LINE Pay退場、情報漏洩問題がダメ押し 後発ファミペイ・メルペイにも勝てず

AI要約

LINE Payの国内サービスが終了することが発表された。13年からの歴史に幕を閉じるも、市場影響は小さく、既にPayPayが圧倒的なシェアを持っている。

LINE Payは特有の機能や海外利用のメリットがあり、一部のユーザーにとって便利だったが、両社の競争と統合によりサービス終了が決定された。

情報漏洩問題や経営統合の失敗が背景にあり、LINE Payの終わり方は同社の象徴ともいえる。PayPayへの事業移行を経て、LINEヤフーは一本化を進める方針。

LINE Pay退場、情報漏洩問題がダメ押し 後発ファミペイ・メルペイにも勝てず

 「LINE Payのユーザーのみなさま、長らくのご愛顧、誠にありがとうございました」――。LINEヤフー代表取締役会長の川邊健太郎氏は6月14日、同氏のX(旧ツイッター)でそうつぶやいた。

 LINEヤフーは13日、同社スマホ決済「LINE Pay」の国内サービスを25年4月末に終了すると発表した。同グループ内のPayPayにスマホ決済サービスを一本化する。LINE Payの残高はPayPayに移行できるようにする。

 LINE Payがスタートしたのは2014年。10年の歴史に幕を閉じることになるが、市場への影響は小さい。調査会社のMMD研究所(東京・港)によれば、LINE Payの利用率は6.5%にとどまる。一方のPayPayは49.5%で圧倒的な1位だ。

 LINE Payを発足当初から利用してきた20代男性は「PayPayがあれば困らない。どちらかに統一してほしかったからむしろ助かる」と話す。同社の関係者も「LINE Payならではの機能をあまり提供できていなかった。PayPayとかぶっていた」と明かす。

 しかし存在感は小さくとも、LINE Payならではのメリットもあった。18日に開催されたLINEヤフー株主総会では「LINE Payは(米Appleのモバイル決済サービスである)Apple PayやVisaのタッチ決済で使えて便利だった。PayPayでは資金決済の出口が少ない」と株主から指摘があった。

 海外で利用できたのも大きなメリットだ。LINE Payはクレジットカードを登録すれば、台湾やタイの店舗でQRコード決済ができた。台湾やタイでは「通常のクレジットカードは使えないがQRコード決済は可能」という店が少なくないため、日本の旅行者にとってLINE Payはありがたい存在だった。PayPayを筆頭に多くの国内のQRコード決済は海外では使えない。

 LINE PayとPayPayはもともと競合だった。川邊氏は18年以降のシェア争いを「日本のネット産業史に残る屈指の競争状況」だった、とX上で振り返った。LINE PayとPayPayのニーズやユースケース(活用事例)の差は、そうした競争の中で育まれていったものだ。

 しかし今回のサービス終了に伴い、LINE Pay固有のメリットは基本的に消滅する。LINE PayはPayPayへの事業譲渡を行わず、両者の連携はサービス終了に伴う残高の移行にとどまる。「ユーザー層はほとんど被っており、(LINE Pay終了に伴うPayPay側の)メリットはほとんどない」と関係者は語る。

 Zホールディングス(HD)が22年にPayPayを子会社化し、さらにZHDと傘下のLINE、ヤフーが23年秋に一体化して、今のLINEヤフーが生まれた。しかし同社は経営統合のメリットをほとんど打ち出せていないどころか、ユーザーの利便性も高まっていないのが実情だ。「ただ終わるだけ」のLINE Payは、同社を象徴する事例といえる。

 LINE Payのさみしい終わり方の背景には、LINEヤフーの情報漏洩問題もある。同社は23年秋に数十万件の個人情報を流出させ、総務省から2度の行政指導を受けた。これが原因で、24年度に予定していたLINEとPayPayのアカウント連携は延期が決定。もはや統合の見通しが立たなくなった中、中途半端に両方を存続させるよりはPayPayに一本化させるほうがよいと判断したのだろう。