アット東京が芝浦・品川エリア進出で狙う「東京No.1キャリアホテルDC」の座

AI要約

アット東京が東京都港区に新たなデータセンター「アット東京中央第3センター(CC3)」を開設し、ネットワーク接続拠点型DCとして位置付けている。

アット東京は、ITインフラの需要変化に対応し、ハイパースケールDCやキャリアホテルDCの重要性を強調している。

CC3の開設を通じて、エクイニクスにシェアを奪い、芝浦・品川エリアでのシェア拡大を目指している。

アット東京が芝浦・品川エリア進出で狙う「東京No.1キャリアホテルDC」の座

アット東京が東京都港区(芝浦・品川エリア)で「アット東京中央第3センター(CC3)」のサービス提供を開始した。クラウドやIXの接続ポイントを集積した「キャリアホテルデータセンター(ネットワーク接続拠点型DC)」と位置付け、同エリアで“一強”のエクイニクスからシェアを奪うことを狙うという。

 アット東京は2024年7月1日、東京都港区(芝浦・品川エリア)に竣工した新データセンター「アット東京中央第3センター(CC3)」のサービス提供を開始した。サーバールームの総床面積は約8000平方メートル、約3000ラックを設置可能で、総受電容量は約40MW(40MVA)となっている(以下、データセンターは「DC」と略記する)。

 

 アット東京ではCC3を「ネットワーク接続拠点型DC(キャリアホテルDC)」と位置付け、すでに主要IX(JPNAP、JPIX、BBIX)の接続ポイントを設置することも発表している。

 

 記者説明会では、芝浦・品川エリアで今後もさらにDC建屋の拡張を進めて「DCキャンパス化を実現したい」とコメントしており、現在、芝浦・品川エリアのキャリアホテル需要を“独占”しているエクイニクス(Equinix)からシェアを奪いにいく、強気の姿勢を見せた。

 

ハイパースケールDCと共に需要が高まる「キャリアホテルDC」

 アット東京 執行役員 企画本部 副本部長の市原昌志氏は、「CC2(アット東京中央第2センター)の開設から12年、少し時間がかかってしまったが、ようやく新たなフラッグシップDCとなるCC3を開設できた」と語る。

 

 クラウドサービス利用の普及によって、データセンターの顧客需要は大きく変化している。かつて中心的だった一般企業の「サーバーを置く」需要は減少し、その需要はクラウドサービス事業者のハイパースケールDCへと置き換わっている。

 

 代わりに需要が高まっているのが、高信頼かつセキュアに「ネットワークにつなぐ」拠点としてのDC利用だ。一般企業、IX(インターネットエクスチェンジ)、ISP、そしてクラウドサービス事業者と、いずれの立場からも「ネットワークにつなぐ」拠点としてのDCサービスが強く求められるようになっている。

 

 「DC事業者の立場から見ると、ハイパースケールDCは規模が大きく売上も大きいが、利益率は低い。一方で、クラウド事業者やIX、そこに接続するために集まってくるお客様を相互につなぐキャリアホテルDCは、(都心部への設置など)立地条件が非常に重要となる。相互接続の価値をきちんと提供できれば、比較的利幅も取りやすい」(市原氏)

 

 アット東京でも、こうした市場ニーズの変化に対応する取り組みを進めてきた。IXやメガクラウド、国内外のDCとの柔軟な相互接続サービス「ATBeX」(詳しくは後述)を提供するほか、大手IXやメガクラウドのPOP(ユーザー向けのダイレクト接続ポイント)を誘致/集約することで、キャリアホテルDCとしての相互接続サービスを展開している。

 

 市原氏は「PeeringDB」(DCごとに相互接続できるネットワーク事業者の情報をまとめたサイト)の公開情報を基に、アット東京のCC1/CC2には、現在4社のIX、96社の大手ネットワーク事業者/クラウド事業者が集積しており、東京都下の主要なキャリアホテルDCのひとつになっていると説明する。

 

 キャリアホテルDCには、相互接続できるネットワークの数が多いほどその価値が高まり、さらに多くのネットワーク事業者が集まる――という成長の構図がある。CC1/CC2でそうした成長が続いている点もポイントだ。

 

“エクイニクス一強”の芝浦・品川エリアに進出、シェア獲得狙う

 今回サービスを開始したCC3は、アット東京のキャリアホテルDCサービスをさらに強化する目的で、東京都心のネットワーク集積地のひとつである芝浦・品川エリアに開設された。もうひとつのネットワーク集積地、豊洲・有明エリアとの間を、東京湾の海底を横断する光ケーブルでつなぐことも発表済みだ。

 

 なお、芝浦・品川エリアでのDC開設は、アット東京としては初めてとなる。芝浦・品川エリアには現在、エクイニクスのDC群(TY2、TY6、TY7、TY8)があり、同エリアの需要を独占している状況だ。こうした現状を打ち崩すべく、新たなエリアへの進出を図ったのが今回のCC3ということになる。

 

 CC3の具体的な販売戦略として、新規顧客の獲得に加えて、施設の老朽化が進んで拡張余地がなくなっている大手町エリアの各社DCや、品川のエクイニクスTY2からの移設も狙うという。

 

 「現在の芝浦・品川エリアは、エクイニクスさんの“一強状態”。アット東京もCC1/CC2で頑張っているが、CC3を通じて芝浦・品川エリアのシェアを少し突き崩していきたい。エクイニクスさんは『東京No.1のキャリアホテルになる』と宣言しているが、われわれも同じく『東京No.1のキャリアホテルになる』ことを目指す。芝浦・品川エリアは、都心からのアクセスが良い一方で、倉庫が多くオーナーさんとやり取り(用地取得交渉)がしやすい。CC3だけでなくその先も開発を進めて、DCキャンパス化の実現を目指したい」(市原氏)

 

「ATBeX」を通じた全国パートナーDCとの相互接続も戦略のカギ

 キャリアホテルDCとしての成長を狙うアット東京の戦略上、もうひとつ重要となるサービスが「ATBeX(AT TOKYO Business eXchange)」だ。

 

 ATBeXは、アット東京のDC間だけでなく、全国の提携パートナーDCとも容易に相互接続(レイヤー2)できる論理回線サービスである。ATBeXを利用すれば、全国のユーザーが最寄り地域の提携DCからATBeXに接続し、その先にあるアット東京のキャリアホテルDC経由でメガクラウドまで閉域接続できる。

 

 アット東京 執行役員 企画本部 プラットフォーム企画部長の杉山智倫氏は、アット東京自身は「ネットワーク拠点型DC(キャリアホテルDC)に注力してやっていく」方針だが、そのビジネスを実現するためには、全国のパートナーとの提携を通じて「エッジ型DC」との相互接続も進める必要があると説明する。ここで、ATBeXを通じた全国規模のDCパートナーシップが生きてくる。

 

 ATBeXをめぐる「一番ホットな話題」として、杉山氏は全国の自治体におけるガバメントクラウドへの閉域接続ニーズを挙げた。前述したとおり、ATBeXを利用すればアット東京のDCにネットワーク接続しなくても、最寄りの地域にあるパートナーDCに接続することで、各社のガバメントクラウドへの閉域接続が容易に実現できるからだ。

 

写真で見る、アット東京CC3の特徴

 なお記者説明会では、CC3の内部を見学することができた。本記事の最後に、写真を使ってCC3の特徴的な設備を紹介しよう(以下の写真はすべてアット東京提供)。

 

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp