、ITのソリューションプロバイダーへ移っていきたいと考えている。先ほど、サービスソリューション事業が2桁で毎年成長していると申し上げたが、これをさらに継続していくためには必要なことだと考える。レノボは、もともとはハードウェア中心の会社だったが、それを『物売り』から『こと売り』にどのように移っていくかだ。社内ではさまざまな議論を進めているが、企業のカルチャーを変えていく話にもなるので、1人1人の意識付け、お客さまに対する接し方など、細かい点に至るまでソリューションプロバイダーとなる準備を進めている。ここ数年はトレーニングを重ね、社員も意識改革を行っているが、実際にソリューション関係事業が2桁成長しているということで、ここをさらに伸ばしていきたい」。

 こうした社内改革と共に進めているのがAIへの注力だ。レノボグループではAI関連で10億ドルの投資を行い、AI関連デバイスやソリューション、インフラなどに反映させることを発表している。

 さらに、海外で実施した自社イベントで「Hybrid AI 戦略」の発表、AIインフラストラクチャー&サービスとして90以上のハイパフォーマンスなインフラストラクチャー製品およびサービスソリューションでお客さまのAI活用を支援、165以上のエッジからクラウドまでをカバーするソリューションと、50社以上のISVが参加するAI Innovators Programを実施し、AI パートナーエコシステムを構築した。AI PC&ワークステーションとして、Microsoftとの協業でAIアシスタントがビルドインされたCopilot+ PCやワークステーションを提供する。

 企業向けには、Hybrid AI提案としてGPU、CPU、ソフトウェア、サービスなどが最適配置され、あらゆるAI活用のニーズにフィットするソリューションの採用をアピールしていく。

 「昨年、Hybrid AI戦略を発表した。AI活用が進むと、個人で利用したいAI、組織の中で使いたいAIが別個にあったとしても、データが流れてしまうとリスクにつながる可能性がある。そこでレノボでは、個人で使うデバイスの中に収まるAI、個人が所属する企業、学校、地域コミュニティなどで利用するAIはしっかりとレイヤーを分けながら管理していく必要がある。このレイヤーをきちんと分けることで、個人データを守ることにつながり、個人データ活用を効率よくすることにもつながっていく。我々はハードウェアのデバイスメーカーだからこそできるところを、Hybrid AIとして充実させていきたい」(檜山社長)。

 この世界をさらに拡大していくために、Next Gen AI PCのラインアップ拡充、AI Connectedなスマートフォンの連動、AI Readyなインフラの価値提案、AI Suiteソリューション&サービスの市場投入を行い、No.1 ITソリューションプロバイダーを目指す。

 具体的にはスマートデバイス事業部では、Windows 10サービス終了を受け、さらなるDXの推進、AIPCをすべての顧客に提供する。AIPCは、マイクロソフトとの協業によりCopilot + PCとして「Lenovo YogaSlim7x Gen 9」をコンシューマ向けに提供しているが、法人向けの「Lenovo ThinkPad T14s Gen 6」を近日中に提供する予定となっている。

 インフラストラクチャー・ソリューション・グループでは、「AI Ready」ソリューションを提供する。

 「グローバルでは、8-way GPU対応サーバー発表している。これからAIが広く使われることで、GPUをたくさんさせるサーバーが必要になることから、GPUを8枚させる非常にパワフルなサーバーとなっている。こうしたパワフルなサーバーが必要になる反面、電力消費量が大きくなることから、これを抑えるために水冷技術を使ったサーバーを日本でも投入していきたい。もともと、IBMが持っていた水冷技術を我々のサーバーにも取り入れている。昔の水冷技術は大型だったが、現在では普通のラックに入るくらい小さい。冷却技術も、昔は水を冷やして流す必要があったが、今は室温の水でしっかり冷却できる。いろいろなところから注目を浴びる技術となっている」。

 事例として紹介されたのは、従量課金で初期投資軽減する「TruScale IaaS」を利用して導入した新東京病院。千葉県松戸市にある1968年創設した病院で、現在は430床を有する。今回、ITインフラ仮想化基盤として、レノボのThinkAgile HXノードをTruScale IaaS 従量課金サービスで導入した。

 一方、AI画像認識を活用したセキュリティソリューションを1万社以上に導入している株式会社セキュアは、エッジAIを導入した。無人店舗ソリューションとして、コンパクトな「AI Ready」レノボエッジサーバー「ThinkEdge SE450」を採用し、監視カメラ映像のみでお客さま行動解析から商品認識まで行う画像認識AIを店舗内に展開している。

 また、注力ポイントとしてあげたのが、CO2オフセットサービスなど環境対策の拡充だ。「お客さまから、環境関係について、どうやったら自分たちは改善できるのか、どうやって社会に貢献できるのか、といった問い合わせをよく受けるが、当社では、LISSA(レノボ・インテリジェンス・サステナビリティ・ソリューション・アドバイザー)というAIを走らせ、そこにお客さまの状況をプロットし、どういうところで環境関係に貢献できるか、CO2排出量を抑えられるか、オフセットできる領域があるかなどを検証し、お客さまにお渡しするサービスを提供している」と、前置き。

 そして、「こうしたサービスを提供しているのは、AIは多大な電力がかかるためだ。もともと、デバイスの数も増加し、コロナ禍でリモートワークが進んだために、使用場所も増えている。それによって電力の消費量もかなり増えてきているところに、さらにAIが来る。ここは気をつけるポイントということで、レノボとしてはネットゼロにコミットしている。Lenovo CO2オフセットサービスの提供も行い、デバイスから発生する炭素排出量をオフセットし、お客さまと共に持続可能な社会の実現を目指す。すでに世界累計で100万トン以上をオフセットしている」と述べた。

 さらに製品に水冷テクノロジーをはじめ、低温ハンダ技術の公開、筐体に再生由来素材を利用、パッケージについても再生由来素材を利用、製品ライフサイクル循環型アプローチの実施などを徹底していく方針だ。