華やかな“Copilot+ PC”売り場、でも「それ、Arm版Windowsですよね?」 “分かっている人があえて選ぶPC”が一般層に猛プッシュされている不安

AI要約

新たなWindows PCカテゴリーであるCopilot+ PCが各メーカーから一斉に発売され、家電量販店では特設コーナーが設けられている。

ただし、Copilot+ PCは従来のWindows PCとは異なるArm版Windowsを搭載しており、互換性の問題が発生する可能性がある。

Copilot+ PCの要件やスペックには、40TOPS以上のNPU、16GB以上のメモリ、256GB以上のストレージなどがあり、AIの処理をローカルで行うPCを指している。

現時点ではMicrosoftが指定するArmアーキテクチャのSnapdragon X Elite/Plusが使用されている。

MicrosoftはArm版Windows向けに新しいエミュレーター「Prism」を提供しており、定番アプリは問題なく動作するものの、フリーソフトや周辺機器のドライバなどは動作確認が必要な状況にある。

華やかな“Copilot+ PC”売り場、でも「それ、Arm版Windowsですよね?」 “分かっている人があえて選ぶPC”が一般層に猛プッシュされている不安

 Windows PCの新カテゴリーとして登場した「Copilot+ PC」に準拠する製品が6月18日に各メーカーから一斉に発売された。家電量販店のPC売り場をのぞいてみると、特設コーナーが設けられており、「Surface Pro(第11世代)」や「Surface Laptop(第7世代)」をはじめとする各メーカーの新製品が猛プッシュされている。

 新しいPCを買いに来た客にとっては、新製品というだけで“なんとなく”魅力的に感じる部分もあるだろうし、その場で実際に触って試す機会もあるだろう。

 ただ、Copilot+ PCはこれまでのWindows PCと同じ感覚で買うと困ってしまうケースもある。なぜなら現時点でCopilot+ PCが搭載しているWindowsは「Arm版」と呼ばれるもので、見た目や外観こそ従来のWindows PCと同じものの、これまでIntelやAMDのSoCが搭載されているPCで動いていたWindowsとは互換性がない。

 こうした状況を知らずに、なんとなく「Surfaceの最新モデルだから」「最新のWindows PCだから」と購入してしまい、「会社や学校で使うソフトが動かない」「自宅のプリンタに接続できない」「ゲームができない」といった問題に直面する一般ユーザーがこれから急増するのではないかと筆者は危機感を覚えている。一体どのような状況なのか。販売の現場にも聞いてみた。

 Copilot+ PCは、次世代の“AI PC”を実現するために、Microsoftが「このスペックでPCを開発してください」とメーカー側に示した要件でもある。Copilot+ PCを名乗る製品は「40TOPS以上の処理が実行できるNPUを内蔵する、Microsoftが承認したSoC(CPU)」「16GB以上のメモリ」「256GB以上のストレージ」といったスペックを備えている必要がある。

 簡単に言えば、AIの処理をローカル環境で素早く実行できるPCを指しているわけだが、現時点では“Microsoftが承認したSoC”の部分で、QualcommのSnapdragon X Elite/Plusが指定されている。

 このSnapdragon X Elite/PlusはArmアーキテクチャと呼ばれるSoCとなっている。大ざっぱに言えば、スマートフォンなどモバイル機器の分野で進化してきたSoCであるため、省電力性とパフォーマンスのバランスが優れているのが強みだ。

 特に省電力性は圧倒的で、バッテリー駆動で数時間しかもたないイメージが強いPCが、Armであれば実利用でも軽く10時間以上動作するといった状況を期待できる。

 ただし、SoCの設計が従来のIntelやAMDのSoC(いわゆるx86やx64 CPU)と異なるため、ソフトウェア側もArmに対応していないと基本的には動作しない。Microsoftはx86やx64 CPU向けのソフトをArmでも使えるようにする新しいエミュレーター「Prism」をArm版Windowsに搭載しており、多くのソフトウェアが問題なく動作するとしている。

 もちろんMicrosoft謹製のOfficeや、主要なWebブラウザのGoogle Chromeなど、定番的なアプリはArm版が用意されているので快適に動作する。しかし、(Windowsの強みでもある)星の数ほどあるフリーソフトや周辺機器のドライバ、仕事や授業で使うソフトが動くかどうかは実際に起動してみないと分からず、ソフトウェアメーカーが動作確認をしてアナウンスするか、ネット上で誰かが試した情報を探すしかない状況だ。